トールとウイング
「ジーミア」、それは我々人類には観測できない場所に存在し、地球とは似ているようで似ていない、遠いようで近い存在の世界である。そこには、人間と同じ姿をしたクロム族と人間に似た姿をしたエルフ族が、生体エネルギー「バイオール」を操り、ともに共存・対立し暮らしている。
アドミア暦1195年プス17日、エルフ族の国フェイリルは、同盟国のフィル・ラブンと話し合いをするため王の側近であるウィック・ラズを会場であるオービアへ送り、その護衛にフェイリル兵団「キンエイ」を付けるのであった。ジーミアに召喚された青年「加賀巳 ユウヤ」は、外の世界を知るためそれに同行するのであった。
=フェイリル城=
トール・マックス
「張り切ってますねぇウイングさん。」
フェイリル城に残ったトールは、普段話し相手のユウヤがウィックの護衛でいないため、兵器開発で城に残っているウイングに話にいった。
ジョナサン・ウイング
「アメリカでは、思うように作れなかったからな。」
「悪いが、設計の邪魔だからあまり話かけないでくれ。」
新型兵器の設計をしていたウイングは、暇つぶしで話しかけに来たトールをあしらった。
トール・マックス
「せっかく、同じアメリカ人のオレが喋りかけてやったのに、お堅いねぇ。」
ジョナサン・ウイング
「…、」
トールは、ウイングに無視された。
トール・マックス
「無視かい、ウイングさん。」
ジョナサン・ウイング
「…、」
トール・マックス
「何にも言わないんだったら、一方的に聞き相手になってもらうぜ。」
トールは、一人で喋り始めた。
トール・マックス
「オレさ、母子家庭で育ったんだ。」
「小さい頃は親父もいたんだけどよ、うちのお袋がヒステリックでさ、」
「ちょっとしたことで声を荒げるは、酒や薬で暴れるは、」
「そんなんだからさ、うちの親父、オレが小さい頃に別の女を作って出ていったんだ。」
「そんなことがあってさ、親父が居なくなったんだけどよ、そうなったらお袋、今度はオレに標的を向けてきて、怒鳴るだけならましな方で機嫌次第で手も出してくるようになった。」
「しまいには、"自分は可哀そうな女"て、被被害者みたいに立ち振る舞う。」
「オレさ、お袋がいる家が嫌だったんだよ。だから、アメリカ軍に入隊して寮に入った。」
「それでさ、寮に入るため家を出たんだけどよ、その時、お袋何て言ったと思う?」
「"我が子が、祖国のため軍に入るなんて。今まで育ててきた甲斐があったわ。"て、そう言って泣き出したんだ、笑えるだろ。」
「そんなこんなで、アメリカ軍に入って新しい人生を歩んで行こうとしてたら、不思議な事に異世界に召喚され戦士になるなんて、人生どうなるかわからないものだな。」
「そっちはどうだい?オレの方よりかはマシだろう。」
ウイングは、しばらくうつむき考え込んだ後、重々しく口を開いた。
ジョナサン・ウイング
「皆、天国へ行ったよ。」
トール・マックス
「!?」
トールは、言葉を失った。
トール・マックス
「すまない…、まさか、そうとは思わなかったんだ。」
ジョナサン・ウイング
「…、」
トール・マックス
「じ、じゃあ、オレ訓練があるんで。」
「ウイングさん、いい物作ってくれると期待してますよ。」
トールはそう言い、その場を去った。
=オービア道中=
加賀巳 ユウヤ
「その"アナム"て言う、"フィル・ラブン"の王てどんな奴なんだ?」
エルフ族の兵士
「"アナム・ハーイン"、奴は天才さ。」
「数年前まで、大砲は撃ったら後ろに後退する、それがあたりまえだった。」
「しかし、アナムが作った大砲は、撃っても移動せず、さらに前から込めるのではなく後ろから弾を入れる、今までの常識を変えたんだからな。」
加賀巳 ユウヤ
「へー。」
エルフ族の兵士
「聞いておいて、生返事か。」
話し合いの場所であるオービア向かったウィック・ラズとその護衛部隊は、エルフの森を抜け現在はフラス川を沿って移動するのであった。
クロム族の兄弟1
「あ、軍隊だ。」
クロム族の兄弟2
「どこの国かなぁ?」
クロム族の兄弟1
「どこだろうなぁ。」
「そうだ。どこの国かは知らないけど、戦争に連れてってくれないか頼みに行こうぜ。」
クロム族の兄弟2
「うん!」
そう言うと、川で遊んでいたクロム族の兄弟たちは川沿いを進んでいたウィック達に話しかけに行った。
クロム族の兄弟1
「ねえねえ騎士さんたち、僕らも戦争に連れてってよ。」
エルフ族の兵士
「戦争に行きたいか?」
クロム族の兄弟は、勢いよく頷いた。
エルフ族の兵士
「そうかそうか。だが残念、お前らみたいのガキは連れていけないなぁ。」
クロム族の兄弟2
「そんなこと言わずにさぁ。僕ら、精一杯頑張るからさ。」
エルフ族の兵士
「そういわれても無理なものは無理だし、そもそも俺らは、今から戦争しに行くんじゃないからなぁ。」
クロム族の兄弟2
「そんなぁ…。」
クロム族の兄弟1
「それじゃあ話しかけ損じゃん…。」
クロム族の兄弟たちは肩を落としため息をついた。
エルフ族の兵士
「おいおい、そんな気を落とすなよ。」
「キャンディあげるから、ほら、元気出せよ。」
そう言い、エルフ族の兵士はキャンディの入った缶をクロム族の兄弟に投げ渡した。
クロム族の兄弟1
「ありがとおじさん!」
クロム族の兄弟は、受け取った缶の蓋を開けキャンディを出した。
クロム族の兄弟1
「わぁ…、」
クロム族の兄弟2
「いろんな色のキャンディだぁ。」
クロム族の兄弟1
「村の人たちに自慢しに行こうぜ。」
クロム族の兄弟2
「うん!」
そう言い、クロム族の兄弟たちは去って行った。
加賀巳 ユウヤ
「…。」
ユウヤは、この光景を見て不思議に感じた。
エルフ族の兵士
「どうした?変なものを見た様な顔して。」
加賀巳 ユウヤ
「こんな光景、元居た世界じゃありえないんで。」
エルフ族の兵士
「へぇ、あんたの居た世界は変わってるんだねぇ。」
加賀巳 ユウヤ
「(子供が戦争に行きたがるなんて、こっちがおかしいんだろ…。)」
その後も、ウィック・ラズとその護衛部隊は、フラス川を沿ってオービアへ向かうのであった。
つづく…
「ウイング」
・本名 ジョナサン・ウイング
・年齢 28歳
・アメリカ人
・性別 男
・身長178cm
・髪型 暗めの金髪で、少しやわらかめのストレートボブ。
・召喚される前は、アメリカ軍で兵器開発に携わっていた。
・好物はラザニア
「ウィック」
・本名 ウィック・ラズ
・年齢 不明
・異世界出身
・出身国 不明
・種族 エルフ族
・性別 男
・身長172cm
・髪型 灰青色の髪で、ややアップバングのロングウルフ。
・ビーク・ロワの側近。
・元奴隷で、出自や年齢は自身もわかっていない。
「フラス川」
・オービアに源流がある川。
・オービアからエルフの森まで流れており、ジーミア世界でもかなり長い。




