65話 空を支配する者たち
朝。
都市の見張り塔で勤務していた若い索敵兵が異変に気付いた。
空だった。
北東。
遥か上空。
無数の黒い影。
最初は鳥の群れかと思った。
しかし違う。
数が異常だった。
「報告!」
警鐘が鳴る。
索敵部隊が即座に動く。
七百名を超える索敵部隊は既に組織化されていた。
新人達が透視を行う。
念聴を行う。
遠隔透視を行う。
次々と報告が集まる。
「飛行体多数!」
「敵意なし!」
「ハーピーです!」
城壁にロバートが現れた。
大剣を背負う巨漢の魔族。
その隣にはエミリー。
セリナ。
そして上空からミシェルが降りてきた。
ミシェルは笑っていた。
その後ろ。
空を埋め尽くす翼。
ハーピー。
千人。
まるで雲だった。
都市全体が騒然となる。
「凄い……」
誰かが呟く。
ミシェルが前へ出た。
「私の故郷です」
静かになる。
「奴隷商に追われました」
「食料を失いました」
「仕事も失いました」
「流浪していました」
皆が黙る。
珍しい話ではない。
この都市にも似た者が数千人いる。
ロバートが聞く。
「働く気はあるか?」
千人のハーピー達が頷く。
「あります」
「なら歓迎だ」
それで終わった。
ロバートはセリナを見る。
「住宅は?」
「空き百二十七棟」
「新築も可能です」
「仕事は?」
「農業」
「紡織」
「建築」
「索敵部隊」
「全部足りません」
ロバートは笑った。
「決まりだな」
歓声が上がる。
泣き出す者もいた。
ミシェルはそれを見て目を閉じた。
安心した。
本当に安心した。
故郷を失ってから初めてだった。
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その夜。
索敵学校。
ミシェルは新しく来たハーピー達へ授業を行っていた。
透視。
念聴。
遠隔透視。
索敵の基礎。
一人一人へ教えていく。
すると。
体の奥で魔力が震えた。
光が走る。
知識が流れ込む。
理解した。
新しい力。
教導スキル。
覚醒。
【教導】
才能把握。
適性分析。
教育補正。
成長補正。
技術継承補正。
ミシェルは思わず笑った。
「先生向きですね」
彼女らしい感想だった。
翌日。
索敵学校はさらに進化した。
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その日の昼。
上空を飛んでいた新人ハーピーが叫ぶ。
「魔物群!」
即座に報告が飛ぶ。
ミシェルが確認する。
透視。
遠隔透視。
念聴。
全てを使う。
数分後。
会議室。
ロバート。
エミリー。
セリナ。
各隊長が集まる。
地図が広げられる。
「五百」
空気が引き締まる。
ミシェルが続ける。
「オーク四百七十」
「ハイオーク二十七」
「オークジェネラル二」
「オークキング一」
エミリーが笑う。
「丁度いいな」
ロバートも笑った。
「新人の実戦訓練になる」
もう誰も慌てない。
昔の村なら終わっていた。
今は違う。
人口七千。
戦闘部隊七百。
索敵部隊七百。
普通の国家より強い。
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出撃。
平原。
五百のオークが進軍してくる。
だが。
迎え撃つ戦闘部隊は七百。
ロバートが前へ出る。
「各部隊」
「好きにやれ」
歓声が上がる。
戦闘開始。
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最初に矢が降る。
リリー率いる弓兵部隊。
風属性付与。
オークが次々倒れる。
続いて土属性部隊。
ティグリスが前へ出る。
「アースウォール!」
巨大な壁。
敵集団を分断。
そこへ。
ストーンバレット。
ソイルスピア。
石槍の雨。
数十体が吹き飛ぶ。
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エミリー隊突撃。
身体強化。
筋肉強化。
狼獣人達が駆ける。
速い。
圧倒的だった。
オーク達が反応できない。
首が飛ぶ。
腕が飛ぶ。
次々と倒れる。
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反対側。
ソフィア隊。
鬼人達が突撃する。
ハルバートが唸る。
ハイオークが真っ二つになる。
カタリナが笑う。
巨大なグレイブを振るう。
オークジェネラルの首が飛んだ。
一撃だった。
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中央。
ロバートが進む。
目の前にはオークキング。
巨体。
怪力。
普通なら脅威。
しかし。
ロバートは冷静だった。
「シャドウバインド」
影が伸びる。
拘束。
停止。
さらに。
周囲から魔法が飛ぶ。
火。
風。
土。
水。
光。
闇。
全属性。
そして。
爆発。
オークキング消滅。
終わった。
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戦闘時間。
二十七分。
死者ゼロ。
重傷ゼロ。
軽傷九名。
圧勝だった。
ロバートは剣を担ぐ。
「解体班呼べ」
歓声が上がる。
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都市へ帰還。
子供達が集まる。
解体班も笑っている。
オーク肉。
大量。
とんでもない量だった。
トミーが計算する。
「数十トンあるぞ」
歓声。
「焼肉だ!」
「焼肉!」
「焼肉!」
広場が沸く。
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夕方。
巨大鉄板。
炭火。
酒。
調味料。
グランが作った味噌。
醤油。
味醂。
特製だれ。
最高だった。
オーク肉が焼ける。
香りが広がる。
歓声が上がる。
ハーピー達も驚いていた。
「美味しい……」
「こんなの初めて……」
涙を流す者までいた。
ミシェルは笑う。
ロバートも笑う。
エミリーも笑う。
セリナも笑う。
誰も命令していない。
誰も支配していない。
それでも都市は回る。
人が育ったからだ。
環境が人を育てる。
その言葉を証明するように。
人口は八千人へ近付き始めていた。




