第十六話:〇す!
静まり返った生徒会室。
周りを見る。
今、いるのは深見四兄弟と春原さんのみ。
よし。
私、良く耐えた。
一つ、息を吐く。
そして――
「遼……貴様!」
隣でのんびり座っている遼の胸ぐらを掴み、身体を揺する。
「わぁ、美夜ってば、情熱的だなぁ~」
「黙れ、このクソ顔面凶器男!」
「それ、クソを除いたら褒め言葉じゃない?」
「ぐっ……!」
息を飲む。
そんな私にニッコリ微笑む遼は、やはり顔面凶器だ。
一瞬、ドキリとしてしまった自分に腹が立つ。
「一発殴らせろ!」
「え~、嫌だよ。痛いじゃん?」
「当たり前だろうが!痛くしたいから、グーで殴るんだからな!」
拳を振り上げた瞬間――
パシッ。
腕を掴まれた。
ハッとして遼を見下ろす。
遼は楽しそうに笑った。
「お前、本当に……じゃじゃ馬だな」
そして、
「そういう所が、可愛くもあるけどな」
チュッ
唇に、軽いキス。
「~~~っ!」
慌てて手で口を押さえる。
仰け反った私を、遼が腰を抱いて引き寄せた。
「本当に……」
耳元で囁く声。
「お前って、予想外だな」
思わず顔を上げる。
近い。
遼の顔が、すぐ目の前にあった。
そして――
唇が重なった。
……
…………
………………
死ぬっ!死ぬ!
しかも、これって……!
窒息しそうになり、遼の背中を叩く。
離れない。
死ぬから!
お前、私を殺す気か!
グーで背中を叩きまくる。
ようやく唇が離れた。
ゼェゼェと息を吸う。
顔を上げた瞬間――
四人の視線。
唖然。
完全に見てた。
私はゆっくり遼を見上げ、そして四人を見る。
「ぎ……」
「ぎゃーーーーー!」
叫んだ私に、遼は
「赤くなったり、青くなったり、忙しい奴だな」
あははははっと、爽やかに笑っていやがる。
(こいつ……)
(こいつ……)
(マジで〇す!)
怒りに拳が震える。
だが、殺気に反応する遼。
私は深呼吸を繰り返し――
にっこり笑った。
遼が首を傾げる。
その瞬間。
パァン!!
綺麗に右平手打ちが、遼の頬に炸裂した。
生徒会室に乾いた音が響く。
「遼……最低っ!」
ゴシゴシと唇を拭いながら、私は背を向ける。
「みぃ……!」
遼の声が背中を追う。
「来ないで!」
振り返る。
「あんたの顔なんか、見たくない!」
睨みつけた、その瞬間。
遼の顔が見えた。
――傷付いた顔。
私よりも。
だけど私は、
そのまま背を向けた。
バンッ!
ドアを叩き閉める。
生徒会室に、重い音が響いた。




