密会
「ジーミア」、それは我々人類には観測できない場所に存在し、地球とは似ているようで似ていない、遠いようで近い存在の世界である。そこには、人間と同じ姿をしたクロム族と人間に似た姿をしたエルフ族が、生体エネルギー「バイオール」を操り、ともに共存・対立し暮らしている。
アドミア暦1195年プス38日、エルフの森に入ったウィックたちは、ミーシャー隊の襲撃に遭った。ユウヤを含む十数人は逃げ遅れミーシャらと戦闘になり、ユウヤはそこでフェイ・グランに召喚された少女"リナ・ラモス・リヴェラ"と出会った。
彼女は、ビーク・ロワのクロム族虐殺という野望を挫くため、フェイリルを裏切り自軍についてきて欲しいとユウヤに協力を求めた。
ユウヤは、同じくクロム族虐殺に反対するビークの娘"リューシー・ロワ"を連れ出そうと考え、それを一度断り、フェイリルに戻るのであった。
=フェイリル城= ~夜~
トール・マックス
「世の中、どこへ行っても慌ただしいものだねぇ。」
トールは、自室にて異世界に召喚された時に一緒に持っていた拳銃の手入れをしながら、一人呟いた。
トール・マックス
「だが、こいつがあれば…、」
トールは、手入れの終った拳銃に目をやった。
トール・マックス
「この戦争で活躍し、その褒美としてあの青髪のリューシーちゃんと…、クフフ…。」
トールは、皮算用を始めた。
その頃ユウヤは、自室のベットに寝転がり、エルフの森で出会ったリナという少女とのやり取りを思い出していた。
~回想~
リナ・ラモス・リヴェラ
「あなたも来るでしょ?」
加賀巳 ユウヤ
「すまない、まだそちらには行けない。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「え、何で?」
加賀巳 ユウヤ
「一緒に連れ出したい人がいるんだ。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「連れ出したい人?」
加賀巳 ユウヤ
「あんたと同じ考えの…、戦争を止めたいと考えている人が、フェイリルにいるんだ。」
「だから…、まだ自分は、そちらには行けない。」
リナ・ラモス・リヴェラ
「そうなんだ…。」
~回想終了~
加賀巳 ユウヤ
「行かないとな。」
そう言うと、ユウヤはナーバスな体を起こし、部屋を出た。
=フェイリル城内の片廊下=
ユウヤは、過去の記憶を辿り、以前リューシー・ロワと出会った片廊下に来た。
加賀巳 ユウヤ
「確か…、2つ先の部屋だったな。」
ユウヤは、2つ先にある部屋の前に立ち、扉を4回軽く叩いた。
リューシー・ロワ
「どなた?」
加賀巳 ユウヤ
「キンエイ所属の、加賀巳 ユウヤです。」
リューシー・ロワ
「!!!」
「…、帰ってください。」
リューシーは、扉越しにユウヤを追い返した。
加賀巳 ユウヤ
「待って、やましい理由で来たんじゃない、少しだけでも話を…」
リューシー・ロワ
「話を取り付けない、野蛮者と話すことなどありません!」
加賀巳 ユウヤ
「ビークがやろうとしていること、それを止めたいから来たんだ。」
「考えたんだ、なんであんたが"傀儡者"て言ったか。」
「それで自分は、外の世界を知るために、クワッサさんに頼んでウィックの護衛に連れて行ってもらった。」
「行った先で村落の人たちやクロム族の子供に出会った。」
「それでわかったんだ、ビーク・ロワは、こういう人たちを殺そうとしているんだって。」
リューシー・ロワ
「…、」
加賀巳 ユウヤ
「だから…、」
ユウヤが再び話そうとした時だった、それまで開く様子がなかったリューシーの部屋の扉が少し開いた。
リューシー・ロワ
「誰にもつけられてませんね?」
