第七話:魔王、寝込む
私は、だいたい月に一回、必ず調子が悪くなる。
同じ周期で寝込む。
魔力も体力も精神力も低下。
頭痛に吐き気、腹痛、腰痛。
つらい。
しかし、この秘密を周りに悟られてはいけないので、体調が良くても、月に四回ほどは勉強とか読書、瞑想、手芸、ジグソーパズルとか適当な言い訳を作り、いろんな部屋にこもることにしている。
体調の悪い日をわからないようにし、寝る場所も毎日変更。
勇者からの襲撃を逃れるためだ。
執事のイフリートも、この事実を知らない。
今日は本当につらい日。
小さい部屋の小さいベッドで寝る。
扉には、
「今、勉強中です。勝手に入ってきた方は瞬殺します」と張り紙を貼っておく。
うーん、頭が痛いよう。
お腹も痛い。
吐き気もする。
何とかしてくれ。
寝込んでいると、誰かが入ってきた。
何者だ?
勇者か!
瞬殺!
と思ったら、アンナちゃんだった。
「アンナちゃん、扉の張り紙見なかったの」
「見てないよ、マオちゃん」
「せめて、ノックはしてよ。危うく瞬殺するところだった」
アンナちゃんは心配そうな顔をしている。
「ごめんなさい。けど、マオちゃん勉強してないね。なんで寝てるの」
「ちょっと、アンナちゃん、張り紙見てるじゃん!」
「そうだっけ、覚えてないや」
やれやれ、『アホの子』に言ってもしょうがないか。
「マオちゃん、調子悪いの」
「あ、いや、えーと、寒気がする。風邪かな」
「ふーん」と言うなり、アンナちゃんがベッドの中に入ってくる。
「ちょ、ちょっと、何で入ってくるの」
「寒いんでしょ。マオちゃんをあたしの体で温めてやろうと思って」
こらこら、このままでは百合展開になってしまう。
「ちょっと、アンナちゃん、風邪がうつるから離れなさい」と焦る私を無視して、
「マオちゃんて、恋人いるの?」といきなり聞いてきた。
「い、いないわよ」
「今までも?」
「うーん、いない」ちょっと情けない私。
「じゃあ、あたしがなってあげる」
待て! 待て!
アンナちゃんは何を考えているのか。
ちょっと、頭の中を覗いてみる。
相変わらず、真っ白。
戸惑っていると、抱きついてくる。
「ちょっと、アンナちゃん、やめなさい!」
ますます焦る私。
しかし、気がつくとアンナちゃんはぐっすり眠っている。
頭の中を覗く。
やはり、真っ白。
まあ、可愛いから許す。
それに、何だか痛みも軽くなったようだ。
癒し効果かなあ。
私も寝るかと思ったら、またアンナちゃんが起きて、
「マオちゃん、キスしたことあるの?」と聞いてきた。
「……ないよ」もっと情けない私。
「じゃあ、あたしが……」
あわわ、思わずベッドの中で、アンナちゃんを突き飛ばす。
ベッドから飛び出てしまい、部屋の壁に叩きつけてしまった。
「ウギャ!」と悲鳴をあげるアンナちゃん。
やばい。
あわてて、アンナちゃんのところへ行く。
「アンナちゃん、アンナちゃん」と体を揺すると、アンナちゃんはすぐに起きて、
「ん、ここはどこ?」とか言ってる。
「アンナちゃん、どこか痛くない?」
「背中が痛い」
大丈夫かなあと背中をさすると、
「くすぐったい」と笑っている。
どうやら、大したことないらしい。
良かった。
「アンナちゃん、ごめんなさい」とあやまると、
「何であやまるの?」と聞かれた。
「今日は調子が悪い日なんだ、月一回くらいあるのよ」
「そうなんだ」
アンナちゃんは何事もなかったように、
「おやすみなさい」と部屋から出て行った。
何度も言うが、百合じゃないぞ。




