ウィック護衛任務
「ジーミア」、それは我々人類には観測できない場所に存在し、地球とは似ているようで似ていない、遠いようで近い存在の世界である。そこには、人間と同じ姿をしたクロム族と人間に似た姿をしたエルフ族が、生体エネルギー「バイオール」を操り、ともに共存・対立し暮らしている。
アドミア暦1195年プス15日、フェイ・グランに夜襲を受けたフェイリルは、同盟国である「フィル・ラブン」に、今回の夜襲の件について書き記した書面を送るのであった。
リューシー・ロワ
「"傀儡者"、」
加賀巳 ユウヤ
「なに。」
リューシー・ロワ
「なんでしょう。」
加賀巳 ユウヤ
「今、"傀儡者"て…」
リューシー・ロワ
「ええ、言いましたよ。」
「お父様に言われるがまま、考える脳もない"傀儡者"と。」
加賀巳 ユウヤ
「傀儡者て…こっちは、昨日連れてこられて何もわからないんだ。なのに、あんたは傀儡者て…一方的じゃないのか。」
リューシー・ロワ
「何も知らなければ、命を奪ってもよろしいのですか。」
加賀巳 ユウヤ
「それは…」
リューシー・ロワ
「わからないのなら教えてあげましょう。」
「あなたはお父様に、戦士としてこのジーミアに召喚されたのです。」
加賀巳 ユウヤ
「そんなのはわかってる。」
リューシー・ロワ
「話は最後まで聞きなさい!」
「お父様は、クロム族を根絶やしにするつもりなんです。」
加賀巳 ユウヤ
「だから、そんなのはわかってる。」
「クロム族て奴は、悪い奴なんだろ。君たちエルフ族を攻撃し、捕まえたものを奴隷にし、それで貿易をして。」
リューシー・ロワ
「それはそうですが…」
加賀巳 ユウヤ
「だったら、クロム族と戦うのは…親父さんがしようとしていることは、正しいじゃないのか?」
リューシー・ロワ
「それは!」
加賀巳 ユウヤ
「だったら、」
リューシー・ロワ
「もういいです…」
加賀巳 ユウヤ
「"もういい"?」
リューシー・ロワ
「あなたの様な人、戦争で死んでください!!」
ユウヤは床の中、リューシー・ロワとのやり取りを思い出した。
~翌日~
ユウヤとトールは、クワッサにオーラの指導を受けていた。
ウィック
「クワッサ・ガウはいるか。」
訓練中、ウィックと呼ばれる人物が、クワッサを呼びに来た。
クワッサ・ガウ
「はい、ここにいます。」
ウィック
「少し話がある。」
ウィックに呼ばれ、クワッサは場を離れた。
加賀巳 ユウヤ
「なんだ?」
しばらくした後、話を終えクワッサが戻ってきた。
加賀巳 ユウヤ
「クワッサさん、何を話していたんですか?」
クワッサ・ガウ
「あぁ、さっき話してた事か。」
クワッサ・ガウ
「今日の昼間、フィル・ラブンに送ったクヤヒキが返事を持って帰ってきたのだが、どうやら話し合いをしたいらしく、その会場までウィック様を護衛することになったんだ。」
加賀巳 ユウヤ
「護衛てことは、自分も?」
クワッサ・ガウ
「君たちは残ってもらう。」
加賀巳 ユウヤ
「そうですか。」
ユウヤは、少し残念そうに肩を落とした。
クワッサ・ガウ
「少しの間、城のことは頼んだぞ。」
クワッサは、その場を去ろうとした。
加賀巳 ユウヤ
「あの、クワッサさん。」
ユウヤは、クワッサを呼び止めた。
クワッサ・ガウ
「なんだ?」
加賀巳 ユウヤ
「無理を言ってることはわかってます。その護衛に、俺も連れてってくれませんか。」
クワッサ・ガウ
「どうしてだ?」
加賀巳 ユウヤ
「外のことを知りたいんです。」
「成り行きで戦士になったけど、この世界のことをわからないまま戦うのは嫌なんで。」
クワッサ・ガウ
「そうか…、」
クワッサは、しばらくの間考え込んだ。
クワッサ・ガウ
「わかった、どうにかして護衛に連れていけないか考えよう。」
加賀巳 ユウヤ
「ありがとうございます。」
こうしてユウヤは、ウィックの護衛に連れて行ってもらうことになった。
~翌日~
ウィックとそれを護衛するクワッサ達は、話し合いの会場であるオービアへ出発した。
加賀巳 ユウヤ
「すいません、乗せて貰って。」
エルフ族の兵士
「別にいいってことよ。」
クワッサに頼み込み護衛に同行したユウヤは、バイコンと呼ばれる角が生えた大柄な馬のような生物に乗せて貰うのであった。
エルフ族の兵士
「それにしても、あんた物好きだよな。」
「外のことが知りたいからって、資料を読めばいいものを、わざわざ護衛についてくるなんて。」
加賀巳 ユウヤ
「どうしても自分の目で見たかったんで。」
エルフ族の兵士
「へぇ。」
エルフ族の兵士は生返事をした。
毛で覆われた生物
「キャン!キャン!」
加賀巳 ユウヤ
「あれは?」
ユウヤは、先頭のバイコンに乗っている毛で覆われた生物について質問した。
エルフ族の兵士
「あれか?ウルルーだよ。」
「ニトロワークスを避けるため連れている。」
加賀巳 ユウヤ
