襲撃、ミーシャー隊
「ジーミア」、それは我々人類には観測できない場所に存在し、地球とは似ているようで似ていない、遠いようで近い存在の世界である。そこには、人間と同じ姿をしたクロム族と人間に似た姿をしたエルフ族が、生体エネルギー「バイオール」を操り、ともに共存・対立し暮らしている。
アドミア暦1195年プス28日、ウィック・ラズはフィル・ラブンの王「アナム・ハーイン」との会談を終え、護衛と共にフェイリルへ戻るためオービアを発った。
だが、その動きは敵国フェイ・グランの独立部隊ミーシャー隊に露見しており、部隊長のミーシャ―・ペウは、エルフの森にて移動中のウィックらを襲撃しようと目論んだ。
アドミア暦1195年プス38日、ミーシャ―・ペウの目論みどおりエルフの森に入ったウィックたちは、ミーシャー隊の襲撃に遭い、ユウヤを含む十数人は逃げ遅れミーシャらと戦闘になるのであった。
加賀巳 ユウヤ
「来るか…、」
ミーシャー隊の襲撃によりウィックらとはぐれたユウヤは、覚悟を決め剣の持ちてに手を掛けた。
草木が生い茂り見渡しが悪い森の中、ユウヤ以外の者も剣を抜き、互いの背中が内側になるよう円を組み辺りを警戒する。
緊張が張った時だった、再び矢が襲い掛かり、ユウヤたちはそれぞれ別の方向に避け散り散りになってしまった。
一人になってしまったユウヤは、姿を見せない敵に恐怖し付近に気を張り巡らせた。
呼吸が早くなった。
その時だった、突如として背後から小枝を踏み折った音がなり、振り向くと剣を構えた敵が襲い掛かってきた。
加賀巳 ユウヤ
「うわぁっ!?」
ユウヤは思わず声を上げるも、振り下ろされた剣を自身の剣で防いだ。
防いだ後、ユウヤは距離を取ろうとするも、敵は攻撃の手を緩めず次第に押され始めた。
加賀巳 ユウヤ
「しまった!?」
防ぐので精一杯だったユウヤは、草に足を取られ後ろに倒れてしまった。敵は、その隙を見逃すはずもなく剣を振り下ろす。間一髪、ユウヤは身をひねりそれを回避するも、追撃で蹴りを腹に貰った。
加賀巳 ユウヤ
「がぁっ!!」
ユウヤは思はず嘔吐いた。その様子に敵は思い留めることもなく、止めを刺すべく剣を振り上げた。
べベン・ベン
「てぇぇぇいぃ!!」
止めが刺されようという時、敵の背後から、べベンが奇声を挙げ斬り掛かった。敵は振り向くも、防ぐ間もなくべベンに斬り倒された。
べベン・ベン
「大丈夫か?」
加賀巳 ユウヤ
「なんとか。」
ユウヤは、べベンに手を借り立ち上がった。その時だった、草木を進む音共に敵が現れべベンに斬り掛かった。
べベン・ベン
「こいつッ!?」
突然のことだったが、べベンは何とかそれを防いだ。ユウヤは、べベンを助けようとするも、再び草木を進む音がしその方に目をやった。 すると、目を向けた方の草むらから、黒髪の少女が現れた。
黒髪の少女
「フェイリルめー!」
その少女は、声を上げながら剣を構えユウヤに斬り掛かってきた。
加賀巳 ユウヤ
「女の子!?」
ユウヤは、まだ13ほどに見える少女が自身に斬り掛かって来ることに驚くも、それを剣で防いだ。
黒髪の少女
「このー!」
少女は再び斬り掛かるも、ユウヤはそれをかわし、体勢が崩れたタイミングで足を掛けた。
黒髪の少女
「わッ!」
少女は、体制を維持できずに前のめりに倒れた。ユウヤはそれを逃さず、少女の上に馬乗りになり押さえつけた。
加賀巳 ユウヤ
「こんな小さな子が…。」
ユウヤは剣を構えるも、まだ13ほどに見える姿に躊躇ってしまった。すると、少女は振りほどこうと暴れ始め、それを押さえつけようとしたユウヤの手を噛んだ。
加賀巳 ユウヤ
「イタッ!!」
少女は、ユウヤが怯んだ隙に抜け出し再び剣を構えた。
黒髪の少女
「戦争を引き起こそうとする人たちに、私は負けない!」
加賀巳 ユウヤ
「"戦争を"て…、あんたらが、エルフ族てのを迫害してきたから!」
黒髪の少女
「だからって、何にも関係ない人たちを巻き込むなんていけないでしょ!」
加賀巳 ユウヤ
「"関係ない人たち"も?」
黒髪の少女
「わからないふりを…、虐殺者がぁ!!」
そういうと、少女はユウヤに斬り掛かった。
加賀巳 ユウヤ
「"虐殺者"だと!?」
少女は剣を振りかぶり切りつけた。ユウヤはそれを、剣で受け止めた。
加賀巳 ユウヤ
「"虐待者"て、あんたも好き勝手言って…、こっちは急に連れてこられたんだぞ!」
黒髪の少女
「"連れてこられた"?」
少女は一度距離を取った。
加賀巳 ユウヤ
