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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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43話:ロバート教官

朝日が森を照らしていた。


防衛隊本部前には六十名を超える戦闘員たちが集まっている。


六個小隊。


各小隊十名。


全員が村の戦力だった。


人口五百三十名を超えた今、村はもはや自衛集団ではない。


組織化された防衛勢力へと変貌していた。


その中央に立つのはロバートだった。


巨大な体。


魔族特有の威圧感。


背中の大剣。


そして将軍スキル。


村人たちは自然と背筋を伸ばす。


「今日は狩りだ。」


ロバートが言う。


「だが目的は獲物じゃねぇ。」


視線が集まる。


「テレキネシスだ。」


ざわめきが起きる。


既に村人の九割以上が覚醒している。


農民も。


職人も。


商人も。


戦士も。


誰もが念動力を使えるようになっていた。


しかし。


使えると戦えるは違う。


ロバートはそこを理解していた。


「獲物を傷つけるな。」


「殺すな。」


「壊すな。」


「捕まえろ。」


村人たちは顔を見合わせた。


ソフィアが笑う。


「面白そうじゃないか。」


カタリナも笑った。


「力比べか。」


エミリーは腕を組む。


「難しい訓練になりそうね。」


ロバートは頷く。


「だからやる。」



森へ入る。


上空では索敵隊が飛行していた。


ミシェル。


リリー。


そして五十名を超える飛行索敵隊。


レビテーション。


風魔法。


索敵魔法。


遠隔透視。


念聴。


彼らは空を支配していた。


「南東二キロ。」


ミシェルから念話が届く。


「グリーンキャタピラー十五。」


「ポイズンスパイダー七。」


「キラースパイダー三。」


ロバートは頷いた。


「第一小隊。」


「出るぞ。」


エミリー隊が前へ出る。



最初の獲物はグリーンキャタピラーだった。


巨大な青虫。


全長三メートル。


魔糸素材として価値が高い。


「捕縛開始。」


エミリーが命じる。


瞬間。


十人の魔力が動いた。


テレキネシス。


見えない力が青虫へ集中する。


持ち上がる。


しかし。


次の瞬間。


暴れた。


「逃げる!」


「押さえろ!」


「右だ!」


青虫が転がる。


森を削る。


逃げる。


しかし。


今度は違った。


十人。


二十人。


三十人。


複数人で制御する。


持ち上げる。


押さえる。


回転を止める。


脚を固定する。


完全拘束。


「成功!」


歓声が上がる。


素材は無傷。


最高品質。


ロバートが笑った。


「それだ。」



次はポイズンスパイダーだった。


こちらは危険だ。


巨大な毒蜘蛛。


牙。


毒液。


魔糸。


価値は高い。


危険も高い。


エミリーが前へ出る。


「私がやる。」


狼獣人の瞳が鋭くなる。


テレキネシス発動。


蜘蛛が持ち上がる。


逃げようとする。


毒液を吐く。


そこへ。


リーヴ。


ティグリス。


ソフィア。


カタリナ。


次々と力を重ねる。


空中固定。


完全停止。


蜘蛛が動けなくなる。


「すごい……。」


新人たちが息を呑む。


誰も剣を振っていない。


誰も傷ついていない。


それでも勝っている。



ロバートが説明した。


「殺すのは簡単だ。」


皆が聞く。


「だが。」


「生きたまま捕まえれば。」


「糸も取れる。」


「毒袋も取れる。」


「肉も取れる。」


「素材も取れる。」


「全部使える。」


村人たちの目が変わる。


理解した。


勝つだけでは駄目。


利益を出す。


生産につなげる。


それが村の戦いだった。



午後。


キラースパイダーとの戦闘が始まる。


こちらは大型。


強い。


素早い。


新人たちは苦戦した。


拘束が外れる。


逃げる。


突撃する。


混乱する。


その時。


ロバートが動いた。


テレキネシス。


巨大な蜘蛛が空中で停止した。


完全静止。


まるで時間が止まったようだった。


「見ろ。」


ロバートが言う。


「力で押さえるな。」


「動きを読む。」


「逃げる方向を読む。」


「仲間と合わせる。」


将軍スキルが働く。


隊員たちの理解速度が上昇する。


未熟者育成補正。


ロバートだけの才能だった。


「もう一回。」


隊員たちが挑戦する。


今度は違う。


連携。


役割。


拘束。


固定。


押さえ込み。


キラースパイダーが動けなくなる。


完全制圧。


歓声が上がった。



夕方。


討伐結果が集計される。


グリーンキャタピラー三十二。


ポイズンスパイダー十九。


キラースパイダー八。


過去最大。


しかも。


素材損傷率。


わずか三パーセント。


奇跡的数字だった。


紡織工房は歓喜した。


魔糸が大量に入る。


薬房も喜んだ。


毒袋が大量に入る。


厨房も喜ぶ。


肉が大量に入る。


防具工房も喜ぶ。


外骨格が大量に入る。


全てが循環する。



帰路。


新人たちはロバートを見ていた。


以前なら理解できなかった。


なぜ皆が彼を信頼するのか。


今は分かる。


ロバートは強い。


それ以上に。


育てる。


導く。


教える。


だから皆が成長する。


ロバートは振り返った。


「勘違いするな。」


皆が見る。


「俺が強いんじゃねぇ。」


「お前らが強くなったんだ。」


静寂。


そして。


歓声。


笑顔。


誇り。


六小隊は確実に成長していた。


そして丘の上。


ケルナインはその様子を眺めていた。


何も言わない。


指示もしない。


既に必要ない。


環境は整った。


人は育った。


ロバートが教え。


エミリーが率い。


ミシェルが空を守り。


トミーが流通を支え。


セリナが村を動かす。


村は自分たちで強くなっていた。


かつて盗賊に怯えていた貧困村はもう存在しない。


ここにあるのは。


人材が人材を育てる村。


環境が人を育てる村。


そして。


未来へ向かって成長を続ける村だった。







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