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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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51話 奴隷商アジト発見

春。


人口四千五百人を超えた村は、さらに拡大を続けていた。


農地は増え。


紡織産業は成長し。


魔道具工房は昼夜を問わず稼働している。


かつて貧困村だった面影はもうない。


しかし。


豊かになったからこそ、見逃せない問題があった。


奴隷商である。


人攫い事件から数週間。


索敵部隊は周辺地域の徹底調査を続けていた。


そして。


ついに見つけた。



索敵本部。


大型地図が広げられている。


セリナ。


ミシェル。


ロバート。


エミリー。


ティグリス。


リーヴ。


主要幹部たちが集まっていた。


地図には赤い印が打たれている。


セリナが説明する。


「発見しました。」


静かな声だった。


「奴隷商の拠点です。」


部屋の空気が変わる。


「数は?」


ロバートが尋ねる。


「確認できた人数は百二十七。」


「結構いるな。」


「周辺に見張りが三十名ほど。」


「地下施設あり。」


「奴隷収容施設あり。」


エミリーの表情が険しくなった。


「奴隷は?」


「現在確認できるだけで八十四人。」


部屋が静まり返る。


誰も軽口を言わない。


この村には奴隷商に人生を壊された者が多い。


リーヴもその一人だった。



セリナはさらに資料を並べる。


念写。


遠隔透視。


透視。


念聴。


索敵能力を総動員して集めた情報だった。


「戦力差は?」


ロバート。


「こちらの圧勝です。」


セリナは即答した。


「問題になりません。」


誰も反論しない。


事実だからだ。


戦闘部隊三百。


索敵部隊三百。


全員が魔法を使える。


全員が超能力を使える。


飛行も可能。


装備も整っている。


数年前なら国家戦力だった。



ロバートは腕を組む。


「救出優先だな。」


「そうなります。」


「奴隷を傷付ける訳にはいかん。」


ティグリスも頷く。


「囲んで逃がさねぇ。」


「その後捕縛か?」


セリナは首を横に振った。


「違います。」


「殲滅です。」


部屋が静かになる。


誰も反対しない。


人攫い。


奴隷売買。


村の敵。


答えは決まっていた。



会議は続く。


飛行部隊。


索敵部隊。


地上制圧部隊。


役割が決まっていく。


ロバートが全体指揮。


エミリー隊は東側封鎖。


リーヴ隊は逃走経路封鎖。


ティグリス隊は正面制圧。


索敵部隊は奴隷救出。


明確だった。



同じ頃。


商業地区。


ヴァレリア商会。


マーガレット・ヴァレリアは眉をひそめていた。


目の前に置かれた物を見つめる。


マジックバッグ。


現在村で最も価値のある魔道具。


「欲しいわね。」


正直な感想だった。


商人なら誰でも欲しい。


物流が変わる。


世界が変わる。


それほどの品だ。



向かいに座るトミーは笑った。


「売らねぇ。」


即答だった。


マーガレットはため息を吐く。


「少しは悩みなさい。」


「悩まねぇ。」


「危険だからな。」


トミーの表情は真面目だった。


普段の軽さはない。


「これを外に流したらどうなると思う?」


マーガレットは答えない。


分かっている。


戦争になる。


盗賊が狙う。


国家が狙う。


貴族が狙う。



「今はまだ無理だ。」


トミーは続ける。


「村の防衛が先。」


「技術保護が先。」


「量産体制もまだ完全じゃねぇ。」


マーガレットは黙って聞いていた。


商人だから理解できる。


価値が高すぎる商品は危険なのだ。



「だから売らねぇ。」


再度トミーは言う。


「貸す。」


「貸す?」


「商会用にな。」


マーガレットが目を細める。


「何個?」


「五個。」


「少ない。」


「十分だ。」


トミーは笑った。



五個でも価値は大きい。


輸送効率が激変する。


利益も増える。


商会はさらに成長する。


マーガレットは理解していた。


本来なら手に入らない品だ。



「返却義務あり。」


「転売禁止。」


「分解禁止。」


「貸与品扱い。」


トミーは条件を並べる。


「厳しいわね。」


「当たり前だ。」


「俺らもまだ信用商売なんだ。」



マーガレットは椅子にもたれる。


悔しい。


商人としては買いたい。


独占したい。


利益を得たい。


しかし。


理解もしていた。


今の村は敵に回してはいけない。



理由は単純だった。


強いからではない。


信頼を失うからだ。


今の商会の利益。


物流。


取引。


全部この村との関係で成り立っている。


敵対する理由がない。



「分かった。」


マーガレットは笑った。


「借りる。」


「賢明だな。」


トミーも笑う。


商談成立だった。



夕方。


商会の荷馬車が出発する。


五つのマジックバッグ。


それだけで積載量は大幅に増えていた。


護衛たちは驚く。


商人たちは感動する。


しかし。


誰も所有していない。


貸与品。


それが重要だった。



夜。


索敵本部。


作戦会議は最終段階に入っていた。


セリナが地図を閉じる。


「準備完了。」


ロバートも立ち上がる。


「了解。」


「全隊に通達する。」



外では戦闘部隊が訓練している。


飛行。


索敵。


拘束魔法。


水牢。


氷牢。


土壁。


影拘束。


全て実戦レベル。


誰も慌てていない。


誰も浮かれていない。


勝てるからだ。


だから冷静だった。



かつて。


この村は怯える側だった。


奴隷商を恐れ。


盗賊を恐れ。


病を恐れ。


飢えを恐れた。


今は違う。


学んだ。


育った。


鍛えた。


守る力を手に入れた。


環境が人を育てる。


その結果。


かつて狩られる側だった人々が。


今度は悪を狩る側になろうとしていた。







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