リューシーは、扉の間から顔を出し、ユウヤのほかに人がいないか確認した。
リューシー・ロワ
「どうぞ。」
リューシーは、ユウヤを部屋に招き入れた。
リューシー・ロワ
「父上は、自身の恨みを晴らすため、クロム族を滅ぼそうとしているのです。」
ユウヤを招き入れたリューシーは、自身の考えを話す傍ら、ティーカップにお茶を注ぎユウヤに差し出した。
加賀巳 ユウヤ
「どうも。」
ユウヤが差し出されたお茶を受け取ると、リューシーは再び話し始めた。
リューシー・ロワ
「クロム族が行ってきたことは、到底許すことのできない悪の所業です。」
「しかし、それは貴族である一部のクロム族が、自分たちの私腹を肥やす為に行われたこと。」
「恨みを晴らすならば、それらだけを滅ぼせばいい、それで済むんです。」
「しかし父上は、悪事を行った貴族らだけでなく、同じクロム族だからというだけで、何の罪もなく、無関係で、ただ平和に暮らしていた者たちをも、皆殺そうとしているのです、父は。」
リューシーは、自身の膝に乗せた手を握りしめ、肩を少し震わせながら答えた。
リューシー・ロワ
「私は、まるで悪をも知らぬ草花に罪を着せるような事、許せないんです…間違ったことなんです。」
「だから止めたい…いや、止めなくてはならないのです。」
加賀巳 ユウヤ
「…止めないといけませんね。」
黙って聞いていたユウヤが、口を開いた。
加賀巳 ユウヤ
「しかし、止めるとして、どうするんです?」
リューシー・ロワ
「私が父を説得します。」
加賀巳 ユウヤ
「説得…ですか。」
ユウヤは眉をひそめた。
加賀巳 ユウヤ
「あの王様、説得程度で変わるとは、とても思えませんよ。」
リューシー・ロワ
「それは…そうですね。」
リューシーは、ユウヤの返答に黙り込んだ。
加賀巳 ユウヤ
「…自分に考えがあります。」
ユウヤが、しばらく流れた沈黙を破った。
加賀巳 ユウヤ
「国を出て、連合に入るんです。」
リューシー・ロワ
「連合に!?」
加賀巳 ユウヤ
「はい。」
「連合に入り、リューシーさんが連合側からハクバラ同盟に講和を申し出るよう仕向けるんです。」
リューシー・ロワ
「講和…ですか…。」
「しかし、私にそのようなことが出来るのでしょうか?」
加賀巳 ユウヤ
「出来ますよ。」
「あなたは、国王の娘です。連合側はぞんざいに扱う事は出来ないはずです。」
「それに、実の娘が敵側にいるとすれば、王様も下手には事を起こせないでしょう。」
リューシー・ロワ
「なるほど…ですが、どうやって連合に入るのです?」
「私は、王であるビーク・ロワの娘であるので、そう易々と城は出れませし。」
加賀巳 ユウヤ
「連合には、フェイ・グランを通じて入ろうと考えてます。」
「どうやって出るかは、まだわからないですけど…きっと連れ出してみせます。約束します。」
リューシー・ロワ
「そうですか…。」
ユウヤの言葉を聞き、リューシーは微笑んだ。
リューシー・ロワ
「それでは期待しております、加賀巳ユウヤさん。」
加賀巳 ユウヤ
「はい」
そうしてユウヤは、リューシーと口約束をし部屋を出た。
=城内の通路=
自室に戻る途中、通路の隅で3人の兵士が酒盛りをしていた。
木箱をテーブル代わりに、自身と同じぐらいの背丈の男が二人、背丈が2m程はある大柄な男が一人が、酔っているのか目を虚ろにさせながら酒を飲んでいる。
ユウヤは、絡まれないように足を早や歩きさせ横を通り過ぎようとした。
大柄なエルフの兵士
「おや、戦士様じゃあないですか。こんな夜更けに、何をしておられるのです?」
ユウヤは、大柄な兵士に呼び止められた。
加賀巳 ユウヤ
「少し便所に。」
エルフの兵士1
