第四話:なぜ異世界転移または転生してくるのだろうか?
どこかの村。
宿屋の部屋の前に移動した。
扉に鍵が掛かっているが、私には関係ない。
魔法で簡単に開ける。
部屋に入ると、ベッドの上で女性が男に乱暴されている。
私を見て、
「なんだ、お前は! どうやって入ってきた!」と男が驚いている。
「あなたこそ、何をしているんですか」
「うるさい、俺は勇者だぞ。奴隷を救ってやったんだ。これくらい役得だろ。こいつも楽しんでいるんだ」とふざけたことを言ってやがる。
どこが勇者だよ。
「助けて」と女性が叫んでいる。
全身バラバラに切断してやろうかと思ったが、血糊を掃除する宿屋の清掃員が可哀想だ。
指で男の首を押す。
瞬殺!
首の骨を折ってやった。
男は部屋の床に崩れ落ちる。
「助けてくれて、ありがとうございます」とそのおとなしそうな女性はお礼を言った。
「あなたには信頼できる親か親戚、または友人などはいますか」
「……いません。私は親に奴隷商人に売られたんです」と悲し気な顔をする。
いまだに奴隷商人が裏社会で活動しているらしい。
けしからん連中だ。
次の機会に粛清してやる。
瞬殺だ。
「あなたのお名前は」
「イリアと申します」
「では、私の城で働きませんか」
「あの、あなたは一体……」
「私は魔法使いのマオと言います」
その女性と瞬間移動する。
巨大な城の前で、イリアは仰天している。
地上百階、地下百階もある。
地上に出ている部分は、立方体の真っ黒な建物だ。
全階毎に百室ある。
私も全部見て回ったことはない。
空き部屋が多いらしいが。
「こ、これがあなたの城ですか」
「そうですね」と言いながら、イリアの頭の中を覗く。
きれい好きの人らしい。
「とりあえず、清掃員として働きませんか。一日八時間労働、週休二日、有給休暇あり。ご希望なら住居はこの城の中に用意します。辞めたくなったら、すぐに辞めてもいいですよ。但し、出来れば一か月前には事前通告して下さい。働いた期間に応じて、退職金も出ますよ」
「は、はい、喜んで。お願いいたします」とイリアは頭を下げる。
執事のイフリートのところへ案内する。
イフリートは食事中だった。
ワインを飲んでいる。
イフリートはワインが好きである。特に赤ワイン。
「食事中のところ、すまない。この女性を清掃員として雇ってほしい」
「わかりました」
後の手続きはまかせた。
この城に慣れたら、私が魔王であることを教えてやることにしている。
今のところ、逃げ出す人はいない。
部下のモンスターが人を襲うことはない。
私がこの城内の秩序を徹底させているからだ。
「綱紀粛正! 規則違反は即瞬殺!」と書いたポスターが城のそこら中に貼ってある。
それにしても、なぜこんなに異世界転移者や異世界転生者が爆発的に増えたのだろうか。
どうも、元の世界にはモンスターはいないらしい。
危険な動物はいるらしいが、人間の方が強力な武器を持っていて、その世界に君臨している。
動植物の中には、絶滅の危機に瀕しているのも少なくないそうだ。
なぜ、モンスターだらけのこちらの世界に来たがるのか。
なにか事情がありそうだな。
博識で、医者の免許もある執事イフリートに質問してみた。
すると、どうやら元の世界では年中戦争をやっているらしい。
戦争から逃れるための難民か。
それなら仕方が無いかと思っていると、
「ただし、こっちに転移や転生とかしてくるのは元の世界でも平和な国の人たちなんです」と厳つい顔したイフリートが、自分のあご髭をさわりながら、教えてくれた。
なぜ、平和な国から移動したがるのか。
「平和でも、つらい目にあうことはありますね。何をやってもうまくいかない。自分にとって都合のよい世界で好き放題したいという、現実逃避ではないですか。それに、元の世界の知識を披露すれば相手より上に立てるし」とイフリートが自分の考察を述べた。
現実逃避はかまわないけど、こっちの世界の方が酷い目に会う可能性が高いと思うのだけどなあ。
元の世界の知識といっても、こちらで役に立つとは限らないし。
不思議である。
おっと、また女性の悲鳴が聞こえてきた。
ろくでなしがまた現れたようだ。
瞬間移動!