「召喚されて戦えって…、それが本当に正しいのかわからないから護衛に同行させて貰ったのに…。」
「あんたは"虐殺者"と言って…、事情も知らないのに好き勝手言うなよ!」
黒髪の少女
「"召喚"て、あなたも違う世界から来たの?」
加賀巳 ユウヤ
「だったら悪いか!」
ユウヤは、感情のまま少女に斬り掛かった。
黒髪の少女
「待って、私も、別の世界から来たの。」
「地球て星のフィリピンて言う国。」
加賀巳 ユウヤ
「え…、」
ユウヤは、少女の発言に思わず斬り掛かるのを止めた。
加賀巳 ユウヤ
「今…、フィリピンて…。」
黒髪の少女
「私、リナ、リナ・ラモス・リヴェラ。」
少女は、食い気味に自分の名前を答えた。
加賀巳 ユウヤ
「…、」
「…加賀巳 ユウヤ。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「あなた、さっき"召喚されたって言ってたよね?」
加賀巳 ユウヤ
「言ったな。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「あなたがいた世界って、どんな名前?私と同じ地球だったりする?」
加賀巳 ユウヤ
「そう、自分も。」
「自分が住んでいたのは、アジアにあるジャパンて国。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「そっか、あなた日本の人だったんだ。」
「だったらさ、同じく召喚された人なら私たちに協力してよ。」
加賀巳 ユウヤ
「協力?」
リナ・ラモス・リヴェラ
「うん、協力。」
「あなたが召喚されたフェイリルて国は、この世界を自分たちのものにするため、戦争を起こして従わない人たちをみんな殺そうとしているの。」
加賀巳 ユウヤ
「それはちょっと、誤った見方じゃないのか。」
「フェイリルて国は…、いや、そこに暮らすエルフて種族は、クロム族て奴らに自分たちの国を滅ぼされ、そこで暮らしていた者たちを捕まえ奴隷にしクロム族の国同士での貿易の品にしたって。」
「そんなことをされてきたのなら、怨念返しをしたっておかしい事ではないだろ。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「それは…、」
「だからって、沢山人を殺していいわけには…、あなたたちがしようとしていることは、何の罪のない農民の人たちをも巻き込んだ大量虐殺なのよ。」
「あなた、日本人なんでしょ。だったら、この意味が分かるはずよ。」
加賀巳 ユウヤ
「それは…、わかるよ。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「だったら…!」
リナが言いかけた時だった、先ほどまで静寂に満ちていたエルフの森が、突如として、ハトの群れがタカに襲われたように騒がしくなった。
リナ・ラモス・リヴェラ
「何?」
次の瞬間だった、リナの背側の木の後ろから大柄なフェイリルの騎兵が現れ、その手に持った矛でリナに斬り掛かったのである。
加賀巳 ユウヤ
「あぶない!!」
ユウヤは、咄嗟にリナを抱きかかえるように地面に伏せた。その行動により、フェイリルの騎兵はリナへの攻撃は外れた。
加賀巳 ユウヤ
「大丈夫か?」
リナ・ラモス・リヴェラ
「うん、ありがとう。」
ユウヤとリナは立ち上がり、攻撃を外したフェイリルの騎兵を見た。すると、フェイリルの騎兵は、再度斬り掛かろうと進行方向を変え向かって来たのである。
リナ・ラモス・リヴェラ
「また来る!」
フェイリルの騎兵は、再度、矛でリナに斬り掛かった。
加賀巳 ユウヤ
「こいつ!!」
ユウヤは、リナを守るため剣で矛を受けようとした。すると、ユウヤは、無意識にオーラを剣に纏わせフェイリルの騎兵の矛を切断したのである。
リナ・ラモス・リヴェラ
「やった!」
フェイリルの騎兵は、武器を失いその場を去った。
加賀巳 ユウヤ
「去ってくれたか…。」
ユウヤは、急に疲労感に襲われ、その場に膝をついた。
リナ・ラモス・リヴェラ
「あなた、すごいわね。どうやったの、今の?」
加賀巳 ユウヤ
「何がだ?」
ユウヤは、無自覚にオーラを纏わせたので、リナの問いかけに首を傾げた。
そのようなやりとりをしている時だった、おそらくミーシャー隊であろう金髪の男がユウヤとリナの前に現れた。
金髪の男
「リナ、だいじょ、フェイリル兵!」
金髪の男は、フェイリルの装備を身に纏ったユウヤを目にし剣を抜いた。
リナ・ラモス・リヴェラ
「待って、ロバートさん。」
