第二十四話:魔王、石けん転生者と会話する
『異世界街道』を歩いていると、石けんが落ちていた。
話しかけてくる。
「ここは異世界か」
「なんで、石けんなんかに転生したんですか。使ってたら消えてなくなりますよ」
「お前は諸行無常を知っているか」
「はあ」
「祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。この世に滅しないものはない」
「何となく、聞いたことがありますけど」
「そういうことだ。私はこの世のものは一切無常と思っている。石けんは、使えばいずれ消えて無くなる。諸行無常だ」
だからと言って、石けんに転生しなくてもいいんじゃないかと私は思った。
まあ、石けんだから放っておくか。
私が立ち去ろうとすると、石けん転生者がまた話しかけてくる。
「さて、ところで、君。風呂に入るときに、私を使ってくれないか。直接、股間に当ててもいいぞ」
何だよ、諸行無常とか偉そうなこと言ってるけど、やはり変態か。
瞬殺しようかと思ったら、おっと、また例のオーガが現れた。
道端に置いてある石けんを珍しそうに触っている。
「おい、触るな、モンスター!」と石けん転生者がわめいているが石けんなんで、どうしようもない。
すると、オーガが口の中に石けん転生者を放り込んだ。
ガブガブと噛んでいる。
「ギャー! 死にたくないよー!」と叫んで、石けん転生者は死んだようだ。
オーガは不味かったのか、ペッと口の中から吐き捨てる。
グチャグチャになった石けん転生者の死体。
死体なのかな、この場合。
まあ、不条理ですね。




