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第28話:【悲報】ワイ、逃亡wwwwww

 中央諸国連合、ドラシール竜王国国境付近に位置する街、デッドロック。

 この世の終わりのような名前の街にある、さらに終わっている酒場「豚のケツ亭」の空気は、ドブ川の底を煮詰めたような臭いがしていた。


「おい、カエル。さっきから黙って聞いてりゃ、随分とデカい口を叩くじゃねえか。その女を置いてさっさとこの街から消えな。さもないと、その緑の皮を剥いで、俺の予備の財布にしてやるぜ」


 ナイフを弄ぶ三下のごろつき。そいつに向かって、ワイは、水で薄められすぎて透明になった酒(のような何か)を啜りながら、半眼で言い放った。


「おーい、お兄さんwww そのナイフ、最後に研いだのいつや? www 刃こぼれしまくりで、もはや攻撃力マイナス域の鉄くずやんけ!! www それでお前、誰を脅せると思っとるん? www 期待値、今ので完全消滅やぞ!! www」


「……あ、あんた。いきなりそこから入るのね」


 隣でワインを飲むローズが呆れ顔で呟く。


「お前みたいなモブのAが、なんでわざわざワイみたいなクズに絡んでくるんか、理解に苦しむわwww ドラシールが燃えて混乱しとる今、あっちに行って落ちてる貴金属でも拾ったほうが、人生の時給100倍は高いぞ? www なぁ、お前、自分が物語の添え物としての自覚、足りてへんのとちゃうか!? www」


「……ぐ、……う……」


「ほら、泣くなや!! www 自分の知能指数の低さを呪って、田舎に帰って牛の世話でもしとけ!! www さよなら、期待値ゼロの敗北者くん!! www」


 ごろつきはナイフを落とし、顔を真っ赤にして号泣しながら酒場を飛び出していった。それを見た店内の客たちが、一斉にワイから視線を逸らす。

 関わったら脳が破壊されると本能が察知したのだろう。


「……はぁ。あんた、どこに行ってもそうやって敵を作るのね」


 ローズが、薄い酒を不快そうに飲み干す。


「敵ちゃうわ、啓蒙やwww それよりローズさん。これからどうするよ? www ドラシールは出禁になったし、ここは地獄のサンドイッチ状態やwww ワイの勘やと、ここもすぐ飽きる気がするわ」


「私は監視の任務をしているだけだから、あんたがどこへ行こうとついて行く。……もっとも、あんたを野放しにしたら、この大陸そのものがぬめりとレスバで覆い尽くされそうだからね」


「監視(笑)やな!! www ほな、世界中どこまでも連れ回したるわ!! www」


 ワイが頭を抱えながら、次なる期待値が高い場所を探そうと知恵を絞っていた、その時だった。


 酒場の隅で、泥酔した冒険者たちが震える声で話しているのが耳に入ってきた。


「……聞いたか? 南のレイネシア王国が、実質的に崩壊したらしいぞ」

「あぁ、焔竜ンゴンゴが消えたって噂か? 信じられねえが……」

「それだけじゃねえ。その混乱の引き金になったのは、あの国の最強の聖女と水の精霊にせいみたいだ。あの二人が数々の都市どころか王城にまで暴れ回り、魔法で街を水没させたせいで、王都は大暴動になったってよ」


 ワイの耳がピクリと動く。


「……しかも、恐ろしいのはその後だ。聖女と精霊は、何を血迷ったか北上してきてるらしい。……この、中央諸国連合を目指してな」


 ワイの背中に、嫌な汗が流れた。

 見覚えがある2人の噂を聞き、ワイはガタガタと震え、冷や汗をかく。


「……ローズさん、聞いたか?」


「ええ。聖女と精霊……。もし本当なら、ドラシールの女王よりも厄介な連中。特に水の精霊なんて、あんたのぬめりを洗い流すには最適の相性じゃない?」


「ヒエッ!! www 浄化されるのはNGや!! www ワイ、綺麗なカエルになったらアイデンティティ崩壊してまうわ!! www」


 ワイは即座に立ち上がった。


「決めたぞ!! 逃げるぞ、ローズさん!! www」


「……えっ、今すぐ?」


「当たり前や!! www 聖女と精霊? www そんなの、ワイみたいなただのレスバ民が相手にしてええレベルの敵ちゃうわ!! 期待値、完全にマイナス域突入や!! www」


 ワイはカウンターに、残っていた数枚の銅貨(ドラシールから持ち出した盗品)を投げ捨てた。


「おっちゃん、ご馳走様!! www 酒は不味かったけど、情報は最高やったわ!! www」


「おい、待てカエル! どこへ行くんだ!?」


 店主の呼びかけを無視し、ワイはローズの手を引いて酒場を飛び出した。


 夜の街道。さびれたデッドロックの街を抜け、ワイは地図も見ずに、とにかく北西――聖女たちが来ると言われている南側から最も遠い方向へと走り出した。


「ちょ、ちょっと! どこに行くの! 全然計画がないじゃない!」


「計画なんて要らんわ!! www ヤバい奴が来ない方、それがワイのコンパスや!! www 新しい街に行って、新しい床を磨いて、また誰かを煽るんや!! www」


 背後で、レイネシアを滅ぼした(と噂される)聖女と精霊の影が迫っている(ような気がする)。

 前方には、何も知らない新しいカモ(犠牲者)たちが待つ、未知の中央諸国連合の奥地。


「ひゃっはー!! www 逃亡、期待値MAXやあああ!! www」


 こうして、なんJ民と茨の魔女ローズの、無計画かつ破滅的な大陸縦断・煽り逃避行が幕を開けた。

 だが、ワイはまだ知らない。

 その逃げた先に、マキア王国の「一刻」という、さらにガチな討伐部隊が待ち構えていることを……。

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