第二十二話:魔王、椅子転生者と会話する
いつものように、『異世界街道』を巡回する。
道の脇に、ポツンと椅子が置いてあった。
普通の木製の椅子。
いきなり、話しかけられる。
転生者だな。
「ここは異世界か」
「そうですが、椅子に転生したんですか」
「そうだよ」
「なぜ椅子なんかに」
「もう人生がいやになったからさ。ただの椅子として暮らしたい」
「はあ」
「ただの地味な椅子に転生。目立たない。注目もされない。しかし、それがいい」
「そうなんですか? 異世界で活躍したい人の方が多いようですが」
「元の世界でダメだった奴が、異世界に行ったら、何で突然、活躍できるんだよ。ダメな奴は何をやってもダメ!」
ふーん、こういう冷静な考えの人もいるのか。
まあ、単なる椅子なら、人畜無害だなと通り過ぎようとすると、
「君、私を使ってくれないか」と椅子転生者が言い出した。
「いえ、すでに椅子は持ってますが」
「そう言うなよ、あんたのお尻、なかなか形がいいね。座っていいよ」
何だよ、また変態かよ。
瞬殺しようかと思ったら、茂みの中から巨体の人型モンスター、オーガが一匹現れた。
かなりでかい。
棍棒を持っている。
これは、変態椅子転生者なんぞにかまってられんと、身構えるが、オーガは椅子の方へ行く。
「こっち来んな! あっち行け!」と椅子転生者が騒いでいるが、動くことは出来ないようだ。
オーガはちょっと考えた後、椅子に座る。
バキッと音がして、折れる。
椅子はペシャンコ。
「ギャー! 痛いよー! 死にたくないよー!」と絶叫をあげながら、椅子転生者は死んだ。
オーガはつまらなそうに去って行った。
椅子に転生したあげく、即日で死亡。
何なの、一体。




