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第159話 ###『フライには、ソースか?醤油か?』


暖簾をくぐる音と一緒に、

発泡クーラーがカウンターに置かれた。

「こんばんわぁー」

「恵比寿さん!」

忍が顔をほころばせる。

「今日は、いいの釣れたんですよ」

蓋を開けると、

銀色に光る肉厚の鯵が、氷の上に並んでいた。

趣味とは思えない、まさにプロ級。

「いつも悪いわね。頂いてばかりで」

「女将さん、こちらこそですよ。

ここで旨いもん食わせてもらってるし、

それに――」

恵比寿は、ちらっと厨房を見る。

「マサさんに捌いてもらえる」

「こんな上物、なかなか食えませんよ」

板前のマサさんが、嬉しそうに笑った。

「ありがたい話です」

鯵三昧、始まる

「リクエストあります?」

「刺身となめろうはお願いするとして……

今日はアジフライがいいかね」

「あいよっ」

包丁が入る。

骨を外し、皮を引き、

身は艶を保ったまま。

刺身、なめろうが手際よく並び、

最後に――

黄金色のアジフライ。

肉厚で、衣は軽く、

見るからにサクッといきそうだ。

「うわぁ……」

恵比寿が声を上げる。

「刺身もなめろうも最高だよ!

女将さんもマサさんも食べてくれ!」

「いただきます」

そして、恵比寿は

アジフライを前に、箸を止めた。

フライの前で、人は迷う

「……フライには、やっぱりソースかなぁ」

「どうしたの?」

忍が笑う。

「いやね、

醤油も捨てがたいし……」

その時、マサさんがぽつり。

「ソースもいい。

でもな、醤油も塩も合うぜ」

恵比寿が顔を上げる。

「三枚もあるだろ?」

「……あ、ほんとだ」

「全部、試しゃいいさ」

恵比寿は笑った。

「じゃあ、全部いきますか!」

鯵フライ(板前仕立て)

材料(2〜3人分)

鯵(大)……2〜3尾

塩・胡椒 …… 少々

小麦粉 …… 適量

卵 …… 1個

パン粉 …… 適量

揚げ油 …… 適量

作り方

下処理

三枚におろし、腹骨をすき取る。

軽く塩を振り、5分ほど置いて水分を拭く。

衣付け

小麦粉 → 溶き卵 → パン粉。

押さえすぎず、ふんわりと。

揚げる

170〜180℃の油で、

片面約2分ずつ。

衣がきつね色になったら引き上げる。

食べ方三種

① ソース

王道。間違いない安心感。

② 醤油

鯵の旨味が一番立つ。

新鮮な魚ほど合う。

③ 塩

衣の香ばしさと脂を

まっすぐ味わえる。

鯵の刺身

三枚おろしにし、

皮を引いてそぎ切り。

わさび+醤油で。

なめろう

材料

鯵の身

味噌

生姜

長ネギ or 大葉

作り方

包丁で粘りが出るまで叩く。

ご飯にも酒にも合う一品。

板前マサさんの一言

「フライは調味料で決めるもんじゃねぇ。

素材が良けりゃ、何つけても旨い」

恵比寿は、

三通り全部食べて、満足そうに笑った。

「結論――

どれも正解だね」

夜のしのぶに、

油と魚の香りが、

やさしく残っていた。

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