第158話 『卵かけご飯と、決断の朝』
朝方の店は、
夜とはまるで別の顔をしている。
シャッターは半分。
外は白み始めているのに、
店の中だけは、まだ夜の続きを引きずっている。
カウンターの端に、
一人の男が座っていた。
「……マサさん。
卵かけご飯、できますか」
「あるもんでよけりゃな」
板前のマサさんは、
いつも通りの口調でそう言って、
炊飯器の蓋を開けた。
忍さんが、小さく呟く。
「この時間に来る人って、
だいたい大きなこと決める前ですよね」
マサさんは、何も言わない。
ただ、手を動かす。
卵かけご飯(深夜食堂・朝の決断仕様)
材料(1杯分)
温かいご飯 …… 丼1杯
卵 …… 1個(新鮮なもの)
醤油 …… 小さじ1〜2
白ごま …… 少々
刻みネギ …… 少々
刻み海苔 …… お好みで
バター …… 小さじ1(※入れても入れなくても)
作り方
卵を分ける
卵は黄身と白身に分ける。
白身をご飯に混ぜる
温かいご飯に白身を入れ、
箸でしっかり混ぜる。
ご飯が少しふわっとするまで。
黄身をのせる
中央にくぼみを作り、
黄身をそっと落とす。
味付け
醤油を回しかけ、
白ごま、刻みネギ、刻み海苔を散らす。
バターを入れるなら、黄身の横に。
仕上げ
黄身を割り、
全体を軽く混ぜて完成。
男は、無言で一口食べた。
二口目で、
肩の力が、すっと抜けた。
「……これでいいや」
「何がだ?」
カウンター越しに、
マサさんが聞く。
男は箸を置き、静かに言った。
「会社、辞めます。
今日、朝イチで言ってきます」
忍さんが、少し驚いた顔で言う。
「後悔、しません?」
男は少し考えてから、首を振った。
「後悔は、
もっと前からしてたんで」
外で、始発電車の音が響いた。
マサさんは、ぽつりと言う。
「腹が決まったら、
あとは進むだけだ」
男は立ち上がり、
深く頭を下げた。
「……ごちそうさまでした」
暖簾が揺れる。
朝の光が、
カウンターに残った卵の殻を、
静かに照らしていた。
この回、かなり**深夜食堂らしい“静かな転機”**になってる。




