紛れし者たち
「ジーミア」、それは我々人類には観測できない場所に存在し、地球とは似ているようで似ていない、遠いようで近い存在の世界である。そこには、人間と同じ姿をしたクロム族と人間に似た姿をしたエルフ族が、生体エネルギー「バイオール」を操り、ともに共存・対立し暮らしている。
アドミア暦1195年プス27日、ウィックとその護衛部隊は、話し合いの場であるオービアに到着した。ウィックは、フィル・ラブンの王「アナム・ハーイン」と出会い会談を行った。その間護衛部隊は、長旅で疲弊した心身を休め、英気を養うため酒盛りをするのであった。
~翌日~
明け方、ユウヤは目を覚ました。他の兵士は寝ている時間帯、早く起きすぎたと思い再び眠ろうと目をつむるも、意識ははっきりしており眠ることは出来なかった。目が覚めてしまったユウヤは、仕方がなく剣を持ち外に出て素振りを始めた。昔は嫌々していた事だが、異世界に呼び出された今、時間をつぶしにはちょうどよかった。
ウィック・ラズ
「朝から鍛錬とは、精が出るな。」
素振りをしていると、ウィックが話しかけてきた。
加賀巳 ユウヤ
「早くに目が覚めたんで。」
ウィック・ラズ
「そうか。」
「頑張りたまえ、君たちには期待しているのだから。」
加賀巳 ユウヤ
「はい。」
そう言うと、ウィックは去って行った。
しばらく素振りを続けていると兵士たちが目を覚まし始め、日が昇った頃には寝ている者はおらず、宿の1階で朝食が始まった。
用意されていた食事は、薄く切られた豚の塩漬け肉に豆の煮物、目玉焼きに油で焼いたようなトースト、そして酸味の強い赤い果物だった。
ユウヤは、食べ始めは豪華な朝食に舌鼓を打っていたが、ほとんど平らげた頃には"牛乳が恋しい"と思うのであった。
朝食を終えたユウヤは、ウィックとその護衛たちが今日の昼過ぎにオービアを出てフェイリルに帰るため、自身の部屋に戻り荷造りを始めた。
~昼頃~
オービアを出る準備を終え、ウィックたちはバイコンに跨った。
アナム・ハーイン
「もう出るのか。」
アナムが出迎えに来た。
ウィック・ラズ
「はい、苦労を掛けました。」
ウィックは感謝を述べた。
アナム・ハーイン
「感謝を聞くため、来たのではないのだがな。」
ウィック・ラズ
「何かあった言うのですか?」
アナム・ハーイン
「まぁな。」
「フェイ・グランが、フェイリル周辺に部隊を出したらしく、それを伝えに来たのだ。」
ウィック・ラズ
「フェイ・グラン…、待ち伏せという事ですか。」
アナム・ハーイン
「そんなところだな。」
「出来れば、我がフィル・ラブンの兵士たちを護衛に付けてやりたいのだが、このオービアに呼ぶには少し時間が掛かり過ぎるからな。」
ウィック・ラズ
「アナム様、そのお気持ちだけでも感謝します。」
アナム・ハーイン
「手を貸せず、申し訳ない。」
「せめて、迎えを出してもらうよう、クヤヒキを出しておく。」
ウィック・ラズ
「お心遣いだけでなく、クヤヒキまで…。」
アナム・ハーイン
「そう気を遣う事はない。」
「君は、愛すべき友好国の要人なのだから。」
ウィック・ラズ
「そうですか。」
アナム・ハーイン
「無事、フェイリルに帰ることを祈っているぞ。」
ウィック・ラズ
「はい!」
「ウィック・ラズ及びフェイリル兵団"キンエイ"、オービアを出ます。」
アナム・ハーイン
「何事も起きないことを祈る。」
アナムの激励を受け、ウィックたちはオービアを去るのであった。
~翌日~
オービアを出る者がいた。身長は約120cm。フードの付いたマントをまとい、顔には目元を空けて布を巻いている。その人物はドードバに乗り、エルフの森に向かっていた。"クヤヒキ"である。
しかし、このクヤヒキは、フィル・ラブンの者ではなかった。その者の名は"クック・モス・ドーバス"。7日前にゼザバ連合に参加した敵国フェイ・グランに雇われているクヤヒキである。今クックは、フェイ・グランの独立部隊"ミーシャー隊"に、前日、ウィックとその護衛がオービアから出た事を知らせに向かっているのであった。
=エルフの森= ~昼頃~
ミーシャ―・ペウ
「どうだ?」
ミーシャ―・ペウ率いるフェイ・グランの独立部隊"ミーシャー隊"は、フェイリルへ戻って来るウィック・ラズらを襲撃するため、エルフの森北部で野営を張っている。
フェイ・グランの戦士
「まだ、何も…、、あ、あれは!」
ミーシャ―・ペウ
「どうした?、何か見えたのか?」
フェイ・グランの戦士
