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第34話:ワイ、オークションで大暴れwww 〜怒涛のレスバでバイヤーの脳を破壊し、市場価値を底割れさせる〜

 中央諸国連合とラーグ法国の国境に位置する、法も届かぬ暗黒の地下都市「アンダー・ラーグ」。

 その最深部にある大競売場は怪しげな魔導ランプの光に照らされ、異様な熱気と金、そして欲望の悪臭に満ちていた。


 この市場で取引されるのは、人間至上主義を掲げるラーグ法国の息がかかった、非合法な亜人奴隷や貴重な魔獣、そして曰く付きの呪物たちである。観客席を埋め尽くしているのは高級な毛皮を纏った大富豪、偏屈な魔術師、暗黒街の元締め、そして冷酷なバイヤーたちだ。


「さあさあ、紳士淑女の皆様! お待たせいたしました! 本日の目玉オークションの時間がやってまいりました!」


 ステージ中央、豪奢な燕尾服を着たオークショニアの男が拡声の魔導具を片手に声を張り上げる。背後には、頑丈な魔力中和の鉄格子で覆われた巨大な檻が置かれていた。


「今回、国境守備隊の皆様から特別ルートで仕入れましたるは、ただの亜人ではございません! 一見すると小汚い黄色のカエル! しかしなんと、人間の言語を完全に解し、知性(?)を有した、大陸史上類を見ない新種の希少生物にございます!!」


 オークショニアが劇的に腕を振ると、檻を覆っていた黒い布が引き剥がされた。

 中にいたのは、もちろん、銀貨3枚で売り飛ばされた黄色いカエル――こと「なんJ民」である。


 普通、この手のオークションに出品される奴隷や魔獣は恐怖に震えているか、あるいは敵意を剥き出しにして唸り声を上げているものだ。しかし、この世界のバグは違った。

 なんJ民は、檻の中でふんぞり返り、まるで自宅の学習机の椅子にでも座っているかのようにリラックスしたポーズで観客席の富豪たちを見下ろしていた。


「おっ、なんやなんや、えらい人が集まっとるやんけwww ワイの公式ファンミーティングか? www ちょっと照明眩しいから、ルクス下げてクレメンスwww」


 拡声の魔術を通じて会場全体に響き渡ったその声は、あまりにも緊張感がなく、そして致命的にイラつかせる「ぬめり」を帯びていた。

 観客席の富豪やバイヤーたちが、一瞬にして静まり返る。


「……何だ、あの不快な鳴き声は?」

「本当に喋るようだが……全く畏怖というものを感じんぞ」


 オークショニアは、会場の微妙な空気を察し、慌ててハンマーを叩いた。


「さ、さあ! 研究素体としてもよし、見世物小屋の看板にしてもよし! 新種の喋るカエル、スタート価格は景気よく金貨10枚からといたします!! どなたか、入札される方は――」


「ちょっと待てや!! www」


 オークショニアの声を遮り、檻の中からなんJ民の鋭い突っ込みが飛んだ。


「おいおいおい、司会のおっちゃん!! www 金貨10枚って何やねん!! www ワイのポテンシャルを低く見積もりすぎやろ!! ネットのフリマアプリの最低出品価格か!? www 期待値、最初からドブに捨てるのやめーや!! 」


 会場の最前列に座っていた、太った大富豪の男が、不快そうに葉巻を燻らせながら、値踏みするような目をなんJ民に向けた。


「ふん、騒がしい家畜だ。口の利き方も知らんようだな。……まあ、我が屋敷の庭の池で、客人を驚かせる一発芸くらいには使えそうだ。金貨10枚で落札してやろう」


 富豪がパッと木札を掲げた。

 普通の奴隷なら、ここで買い手が決まったことに安堵するか絶望する。だが、なんJ民にとって、これはレスバの配牌(配られたカード)にすぎなかった。


「おい、そこ座っとる肥満体型の成金おっちゃん!! www」


 なんJ民は檻の鉄格子に吸盤の手をかけ、富豪を指差してケラケラと笑い出した。


「庭の池で一発芸? お前、脳みそまで脂肪で詰まっとんのか!? www ワイみたいな天災級のバグをそんな狭い池に閉じ込めたら、三日でストレスで池の水全部抜ける(実質環境破壊)ぞ!! www ていうか、その体型で金貨10枚しか出せへんの、シンプルに財政状況ひっ迫しとるやろ!! 無理してオークション来んで、家で大人しく特売の家畜用パンでも齧っとれや!! 」


「な……、何だとっ!?」


 大富豪の顔が、一瞬で真っ赤に染まった。周囲のバイヤーたちから、クスクスと失笑が漏れる。


「お前らも笑っとる場合ちゃうぞ、そこの魔術師のおフード被った暗いお兄さん!! www」


 ターゲットは、次に手を出そうとしていた怪しげな魔術師へと移る。


「ワイを実験体にする気満々の目で見てるけどな!! ww 予言したるわ、お前のその貧弱な魔力じゃ、ワイのぬめり成分の分子構造一つすら解析できずに、脳のキャパシティ超えて発狂するのがオチや!! www 論文のタイトルは『カエルを解剖しようとしたら自分の社会的評価が解剖された件』で決まりやな!! 期待値、マイナス無限大!! www」