「ニトロワークス?」
エルフ族の兵士
「植物の成長する速さが異常な場所さ。」
「元々草も生えない荒れ地だった場所が、突如として木々が生い茂る雑木林になったて話も聞く。」
「そこで育った植物は、普通の物より一回り程大きく、その種はちょっとしたことで爆発し足を簡単に吹き飛ばす。」
加賀巳 ユウヤ
「危険な場所なんだな。」
「どうして、ウルル―て生き物は、ニトロワークスがあるてことがわかるんだ?」
エルフ族の兵士
「さぁな。よくわからないけど、昔っからウルル―連れて避けてるから。」
加賀巳 ユウヤ
「へぇ。」
その後も何事もなく、クワッサ達はオービアへ向かうのであった。
~夜~
クワッサ達は、休息を取るため道中にある村落を訪れた。
ウィック
「水と食料を分けてもらいたいのだが。」
村落の住民
「ただでは渡せませよ。」
ウィック
「これでいいかな。」
ウィックは、住民に小袋を渡した。
村落の住民
「重いな…、中身は?」
ウィック
「金貨だ、30枚ほど入っている。」
村落の住民
「十分ですな、用意しましょう。」
クワッサ達は、村落の住民に水と食料を分けてもらった。
クワッサ・ガウ
「気分はどうだ?」
加賀巳 ユウヤ
「少し疲れました。」
地べたに座り込んでいたユウヤに、クワッサが話しかけてきた。
クワッサ・ガウ
「外の世界を見て、どうだ?」
加賀巳 ユウヤ
「自分のいた世界とは違うんだって、あらためて思いましたよ。」
クワッサ・ガウ
「そうか。」
クワッサ・ガウ
「自身がいた世界が恋しくなったか?」
加賀巳 ユウヤ
「いいえ。」
クワッサ・ガウ
「"いいえ"?」
加賀巳 ユウヤ
「帰りたい場所じゃないんで。」
クワッサは、ユウヤの返答に少し言葉を詰まらせた。
クワッサ・ガウ
「すまない、嫌なことを聞いてしまったな。」
加賀巳 ユウヤ
「別に大丈夫です。」
クワッサは、ユウヤのそばで座り込んだ。
クワッサ・ガウ
「1つ聞きたいことがあるのだが、いいかな?」
加賀巳 ユウヤ
「聞きたいこと?」
クワッサ・ガウ
「どうして、護衛についてきてまで、外のことが知りたいのかって。」
加賀巳 ユウヤ
「"リューシー・ロワ"て人に言われたんです。"言われるがまま戦う愚か者"って。」
クワッサ・ガウ
「そうか。」
加賀巳 ユウヤ
「クワッサさん、教えてください。」
「なぜ、リューシー・ロワて人は、自分にそんなことを言ってきたのか。あの人、ビーク・ロワの娘なんでしょ。」
クワッサは、少し考え込み話し出した。
クワッサ・ガウ
「リューシー様は、争いが嫌いなのだよ。」
「戦いのなく、エルフ族とクロム族が互いに手を取り合う世界、それが彼女の理想なのさ。」
「しかし、父であるビーク・ロワは、恨みを晴らすため戦争を起こし、君やトール達をこの世界に召喚した。」
「リューシー様は、それが嫌だったのだろう。争いの為に召喚された君たちがいれば、父は争いを止めない。」
「だからリューシー様は、君に考え直して欲しいと思ってそんなことを言ったのだろ。」
加賀巳 ユウヤ
「そうなんですかね。」
クワッサ・ガウ
「そうだと思う。」
「まぁ、あくまで自分の想像だがな。」
クワッサ・ガウ
「そろそろ終わろうか。明日の朝は早い。」
加賀巳 ユウヤ
「わかりました。」
クワッサは、話を切り上げその場を離れた。ユウヤは、地べたに寝転がり目を閉じるのであった。
つづく…
「フィル・ラブン」
・エルフ族とクロム族が共存するコーエンの国。
・7大陸の1つである、森と砂漠の大陸「リーンサンド」に位置する国。
・兵器産業が盛ん、造船業や鉄鋼産業もしている。
・国王は、クロム族の「アナム・ハーイン」。
「ニトロワークス」
・植物の成長速度が以上に早い場所。
・ニトロワークスで育った植物は、普通の物より一回り程大きく、その種子は軽い衝撃で爆発する。
・ニトロワークスは前触れもなく、突如発生する。
「バイコン」
・体長3m~3.4m
・体重1.3t~1.6t
・頭部に1本角が生えた、大柄な馬。
・足はそれほど速くないが持久力があり、軍が遠い場所へ遠征する際に使われる。また、力が強く、重い荷物の運搬や農作業などでも使われる。
「ウルル―」
・体長38cm~45cm
・体重3kg~4kg
・草食動物
・全身が毛で覆われた生き物。
・嗅覚が発達しており、ニトロワークスのにおいをかぎ分ける事が出来るため、旅人に人気がある。好奇心旺盛で人懐っこい。果物が好物で、一度野生のウルルーにあげると、あげた者のにおいたどり家まで追いかけてくる。
「リューシー」
・本名 リューシー・ロワ
・年齢16歳
・異世界出身
・出身国 フェイリル
・種族 エルフ族とクロム族のハーフ
・性別 女
・身長 158cm
・髪型 青髪で、前髪がワイドのストレートロング。
・フェイリルの王「ビーク・ロワ」の一人娘。