「この人、私たちと同じ召喚された人なの。」
ルカ・ロバートソン
「召喚された?という事は、こいつがフェイリルの…」
リナ・ラモス・リヴェラ
「この人、私のこと助けてくれたのよ。」
「さっき、矛を持った騎兵に斬られそうになったとこを庇ってくれて、騎兵の矛を斬り落として追っ払ってくれたのよ。」
ルカ・ロバートソン
「そう…なのか。」
ルカ・ロバートソン
「ちがう、こんな話してる場合じゃないんだ。」
「フェイリルが増援を連れて来やった。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「増援?だから森が騒がしくなったのね。」
ルカ・ロバートソン
「ミーシャが"撤退する"てよ。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「そう、わかったわ。」
そう言うと、リナはロバートのそばに寄った。
リナ・ラモス・リヴェラ
「あなた、何まだ膝ついてるの?」
リナは、振り返ってユウヤに言った。
加賀巳 ユウヤ
「え?」
ユウヤは、急なリナの問いかけに理解が追い付かず、生返事をした。
リナ・ラモス・リヴェラ
「"え?"て、あなたも来るでしょ?」
ルカ・ロバートソン
「コイツも?」
リナ・ラモス・リヴェラ
「だってこの人、日本人よ。」
「フェイリルがやろうとしていることだって、ちゃんと悪い事ってわかっているし。それに、さっきわたしのことを助けてくれた。」
ルカ・ロバートソン
「だからって…、」
リナ・ラモス・リヴェラ
「来るでしょ?」
リナは、再びユウヤに問いかけた。
加賀巳 ユウヤ
「…すまない、まだそちらには行けない。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「え、何で?」
「あなた、召喚されただけで、悪いことてわかってるんでしょ。」
加賀巳 ユウヤ
「まだ行けない…、一緒に連れ出したい人がいるんだ。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「連れ出したい人?」
加賀巳 ユウヤ
「あんたと同じ考えの…、戦争を止めたいと考えている人が、フェイリルにいるんだ。」
「だから、まだ自分は、そちらには行けない。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「そうなんだ…。」
ルカ・ロバートソン
「リナ、もう行くぞ。このままだと、ミーシャたちと会えなくなっちまう。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「わかった…。」
そう言い、リナとロバートはユウヤと別れミーシャたちと合流しに行った。
~翌日~
フェイリル城にて、ミーシャ隊の襲撃により犠牲となった兵士たちを弔うため儀式が行われた。儀式には、国王のビーク・ロワとその王妃、ビーク・ロワの一人娘であるリューシー・ロワ、そして全兵士及び城に仕える全ての者が参列した。儀式の後、戦場となった場所には墓石が置かれ、その墓石には戦いで死んでいった兵士たちの名が刻まれた。その中には、"べベン・ベン"の名もあった。
つづく…
「アドミア暦」
・ジーミア世界での紀年法。
・1年が4つのシーズンに分けており、それぞれ「プス」「オーガス」「スズン」「ノーガス」と名称がある。
・1シーズン90日である。
・プスは暖かい気候で、花などが咲き乱れ新たな命が芽生える。
・オーガスは暑さが厳しく、地域によっては豪雨や台風により甚大な被害を被る。
・ジュンは気温が下がり少し肌寒く感じることが多くなる。また、木の葉などの色が変わり、緑から赤色や黄色に変わる。
・ノーガスは寒さが厳しく、広い地域で雪が降る。また、バイオールの消費量が多い季節でもあり、バイオール量が多くないエルフ族は弱っているとそのまま餓死する事が稀にある。
・シーズンは、場所によって変わる。
「リナ」
・本名 リナ・ラモス・リヴェラ
・年齢 13歳
・フィリピン人
・性別 女
・身長136cm
・髪型 黒髪で、額を出したレイヤー入りロングストレート。
・農家の家庭で、弟が2人いる。両親とは仲がいい。
・好物は、レチェ・フラン。
「ロバート」
・本名 ルカ・ロバートソン
・年齢 23歳
・イギリス人
・性別 男
・身長190cm
・髪型 金髪で、ボウズ寄りのベリーショート。
・イギリスに、同い年の恋人がいる。
・好物は、アップルパイ。