「この……、無礼な両生類めが……!」


 魔術師は怒りのあまり杖を震わせたが、言葉が出ない。なんJ民の放つレスバのテンポは、この世界の住人が経験したことのないスピード(2ch仕込み)だった。


 会場の空気が、徐々に「お買い得なオークション」から「最悪の愚痴り場」へと変貌していく。

 オークショニアは冷や汗をだくだくと流しながら、なんとか進行を試みた。


「え、えー……! 現在、金貨10枚の入札が一件です! どなたか、金貨12枚、あるいは15枚で応じる方は――」


「出すわけないやろ、そんな大金!! www」


 なんJ民は檻の中で首を横に振った。


「おい、バイヤーの諸君、よーく考えろよwww ワイを買うということはな、四六時中この極上のマシンガントーク(嫌がらせ)を耳元で聴き続ける義務が発生するということやぞ!! 朝起きてから寝るまで、お前らの人生の選択肢のミスや、過去の黒歴史、嫁に隠しとるへそくりの場所まで、ワイが全部看破して大声で煽り散らす生活がスタートするんや!! これ実質、金払って家に動く精神攻撃トラップ設置するようなもんやろがい!! www」


 その言葉に、会場のバイヤーたちがハッと息を呑んだ。

 確かに、このカエルは喋る。それは希少だ。しかし、あまりにもうるさすぎるし、内容が的確にプライドを傷つけてくる。


「待てよ……。あのカエルを屋敷に置いたら、我が一族の威厳が崩壊するのでは……?」

「四六時中『お前の顔面、期待値底割れしとるぞwww』とか言われたら、精神が持たん……」


 客席に、急速な買い控えの波が広がっていく。

 なんJ民のレスバは止まらない。彼はバイヤーたちの表情を見て、さらに攻勢を強めた。


「ほーら見ろや!! 全員日和っとるやんけ!! ww 暗黒街の覇者(笑)とか、大富豪(爆笑)とか名乗っといて、カエル一匹のレスバにビビって財布の紐ガッチガチで草ァ!! www ラーグ法国の奴隷市場、購買意欲の期待値完全崩壊www これ実質、デフレの引き金引いたのワイやろ!! www」


「だ、誰か!! このカエルを金貨20枚で買って、今すぐその口を縫い合わせてくれ!!」


 一人の富豪が悲鳴のように叫んだ。


「おっ、口を縫い合わせる? ww 暴力に訴えるとか、ディベートで敗北を認めたのと同じやぞ!! www ていうか、金貨20枚とかケチ臭いこと言わんと、金貨100枚くらいドンと出してみんかい!! 出されへんの? あ、もしかして、おたくの会社、今期赤字なんか? www 倒産寸前の泥舟企業乙!! www」


「もう嫌だ!! 入札を取り消す!! 金貨10枚の入札は無しだ!!」


 最初に札を掲げた太った富豪が、頭を抱えて札を投げ捨てた。


「ええっ!? 入札の取り消しですか!?」


 オークショニアが絶望の声を上げる。


「当たり前だ!! あんなものを家に連れ帰ったら、ストレスで胃に穴が空くわ!!」


 市場の価格決定権イニシアチブは、完全に檻の中のカエルに握られていた。

 誰も入札しようとしない。むしろ、目を合わせたら何を言われるかわからないため、大富豪たちが次々と視線を逸らし始めた。


「さあ……、どなたか……。金貨……いや、銀貨50枚からでも……」


 オークショニアの声は、今にも泣き出しそうだった。


「諦めーや、おっちゃんwww 市場の期待値は現在、底を突き抜けてマントルまで到達しとるわ!! www 誰もワイという名の歩く劇薬をコントロールできへんのや!! www」


 なんJ民は、檻の中で寝転がり、足をパタパタとさせながら言った。


「どうするよ? ww 誰も買わんのなら、ワイをここで無料タダで解放して、ついでに慰謝料としてポテト1年分くれたら、穏便に済ませたるで? www」


 その時、会場の隅から、冷酷な声が響いた。


「……そこまでだ、下劣な亜人め」


 現れたのは、この奴隷市場を裏で管理しているラーグ法国の暗黒司祭であった。彼はなんJ民のあまりの傍若無人ぶりに、これ以上の市場のメンツ崩壊を恐れ、強制介入してきたのだ。


「オークショニア、そのカエルの競売は中止だ。商品価値なしの不良在庫として、今すぐ処分――」


「不良在庫って誰のことやねん、このハゲ!! www」


 なんJ民の容赦ない言葉が、暗黒司祭の頭頂部(実際、少し薄い)に突き刺さった。


「神の代理人面しといて、裏で奴隷売買で中抜き(実質脱税)しとるハゲに、不良在庫とか言われたくないわ!! ww お前のその頭の光り方、聖なる光じゃなくて、ただの脂ぎった期待値の残滓やろがい!! ラーグの神様も、お前の頭頂部の防衛には失敗したみたいやな!! www」


「……っ!? ぶ、無礼なァァァ!!」


 暗黒司祭は顔を般若のように歪め、怒りのあまり血管が破裂しそうになりながら、衛兵たちに怒鳴り散らした。


「今すぐ!! 今すぐそのカエルをここから連れ出せ!! 最果ての鉱山にでも売り飛ばせ!! 銀貨1枚でも、いや、タダでも構わん!! 我が視界から、その黄色い汚物を排除しろぉぉぉ!!」


「よっしゃ、銀貨1枚への大暴落(底値更新)確定!! www ワイのレスバ、今日も完全勝利やな!! www 期待値、実質大勝利の逃亡劇(ドナドナ第二弾)スタートやあああ!! www」


 なんJ民は、衛兵たちに檻ごと乱暴に担ぎ上げられ、ブーイングと失笑、そして謎の感動(?)に包まれた大競売場から退場していった。

 後に残されたのはプライドをズタズタに引き裂かれ、二度とオークションに参加する気力を失った富豪たちと、暗黒街の歴史的大暴落の記録だけであった。


 世界のバグ、暗黒市場をレスバだけで完全崩壊。

 なんJ民の次なる行き先は、最果ての魔鉱山――しかし、そこで待っているのは、さらなる混沌の始まりにすぎなかった。

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