表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/290

47話:守る力

朝。


村の中央広場には重い空気が漂っていた。


前日に捕縛された人攫いたちが並べられていたからだ。


拘束具。


縄。


氷の檻。


土の牢。


影の拘束。


完全封鎖。


逃げ場はない。


数十人の人攫いたちは顔面蒼白だった。


彼らはようやく理解していた。


襲う相手を間違えたのだと。


広場には三千人を超える村人たちが集まっていた。


助け出された女性たちもいる。


家族もいる。


子供たちもいる。


怒り。


恐怖。


安堵。


様々な感情が入り混じる。


壇上へロバートが上がった。


大剣を背負った魔族の戦士。


今や防衛隊の中核だった。


「報告する。」


静かな声だった。


だが広場全体に響く。


「こいつらは人攫いだ。」


怒号が飛ぶ。


「昨日保護した女性は五人。」


「全員無事。」


歓声が起こる。


助かった。


その事実だけで涙を流す家族もいた。


ロバートは続ける。


「そして調査の結果。」


「余罪多数。」


空気が変わる。


「奴隷売買。」


「殺人。」


「暴行。」


「強盗。」


「人身売買。」


広場が静まり返った。


人攫いたちは何か言い返そうとする。


だが誰も聞かなかった。


セリナが前へ出る。


ダークエルフの女性。


冷静な政策担当。


「証拠も確認済み。」


「被害者も確認済み。」


「誤認の可能性なし。」


村人たちは黙って聞いている。


感情ではない。


事実だった。


証拠だった。


だから決まる。


ロバートが宣言する。


「防衛法に基づき処刑。」


誰も反対しなかった。


助け出された女性たちが震えながら頷く。


家族も頷く。


広場全体が同じ結論に至っていた。


守るためには線引きが必要だった。


その日の昼。


処刑は執行された。


村人たちは目を背けなかった。


子供たちも見た。


なぜなら理由を知っているからだ。


人を攫う者。


人を売る者。


人の尊厳を踏みにじる者。


それは許さない。


村の防壁。


巨大な土壁の上。


人攫いたちの首が並ぶ。


見せしめだった。


威嚇だった。


宣言だった。


ここは弱い村ではない。


ここは人を守る村だ。


その日の夕方。


見張り台。


エミリーは防壁を見上げていた。


狼獣人の隊長。


かつては一人で戦っていた。


今は違う。


「必要だった。」


リーヴが隣で言う。


エミリーも頷いた。


「そうだな。」


守るための厳しさ。


それもまた現実だった。



翌日。


ロバートが全防衛隊を集めた。


広場には戦闘員が並ぶ。


数は増えていた。


元冒険者。


元農民。


元職人。


元難民。


様々な出自。


だが今は違う。


全員が村人だった。


ロバートが声を張る。


「今回の事件で分かったことがある。」


誰も喋らない。


「敵は来る。」


「必ず来る。」


「人攫い。」


「奴隷商。」


「盗賊。」


「傭兵崩れ。」


「魔物。」


「俺たちが強くなればなるほど来る。」


全員が頷く。


それは事実だった。


豊かな村は狙われる。


だから守る。


ロバートが続けた。


「索敵部隊を増員する。」


ざわめきが走る。


現在五十人。


それでも優秀だった。


だが足りない。


村は大きくなった。


人口三千人。


周辺開拓地。


農地。


工房。


牧場。


守る範囲が広すぎる。


「索敵部隊。」


「五十人から三百人へ。」


広場がどよめく。


六倍。


異常な規模だった。


しかし反対はない。


皆分かっている。


見つけることが最強の防御だからだ。


ミシェルが前へ出る。


鳥人族の索敵教師。


「教育は私が担当します。」


静かな声。


しかし絶対的な信頼がある。


透視。


念聴。


遠隔透視。


念話。


索敵技術。


彼女は村最強クラスの探索者だった。


ロバートが頷く。


「頼む。」


さらに続く。


「戦闘部隊も増員。」


今度はさらに大きなざわめき。


現在。


六小隊。


一小隊十人。


合計六十人。


それを。


「一小隊五十人。」


「六小隊。」


「合計三百人。」


歓声が上がる。


防衛隊が五倍。


巨大組織になる。


エミリーが前へ出る。


「第一小隊。」


リーヴも出る。


「第二小隊。」


ティグリス。


「第三小隊。」


ソフィア。


カタリナ。


ガイル。


それぞれが前へ出る。


新しい隊長たち。


新しい中隊長たち。


村人たちは拍手した。


昔の彼らではない。


訓練された。


教育された。


成長した。


だから任せられる。



その頃。


村の外れ。


ケルナインは畑を見ていた。


遠くで歓声が聞こえる。


組織が拡大している。


人が育っている。


だが彼は行かない。


壇上にも立たない。


命令もしない。


隣にいたトミーが笑う。


「行かなくていいんですか?」


ケルナインは首を振る。


「必要ない。」


「もう自分たちで決められる。」


トミーは少し驚く。


普通の領主なら違う。


手柄を欲しがる。


権力を欲しがる。


支配したがる。


だがケルナインは違う。


「村は村人のものだ。」


それだけだった。



数週間後。


索敵部隊三百人。


戦闘部隊三百人。


訓練が始まる。


念話網。


遠隔索敵。


集団テレキネシス。


集団拘束。


集団戦術。


毎日育っていく。


農民も。


職人も。


元難民も。


全員が学ぶ。


全員が強くなる。



そして村の外。


人攫いたちの仲間が防壁を見た。


並んだ首。


巨大な防壁。


見張り塔。


巡回部隊。


空を飛ぶ鳥人。


念話通信。


防衛隊。


彼らは震えた。


「やめよう。」


誰かが言った。


「ここは無理だ。」


誰も反論しなかった。


かつて貧困と病に苦しんだ村。


襲われるだけだった村。


守られることもなかった村。


その村は変わった。


人材が育った。


組織が育った。


教育が根付いた。


環境が人を育てた。


そして育った人々が村を守る。


それはもう偶然ではない。


仕組みだった。


村は確実に国家への道を歩み始めていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