「便所だってよ、つまらん返答だな。」
エルフの兵士2
「よしなさいよ、戦士様だって尿意を催すのだから。」
エルフの兵士1
「しっかし、戦士様が来た方向には、トイレなんぞはないのですけどうねぇ。」
エルフの兵士2
「本当は、リューシー様に会いに行ってたりして。」
エルフの兵士1
「そして、顔も合わせれず、追い返されたりして。」
エルフの兵士2
「そうだ、そうに違いない。」
ユウヤと同じ背丈ほど兵士二人は、顔を見合わせユウヤを小馬鹿にするように声を殺し笑った。
ユウヤは、その様子に少し腹を立ったが、これ以上この不快な空間に居合わせたくないので、再び早や歩きでその場を去ろうとした。
大柄なエルフの兵士
「戦士様、お待ちを。」
再び、大柄な兵士が呼び止めた。
大柄なエルフの兵士
「こんな夜中に出会うのは何かの縁です、もしよければ、共に一杯酒をかわしませんか?」
加賀巳 ユウヤ
「お誘いしてくださったところ申し訳ありませんが、明日も早いので。」
ユウヤは、それを断り去ろうとした。
大柄なエルフの兵士
「そんなこと言わずに、ねぇ。」
大柄な兵士は、去ろうとするユウヤの方を掴んだ。
エルフの兵士1
「ウォルビー無駄だぜ、戦士様はお堅いんだから。」
加賀巳 ユウヤ
「酒友の方も、ああ言ってますよ。」
ウォルビー・ガバ
「酒友は多いに越したことはありませんよ。」
「それとも、我らと飲めないような事がおありで?」
「例えば、敵国であるフェイ・グランの兵士を助けたり。」
加賀巳 ユウヤ
「!?」
ユウヤは、ウォルビーの発言に一瞬身を凍らせた。
加賀巳 ユウヤ
「…何のことでしょう。」
ユウヤは、しらばっくれて逃げようとした。
ウォルビー・ガバ
「戦士様よぅ!」
ウォルビーはそう言うと、ユウヤの肩を掴み引き寄せ顔面を殴り飛ばした。
殴り飛ばされたユウヤは、勢いで後ろ向きに倒れてしまった。
加賀巳 ユウヤ
「だぁ…コイツ!!」
激高したユウヤは、ウォルビーに殴りかかろうとした。
ビーク・ロワ
「なにをしておる!!」
ユウヤが殴りかかろうとした時、ビークが声を荒げ静止した。
ウォルビー・ガバ
「ビーク様、この者は昨日、フェイ・グランとの戦闘の中、私が敵に斬り掛かった中、それを庇い助けた裏切者なのです。」
ビーク・ロワ
「酔いどれの話など、聞き入れるか!!」
ビークは、手の甲でウォルビーの頬を殴った。
エルフの兵士1
「あぁ、痛そ。」
ビーク・ロワ
「そなたら」
エルフの兵士1、2
「はい!何でしょう。」
兵士二人は、背筋を張らせた。
ビーク・ロワ
「この者が、カガミユウヤが敵を庇ったと言っておるが、それは事実か?」
エルフの兵士1、2
「わかりません」
兵士二人は、口をそろえて答えた。
ビーク・ロワ
「そうか。」
そう言うと、ビークはユウヤに近づいた。
加賀巳 ユウヤ
「ビーク・ロワ…」
ビーク・ロワが、ユウヤの目の前に立った。
その時だった、ビーク・ロワは突然、ウォルビーにしたように手の甲でユウヤの頬を殴った。
加賀巳 ユウヤ
「何をする!!」
ビーク・ロワ
「この世界では、これが掟だ。」
そう言うと、ビークは去って行った。
ウォルビー・ガバ
「チッ」
ウォルビーと兵士二人は、バツが悪そうにその場を去った。
加賀巳 ユウヤ
「殴って…何が掟だよ。」
ユウヤは、この理不尽なことに苛立ちを覚えた。
つづく…
「ウォルビー」
・本名 ウォルビー・ガバ
・年齢71歳
・異世界出身
・出身国 フェイリル
・種族 エルフ族
・性別 男
・身長208cm
・髪型 黒髪の坊主。鼻下と顎に、薄く髭を生やしている。
・騎兵で、バイコンを駆り自身の背程もある矛で敵を斬る。




