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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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38話:大型魔物討伐

朝。


索敵塔の上からミシェルが空を旋回していた。


村が大きくなるにつれ、索敵の重要性も増している。


農地は広がった。


人口も増えた。


紡織工房も建設された。


鍛冶場も増えた。


治療院も学校もできた。


もはやただの貧困村ではない。


だからこそ守るべきものも増えていた。


その時だった。


ミシェルの表情が変わる。


「……見つけた。」


鳥人族の優れた視力。


風属性索敵。


念聴。


遠隔視。


複数の索敵技術が重なる。


森の奥。


大量の魔物。


しかも普通ではない。


ミシェルは即座に飛んだ。


村へ。



会議所。


セリナが地図を広げている。


ロバート。


エミリー。


ソフィア。


カタリナ。


ガイル。


主要戦力が集まっていた。


ミシェルが報告する。


「ポイズンスパイダー二十七。」


「キラースパイダー十四。」


「グリーンキャタピラー四十二。」


空気が変わる。


新人達は知らない。


しかし古参は知っている。


危険な相手だった。


セリナが説明する。


「ポイズンスパイダーは毒蜘蛛です。」


「牙の毒も危険ですが、本当に厄介なのは糸です。」


「毒糸に絡まれば動けなくなります。」


ロバートが頷く。


「キラースパイダーは?」


「大型です。」


「家一軒ほどあります。」


新人達が息を呑む。


家一軒。


そんな蜘蛛が存在するのか。


セリナは続ける。


「ただし。」


「価値があります。」


トミーが目を輝かせた。


商人の顔だった。


「糸か?」


「はい。」


「魔糸です。」


その言葉に会議室が静かになる。


魔糸。


高級品。


王都でも高値で取引される素材。


紡織産業の最高級原料。



ケルナインが静かに口を開く。


「確保できれば村の産業になる。」


全員が理解した。


ただの討伐ではない。


資源確保だった。


この村は何もない村から始まった。


だからこそ資源を見逃さない。


敵も資源。


魔物も資源。


その発想が根付いていた。


トミーが計算を始める。


「二十七と十四……。」


「全部回収できればかなり儲かるぞ。」


「王都の商会が飛びつく。」


セリナが頷く。


「糸だけではありません。」


「グリーンキャタピラーも価値があります。」


新人達が首を傾げる。


巨大芋虫に価値?


