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第168話 「塩むすび対決」 ― マサ vs 八恵子 ― 料理人の本気。


朝の仕込みが終わった、静かな厨房。

まな板を拭きながら、

板前のマサがぽつりとつぶやいた。

「なぁ、八恵子」

「ん?」

「料理人の腕ってさ……

 結局、塩むすびで分かると思わないか?」

八恵子は手を止め、ゆっくり振り向く。

「……ほう?」

その目が、少しだけ鋭くなった。

「ずいぶん、

 面白いこと言うじゃないかい。マサさん。」

マサは炊きたてのご飯を指さす。

「具なし。

 海苔なし。

 余計な小細工なし。」

「米と塩だけ。」

「それで美味いかどうか。

 それが料理人の腕だろ?」

数秒の沈黙。

そして八恵子は笑った。

「いいねぇ。」

「やろうじゃないか。」

厨房の空気が変わる。

テーマはただ一つ。

塩むすび。

ルール

・具なし

・海苔なし

・米と塩のみ

それだけ。

マサは炊きたての米をしゃもじで切る。

「米は立たせる……」

「潰すなよ……」

小さくつぶやきながら、

丁寧に手のひらへ。

一方、八恵子。

何も言わず、

静かに塩を指でつまむ。

その動きはまるで職人芸だった。

数分後。

皿の上には

二つの塩むすび。

どちらも

美しい三角形。

店の常連、鈴木が呼ばれた。

「え?俺?」

「審査員だ。」

「まじで?」

鈴木はまずマサの塩むすびを食べる。

「……」

「……」

「米、甘っ!」

「握り、ふわっとしてる…」

続いて八恵子。

「……」

「……」

そして鈴木は頭を抱えた。

「いや、これ」

「どっちも美味いんだけど!?」

厨房が静まり返る。

マサが笑う。

「だろ?」

八恵子も肩をすくめる。

「そりゃそうさ。」

「料理人だからね。」

そして八恵子がぽつり。

「結局さ」

「料理ってのは――」

「シンプルなもんほど誤魔化しが効かない。」

マサも頷く。

「だな。」

「だから面白い。」

湯気の立つ塩むすび。

それは

料理人の誇りそのものだった。


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