「北の方から一人、クヤヒキらしき者が森に向かって走ってきてます。」
ミーシャ―・ペウ
「クックか?」
フェイ・グランの戦士
「おそらく。」
ミーシャ―・ペウ
「そうか、よし、狼煙を上げよう。」
そう言うと、ミーシャは木から降り部下に命令を出した。
黒髪の少女
「急いで降りてきて、何かあったの?」
ミーシャ―・ペウ
「クックが戻ってきた、場所を知らせるため狼煙を上げる。」
黒髪の少女
「クックさんが帰ってきたんだ、それじゃあ、他の人たちにも知らせないとね。」
そう言うと、黒髪の少女は、他の戦士たちにクックが帰ってきたことを言いに行った。
ミーシャ―・ペウ
「準備は出来てるな。」
そう言うと、ミーシャは準備していた草木に火を近づけた。
ミーシャ―・ペウ
「上手くいってくれよ…。」
そうしていると、草木に火が移り空に向かって白い煙を上げ始めた。
狼煙を上げ、ミーシャは再び木に登った。
ミーシャ―・ペウ
「反応はあったか。」
フェイ・グランの戦士
「ありました。」
ミーシャ―・ペウ
「そうか、なら良かった。」
しばらくすると、クックはミーシャたちと合流した。
ミーシャ―・ペウ
「良く帰ってきてくれた、誰にもつけられてはいないな?」
クック・モス・ドーバス
「つけられるわけがないでしょうこのクック・モスが、ドードバについて行ける者は同じクヤヒキ以外いませんから。」
ミーシャ―・ペウ
「それもそうだな。」
「早速本題だが、フェイリルの遣いどもはいつこの森に来る?」
クック・モス・ドーバス
「昨日出たので…、9日後には来るでしょう。」
ミーシャ―・ペウ
「そうか…、わかた。」
「よし、野営地を移動する。テントなどを片付けろ。」
ミーシャは部隊の戦士たちに命令した。
黒髪の少女
「もう移動するの?、クックさん帰ってきたのに。」
ミーシャ―・ペウ
「フェイリルに見つかりたくないから。狼煙を見られている可能性がある。」
黒髪の少女
「なるほど。」
その日の夜、ミーシャー隊は闇夜に紛れ野営地を移すのであった。
~9日後~
オービアを出たウィックたちは、クックの予想取り9日後にエルフの森に入るのであった。
加賀巳 ユウヤ
「久しぶりに戻って来たけど、やっぱりこの森は不気味だ。」
べベン・ベン
「やっとかぁ、城に戻ったら酒飲んで楽しむか。」
エルフの森に入った兵士たちは、長い護衛任務の終わりが見え気を緩めていた。
ウィック・ラズ
「森に入る前、信号弾を上げたが…、迎えが来ないな。」
「フェイリルに着く前に喰われたか。」
ウィックは、迎えが来ないことを考えながら森の中を進んでいくのであった。
加賀巳 ユウヤ
「嫌に静かだな。」
べベン・ベン
「何か言ったか?」
加賀巳 ユウヤ
「何も。」
そんな話をしていると、ユウヤの耳に風切り音が入った。
次の瞬間だった、先頭を走っていた兵士が、突如としてバイコンから落ちたのである。
フェイリルの兵士
「敵襲、敵襲!!」
加賀巳 ユウヤ
「敵襲!?」
そう考えている間もなく、ウィックたちを矢が襲った。
ウィック・ラズ
「このまま城へ迎え、どうやら矢の数的に人数は少ないようだ。」
ウィックはそう判断し、矢を受けながらも城へ急いだ。
しかし、予想外のことが起きた。護衛部隊の真ん中あたりを走っていたバイコンに矢が命中、突然のことにバイコンは暴れ始め後続を走っていた者たちと衝突、ユウヤとベベを乗せたバイコンも含め十数頭を巻き込み転倒したのである。
べベン・ベン
「イテテ…、大丈夫かユウヤ。」
加賀巳 ユウヤ
「一応、大丈夫です。」
話してる間もなく、転倒し取り残された者たちに、ミーシャー隊の魔の手が迫る。
加賀巳 ユウヤ
「来るか…。」
ユウヤは覚悟を決め、剣の持ちてに手を掛けた。
つづく…
「ミーシャー隊」
・ミーシャ―・ペウ率いるフェイ・グランの独立部隊。
・エルフ族が13名、クロム族が7名、異世界から召喚された者が2名所属している。
「ミーシャ」
・本名 ミーシャ―・ペウ
・年齢100歳
・異世界出身
・出身国 フェイ・グラン
・種族 エルフ族
・性別 男
・身長168cm
・灰色の髪で捻転毛、ショートヘアで前髪をかき上げている。もみあげが長い。
・フェイ・グランの独立部隊、ミーシャー隊の部隊長。
「クック」
・本名 クック・モス・ドーバス
・年齢98歳
・異世界出身
・出身国 ウェス・リード
・種族 エルフ族
・性別 男
・身長123cm
・黒髪で、ソストモヒカンのような髪型。
・フェイ・グランに雇われているクヤヒキ。