理解できなかった。


セリナが答える。


「絹糸です。」


ざわめきが起きた。



昼。


討伐隊が出発する。


ロバート率いる第一部隊。


エミリー率いる第二部隊。


ソフィアとカタリナの突撃部隊。


新人達も参加する。


人数は百名を超えていた。


以前なら不可能な規模だった。


今は違う。


育った。


環境が人を育てた。



森。


索敵担当が報告する。


「発見。」


ミシェル。


リーヴ。


複数の索敵持ち。


風属性。


光属性。


超能力。


様々な索敵能力が発達していた。


ケルナインの教育によって。


昔は索敵持ちなどほとんどいなかった。


今は違う。


一人が複数属性を扱う。


二属性は普通。


三属性も珍しくない。


四属性持ちも増えた。


五属性持ちまで出始めている。


単属性の方が珍しい。


それが今の村だった。



最初に現れたのはグリーンキャタピラーだった。


全長五メートル。


巨大な芋虫。


だが。


以前の村人なら逃げていた。


今は違う。


「ファイアバレット!」


炎。


「ウィンドバレット!」


風。


「ストーンバレット!」


石。


「ウォーターバレット!」


水。


複数属性が同時に飛ぶ。


グリーンキャタピラーが吹き飛ぶ。


さらに。


「アイスバレット!」


氷。


動きを止める。


「バインドバレット!」


拘束。


完全に封じる。


討伐終了。


わずか数秒だった。


新人達が驚く。


自分達の強さに。



さらに奥。


ポイズンスパイダーの巣。


巨大だった。


木々が白い糸で覆われている。


森全体が蜘蛛の巣。


新人達の顔が青ざめる。


その瞬間。


ロバートが前へ出た。


「慌てるな。」


将軍スキル。


恐怖が薄れる。


心が落ち着く。


それだけで違った。



ポイズンスパイダーが現れる。


巨大な毒蜘蛛。


八本の足。


紫色の毒牙。


新人達が身構える。


しかし。


最初に動いたのはエミリーだった。


「ウィンドバレット!」


風弾。


蜘蛛の目を潰す。


続けて。


ティグリス。


「ストーンバレット!」


顔面直撃。


蜘蛛が吹き飛ぶ。


さらに。


新人達。


「ファイアバレット!」


「ウォーターバレット!」


「ホーリーバレット!」


魔法が降り注ぐ。


数年前なら奇跡。


今では当たり前。


教育の成果だった。



戦闘は続く。


しかし村側は圧倒していた。


原因は単純。


連携だった。


単独では弱い。


だが集団になると強い。


ロバートの統率。


エミリーの前衛。


セリナの情報。


ミシェルの索敵。


全てが噛み合う。



奥から地響き。


キラースパイダー。


現れた。


家ほどある巨体。


新人達が息を呑む。


巨大。


圧倒的。


普通なら逃げる。


しかし。


カタリナが笑った。


「面白い。」


長いグレイブを構える。


ソフィアも笑う。


「少しは楽しめそうですね。」


二人は突撃した。



キラースパイダーが糸を吐く。


白い網。


巨大な拘束網。


カタリナが飛ぶ。


身体強化。


筋肉強化。


超人的跳躍。


糸を回避。


そのまま。


グレイブを叩き込む。


轟音。


蜘蛛の脚が折れる。



反対側。


ソフィア。


ハルバートを振るう。


鬼人族の怪力。


脚が吹き飛ぶ。


新人達が呆然とする。


強い。


あまりにも強い。



しかし。


それだけでは終わらない。


ロバートが叫ぶ。


「全員撃て!」


その瞬間。


空が光る。


ファイアバレット。


ウォーターバレット。


アイスバレット。


ウィンドバレット。


ソイルバレット。


ストーンバレット。


ホーリーバレット。


シャドウバレット。


ダークバレット。


数百発。


魔法の豪雨。


キラースパイダーが飲み込まれる。


爆発。


轟音。


土煙。


やがて。


巨大な蜘蛛は動かなくなった。


討伐完了。



帰還。


大量の素材。


魔糸。


毒袋。


外殻。


キャタピラーの絹糸。


村人達は歓声を上げた。


戦利品が山積みだった。



工房。


仕立職人達が集まる。


新しく覚醒した者も多い。


【紡織】


【裁縫】


【仕立】


【染色】


【織布】


スキルが増えていた。


環境が変わる。


仕事が生まれる。


必要になる。


だから才能が開花する。


ケルナインの考え通りだった。



一方。


料理場。


ポイズンスパイダーの肉が運ばれる。


新人達は嫌そうな顔をした。


蜘蛛を食う。


信じられない。


しかし。


エルナ。


マイケル。


複数の治癒師達。


「ピュリフィケーション。」


浄化。


毒が消える。


何度も浄化。


何度も精製。


完全無害化。



料理人達が調理する。


焼く。


煮る。


蒸す。


香草を使う。


完成。


恐る恐る食べる。


沈黙。


次の瞬間。


「うまい!」


歓声。


鶏肉に近い。


柔らかい。


旨味が強い。


新人達が夢中で食べ始める。



夜。


会議所。


セリナが報告する。


「糸の収穫量は予想以上です。」


「紡織産業が成立します。」


トミーも笑う。


「売れる。」


「かなり売れるぞ。」


さらに報告。


「仕立職人が九名増加。」


「料理スキル保持者二十一名増加。」


「複数属性保持者も増加しています。」


紙には数字が並ぶ。


五属性持ち。


四属性持ち。


三属性持ち。


次々と誕生していた。



ケルナインは静かに資料を見る。


やはり正しかった。


才能は最初から存在した。


無かったのは教育。


環境。


機会。


それだけだった。



外では村人達が笑っている。


かつて病と貧困に苦しんだ村。


盗賊に怯えた村。


奴隷商に震えた村。


その村が今。


大型魔物を狩り。


産業を生み。


人材を育てている。


農業革命。


紡織産業。


教育。


戦闘技術。


全てが少しずつ結びついていた。


そして村はもう。


ただ生き残るだけの場所ではなくなっていた。


自ら未来を作る場所へと変わり始めていた。







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