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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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41話:防衛隊設立

朝日が村を照らしていた。


かつては飢えと病に苦しみ、盗賊や奴隷商の襲撃に怯えるだけだった貧困村。


今ではその面影はほとんど残っていない。


畑には豊かな穀物が実っている。


倉庫には食料が積み上げられている。


食料充足率は百五十パーセントを超えた。


村人たちは毎日腹いっぱい食べることができる。


子供たちは笑いながら走り回り、大人たちは未来の話をしている。


それでも。


村の中心部にある広場には緊張感が漂っていた。


数百人の住民が集まっている。


獣人。


エルフ。


ダークエルフ。


ドワーフ。


魔族。


人間。


様々な種族が肩を並べていた。


広場の中央に立つのはロバートだった。


巨大な大剣を背負った魔族の男。


その瞳は力強い。


周囲を見渡しながら声を上げる。


「集まってくれてありがとな!」


声が広場に響く。


住民たちが静かになる。


ロバートは続けた。


「今日から村の防衛隊を正式に作る!」


歓声が上がった。


拍手も起こる。


しかしロバートは手を上げて制した。


「勘違いするな。」


その声には力があった。


「防衛隊は戦争をするための組織じゃねぇ。」


住民たちが耳を傾ける。


「畑を守る。」


「家族を守る。」


「子供を守る。」


「仲間を守る。」


「この村を守る。」


静かな言葉だった。


しかし誰の胸にも強く響いた。


ロバートは昔を思い出していた。


食えなくなった冒険者時代。


依頼を求めて町を渡り歩いた日々。


仲間を失った戦場。


裏切り。


搾取。


理不尽。


そんな世界ばかり見てきた。


だが。


この村だけは違った。


ケルナインは支配しない。


命令しない。


人を使い潰さない。


育てる。


教える。


強くする。


それだけだった。


だからロバートはこの村を守りたかった。


心から。


「まずは部隊編成を発表する!」


歓声が上がる。


防衛隊設立。


それは村が新しい段階へ進むことを意味していた。



第一小隊。


隊長ロバート。


副長ティグリス。


重装歩兵を中心とした主力部隊。


土属性魔法と身体強化に優れる者が集められていた。


ティグリスが前へ出る。


虎獣人の美女。


長身。


鍛え上げられた身体。


以前は故郷を失った難民だった。


今では違う。


彼女の瞳には確かな自信が宿っている。


「壁になるのが私たちの仕事だ。」


短く言う。


「誰も通さない。」


周囲の隊員たちがうなずいた。


全員がソイルバレットを使える。


アースウォールも扱える。


身体強化と筋肉強化も習得済み。


かつてなら軍隊でも精鋭級だった。



第二小隊。


隊長エミリー。


副長リーヴ。


機動打撃部隊。


風属性中心。


高速戦闘を得意とする。


エミリーは狼獣人。


かつては村を守ろうとして一人で無理をしていた。


今は違う。


仲間がいる。


部下がいる。


守るべき村がある。


「速さで負けるな。」


「先に見つけろ。」


「先に動け。」


隊員たちが返事をする。


全員が風属性。


そしてレビテーション適性も高い。


空中戦すら可能になり始めていた。



第三小隊。


隊長ソフィア。


鬼人の美女。


巨大な斧槍を肩に担いでいる。


大型魔物討伐専門。


ポイズンスパイダー。


キラースパイダー。


グリーンキャタピラー。


最近は巨大な魔物との戦闘が増えていた。


素材価値が高いからだ。


魔糸。


外骨格。


毒袋。


どれも村の産業を支える重要資源。


「壊すなよ。」


ソフィアが笑う。


「素材の方が高いからな。」


周囲から笑いが起きた。



第四小隊。


隊長カタリナ。


エルフとは思えない巨体。


長いグレイブを持つ。


純粋な突撃戦闘部隊。


「魔物を見つけたら?」


隊員が答える。


「倒す!」


「違う。」


カタリナが笑う。


「素材を残して倒す!」


大爆笑が起きた。



遠く。


訓練場の外。


ケルナインは静かに見ていた。


隣にはセリナがいる。


「どう思う?」


セリナが尋ねる。


ケルナインは答える。


「もう俺は必要ない。」


セリナが苦笑した。


「それはないわ。」


「少なくとも皆はそう思ってない。」


ケルナインは首を振った。


「違う。」


「俺が必要なんじゃない。」


「環境が必要なんだ。」


村を見つめる。


鍛冶師。


薬師。


農民。


職人。


子供。


戦士。


全員が動いている。


全員が学んでいる。


全員が成長している。


かつて才能がないと言われた人々。


違った。


教育がなかっただけだ。


教わる機会がなかっただけだ。


それだけだった。


今では人口五百三十名を超える住民のほぼ全員が魔法を使える。


単属性の方が珍しい。


二属性。


三属性。


四属性。


五属性。


複数属性保持者が当たり前になっていた。


そしてその変化は、まだ始まったばかりだった。








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