最終話:クトゥルフ殲滅へ
魔王城から、少し離れた土地の片隅に小さい石が置いてある。
アンナの墓だ。
お墓に百合の花を添えた。
彼女が、唯一本当の事を言ったのが、百合の花が好きということだった。
アンナは安楽死させた。
いろんな思い出が頭に浮かんでくる。
私はこの世に誕生して以来、初めて泣いた。
魔王の間に戻る。
もう、涙は出ない。
今後も泣くことはないだろう。
私を諫めてくれるイフリートもいない。
私を癒してくれるアンナちゃんもいない。
誰も信用出来なくなった。
一般警察の部下が報告しにきた。
「強盗殺人犯が、一人、逃げ込んだと思われる村が三か所ありまして、ただ、例のクトゥルフでしょうか、そいつが、隠しているようなんです。どの村にいるのか、誰なのかわからないようです。どうしようかと」
私は無表情で答えた。
「わかんないなら、三つの村、全部、皆殺しにしたら」
「え、それは、いくら何でも……」
部下が戸惑っている。
私は部下をにらみつけながら言った。
「なんか文句あんの? あんたもクトゥルフなの? 今すぐ、瞬殺されたいの?」
「了解しました!」
部下は真っ青な顔で、部屋を飛び出していく。
鏡に自分の姿を映す。
『女子高生』の恰好。
ブレザーとスカートは黒。黒いストッキング。靴も黒。
シャツは白、ネクタイは血のような真っ赤な色。
腰には黒いベルトを装着し、魔王の紋章が付いている剣を左側に差している。
髪の毛は金髪でセミロング。黒いヘアバンドを付けている。
私の外見は全く変わっていない。
けど、目は死んでいる。
もう、自分のことも信用していない。
秘密警察を復活させた。
隊員も一万人に増員。
長官は私が兼任している。
ナイアルラトホテプの居場所を発見した。
クトゥルフの本拠地に逃げ込んだらしい。
知っていそうな奴を片っ端から捕まえて、尋問したらしいけどね。
どんな取り調べ方をしたか知らないけど、なぜか尋問中に大勢死んだらしい。
子供から大人まで、男女、千人くらい死んだ。
ほとんど関係なかったようだけど。
仕方が無いね。
どこに裏切り者がいるかわからない。
そいつらが、いつ悪さするかわからない。
どうすればいいか。
片っ端から、捕まえて粛清すればよい。
二代目秘密警察長官のアレクサンドラの考えは正しかったな。
あの人は、自分なりに考えて行動していたようだ。
ナイアルラトホテプに操られていたわけではなく。
まあ、彼女は私が斬り殺したんだけどね。
魔王の間の椅子に、ぼんやりと座っていると、
「魔王様、出撃の準備が完了しました」と部下から報告があった。
城の前に魔王軍全軍が待機している。
超巨大なドラゴンからスライムまで。
地平線の果てまで、埋め尽くされている。
圧倒的じゃないか、我が軍は。
私は最大最強のドラゴンの背中に乗る。
「出撃!」
全軍が飛び上がる。
ナイアルラトホテプが言うように神がいないのか、それともいるのか、私にはわからない。
しかし、『鬼畜』どもは絶対に殲滅してやる。
ナイアルラトホテプとその徒党の類は、一匹も逃がさないし、許すつもりはない。
この世の果てまで追いつめてやる。
完全に絶滅してやる!
混沌を滅ぼし、秩序をもたらすために。
混沌こそ、我が宿敵!
目標、クトゥルフ本拠地。
瞬間移動!
私は秩序ある世界が好きだ。
秩序が大好きである。
世界の秩序を乱す奴は許さない!
そのためには何百万、何千万、何千億犠牲者が出ようが、知ったことではない!
邪魔する奴らは、この手で叩き潰してやる!!!
(終)




