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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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41.5話:防衛隊始動

朝靄がまだ森の上に残っている。


夜明け前。


村はすでに動き始めていた。


防衛隊設立から三日。


住民たちの生活は大きく変わっていた。


かつては魔物が出れば慌てて逃げ回っていた。


盗賊の噂が流れれば怯えていた。


今は違う。


訓練された者たちがいる。


索敵網がある。


防衛隊がある。


そして何より。


村人全員が戦える。


それが大きかった。



訓練場。


百名以上の住民が集まっていた。


戦闘員。


農民。


職人。


薬師。


仕立職人。


料理人。


全員である。


「開始!」


ロバートの号令が響く。


一斉に魔力が立ち上がった。


ファイアバレット。


ウォーターバレット。


ウィンドバレット。


ソイルバレット。


ストーンバレット。


ホーリーバレット。


ダークバレット。


シャドウバレット。


色とりどりの魔法が空を埋める。


以前なら考えられない光景だった。


魔法は一部の才能ある者だけの力。


そう信じられていた。


今では違う。


村人の九九パーセント以上が魔法を扱う。


二属性以上保持者は八割を超えた。


三属性持ちも珍しくない。


五属性保持者も増え始めている。


ケルナインが教えたのは魔法ではない。


学び方だった。


それが全てを変えた。



「マスク!」


ロバートが叫ぶ。


住民たちが同時に発動する。


水。


風。


土。


氷。


影。


様々な属性が空中で形を作る。


顔面を覆う仮面。


窒息魔法。


呼吸を封じるための技術。


敵を傷つけず制圧するための技術だった。


水属性班。


透明な水の膜が人形の顔を覆う。


風属性班。


空気の圧力で呼吸を封じる。


土属性班。


薄い土壁が口と鼻を塞ぐ。


影属性班。


黒い影が顔面へ絡みつく。


「解除!」


一斉に解除。


全員が繰り返す。


素材を傷つけない。


魔物を無駄にしない。


それも村の教えだった。



少し離れた空。


五十人以上の人影が飛んでいた。


索敵隊。


隊長ミシェル。


副長リリー。


風属性。


レビテーション。


索敵魔法。


念聴。


遠隔透視。


様々な能力が組み合わされている。


ミシェルは空中で静止した。


翼を広げる。


風を読む。


気配を探る。


「北東十五キロ。」


念話が飛ぶ。


全員へ共有される。


「キラースパイダーの群れ。」


リリーが反応する。


「数は?」


「三十前後。」


「討伐隊を出します。」


即座に連絡。


地上では既に動き始めていた。



エミリー隊。


ティグリス隊。


ソフィア隊。


三個小隊が出撃する。


走る。


速い。


全員が身体強化を使える。


筋肉強化も使える。


数か月前の彼らとは別人だった。


森へ到着。


キラースパイダーが現れる。


大型犬ほどの巨体。


鋭い牙。


強力な毒。


普通の村なら恐怖の対象。


しかし。


「ソイルバレット!」


ティグリスが放つ。


巨大な土弾。


蜘蛛の足を吹き飛ばす。


「ウィンドバレット!」


リーヴが続く。


風刃が飛ぶ。


関節だけを切断。


素材は傷つけない。


「シャドウバインド!」


ロバート。


影が蜘蛛を拘束する。


逃げられない。


「ウォーターマスク!」


若い村人が発動。


蜘蛛の顔面を水が覆う。


暴れる。


もがく。


呼吸できない。


数分後。


静かになった。


「討伐完了!」


歓声。


死者ゼロ。


負傷者ゼロ。


以前ならあり得なかった戦果だった。



その日の夕方。


紡織工房。


大量の魔糸が運び込まれていた。


ポイズンスパイダー。


キラースパイダー。


グリーンキャタピラー。


そこから採取される糸は非常に強い。


普通の布の数倍。


魔力伝導率も高い。


職人たちが働いている。


糸車が回る。


織機が鳴る。


魔法布が次々完成していく。


「すごい量ね。」


セリナが呟く。


職人が笑った。


「まだ足りませんよ。」


「注文が多すぎる。」


村は成長している。


住民も増えている。


需要は無限だった。



仕立工房。


魔法布がローブになる。


マントになる。


戦闘服になる。


防寒具になる。


職人たちの手は止まらない。


エルフたちも参加していた。


リーザ。


リーブ。


リーン。


皆が真剣な顔で働いている。


かつて森で暮らしていた彼女たちが、今では立派な職人だった。



薬房。


大量の毒袋が並んでいる。


リーンが指示を飛ばす。


浄化。


精製。


抽出。


毒は薬になる。


解毒薬になる。


治療薬になる。


高級品になる。


「また在庫が増えたわ。」


「足りないくらいです。」


助手が笑う。


交易商人が買い占めていくのだ。



厨房。


巨大な鍋が並ぶ。


ポイズンスパイダーの肉。


浄化済み。


毒は完全除去。


香草。


野菜。


塩。


一緒に煮込まれる。


濃厚な香りが広がった。


「うまい!」


「最高だ!」


子供たちが歓声を上げる。


昔は飢えていた。


今では肉が余る。


環境が変わった。


だから人も変わった。



夜。


広場。


住民たちが集まっていた。


笑顔。


活気。


希望。


ロバートはその光景を見ていた。


静かに。


そして理解する。


将軍スキルがまた成長していた。


戦争のためではない。


支配のためでもない。


守るため。


育てるため。


人を生かすため。


それがこの村の軍だった。


遠く。


ケルナインは一人で空を見上げる。


何も言わない。


指示もしない。


ただ見守る。


村人たちは自分で考え。


自分で動き。


自分で成長している。


それこそが理想だった。


貧困村は消えた。


代わりに生まれたのは。


人が育つ村。


人材が育つ村。


そして。


誰も簡単には奪えない村だった。







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