25.6話:光
夜明け前。
村は静かだった。
しかし訓練場には既に人が集まっている。
昨日のバレット教導。
あれは村人達に大きな衝撃を与えた。
魔法は才能ではない。
教育で身につく。
その事実が広まったのだ。
そして今日。
ケルナインが教えるのは光属性だった。
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訓練場。
エミリー。
リーヴ。
ティグリス。
ロバート。
ガイル。
トミー。
セリナ。
エルナ。
マイケル。
エレノア。
多くの村人達。
皆が集まっている。
ケルナインは静かに言った。
「今日は光属性だ。」
ざわめきが起きた。
光属性。
治癒。
浄化。
神官。
選ばれた者だけの力。
そう思われてきた属性だった。
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前へ出たのはマイケルだった。
かつて泣き虫だった少年。
今は村で最も努力している人間の一人。
治癒師。
教師。
そしてケルナインの一番弟子。
マイケルは深呼吸した。
魔力循環。
魔力操作。
何度も繰り返した基礎。
基礎だけは誰にも負けない。
光が集まる。
右手が淡く輝いた。
「ホーリーバレット。」
白い光が放たれる。
ドンッ。
木人形の胸を貫いた。
歓声が上がる。
「光が飛んだ!」
「本当に弾になるのか!」
「神官だけじゃないのか!」
マイケルは少し照れた。
昔なら人前に立つだけで震えていた。
今は違う。
教える側になった。
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「光属性は治療だけじゃありません。」
マイケルは言った。
「攻撃にも使えます。」
「浄化にも使えます。」
「索敵にも使えます。」
村人達が真剣に聞いている。
マイケルは続けた。
「でも一番大事なのは。」
「人を助けられることです。」
その言葉にエルナが微笑んだ。
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次に前へ出たのはエルナだった。
ハーフエルフ。
優しい少女。
村の母性。
未来の治療院長。
未来の聖女。
彼女は少し緊張している。
戦士ではない。
魔法の天才でもない。
普通の少女だ。
だからこそ意味がある。
「ヒール。」
光が生まれる。
柔らかな光。
温かい光。
優しい光。
傷をつけた木の枝が修復されていく。
村人達が息を呑む。
「治った……」
「すげぇ……」
「本当に治るんだ……」
エルナ自身が一番驚いていた。
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「私……最初は何も出来ませんでした。」
エルナは小さく言った。
「怖かったです。」
「自信もありませんでした。」
皆が静かに聞いている。
「でも。」
「教えてもらいました。」
「だから出来るようになりました。」
その言葉は重かった。
村人達も同じだからだ。
誰も最初から出来たわけではない。
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その時。
一人の老人が前へ出た。
最近移住してきた農民だった。
「わしにも出来るかの。」
笑いが起きる。
マイケルは真面目に頷いた。
「出来ます。」
「やってみましょう。」
老人は戸惑った。
しかし試した。
魔力循環。
光。
意識。
失敗。
もう一度。
失敗。
さらにもう一度。
小さな光が生まれた。
それだけだった。
しかし。
村人達は歓声を上げた。
老人は泣いていた。
「初めてじゃ……」
「生まれて初めて魔法が使えた……」
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その日。
光属性の訓練が続く。
ホーリーバレット。
ヒール。
ライト。
浄化。
少しずつ。
本当に少しずつ。
皆が覚えていく。
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午後。
今度はロバートが前へ出た。
「部隊長として言う。」
全員が静まる。
「魔法が使えることは大事だ。」
「でももっと大事なのは仲間だ。」
ロバートは村を見渡した。
獣人。
人間。
ドワーフ。
エルフ。
魔族。
種族は違う。
それでも今は同じ村人だった。
「一人の強者より。」
「百人の成長だ。」
皆が頷く。
それはケルナインの思想だった。
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ガイルも前へ出る。
「俺はドワーフだ。」
「鍛冶しか出来ねぇと思ってた。」
周囲が笑う。
「でも魔法も覚えた。」
「だからお前らも覚えろ。」
豪快な言葉。
職人達が大笑いした。
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夕方。
訓練場の端。
エレノア・グランディア侯爵が静かに座っていた。
白髪。
老女。
杖。
かつて王都で戦った貴族。
今は村を見守る老人。
しかし。
最近少し変化があった。
魔力循環。
毎日見ていた。
皆が訓練する姿を。
毎日眺めていた。
真似していた。
知らないうちに。
自然と。
魔力が流れるようになっていた。
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エレノアは手を見る。
皺が減っている。
肌が若い。
身体も軽い。
以前なら立ち上がるだけで苦労した。
今は違う。
杖なしでも歩ける。
鏡を見れば。
七十代だった姿が。
四十代前半ほどに見える。
本人ですら驚いている。
「老いるとは……」
「思い込みだったのかもしれませんね。」
小さく笑った。
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ケルナインが近くを通る。
エレノアは尋ねた。
「若返っております。」
「不思議ですね。」
ケルナインは一瞥した。
「魔力循環です。」
「身体を正常化しているだけです。」
それだけだった。
大したことではない。
そういう口調だった。
エレノアは苦笑した。
この男は本当に変わらない。
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夜。
村には光が溢れていた。
ホーリーバレットを練習する子供。
ヒールを練習する母親。
魔力循環を学ぶ老人。
剣を振る戦士。
酒造を学ぶドワーフ。
農業を学ぶ流民。
皆が成長している。
少しずつ。
確実に。
ケルナインは静かに空を見上げた。
かつて何も無かった貧困村。
盗賊に怯え。
病に苦しみ。
飢えに震えていた村。
今は違う。
人が育っている。
環境が人を育てている。
そして人がまた環境を育てていく。
村はもう誰か一人の力で動いてはいなかった。
自ら成長し始めていた。




