表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/290

25.6話:光

夜明け前。


村は静かだった。


しかし訓練場には既に人が集まっている。


昨日のバレット教導。


あれは村人達に大きな衝撃を与えた。


魔法は才能ではない。


教育で身につく。


その事実が広まったのだ。


そして今日。


ケルナインが教えるのは光属性だった。


---


訓練場。


エミリー。


リーヴ。


ティグリス。


ロバート。


ガイル。


トミー。


セリナ。


エルナ。


マイケル。


エレノア。


多くの村人達。


皆が集まっている。


ケルナインは静かに言った。


「今日は光属性だ。」


ざわめきが起きた。


光属性。


治癒。


浄化。


神官。


選ばれた者だけの力。


そう思われてきた属性だった。


---


前へ出たのはマイケルだった。


かつて泣き虫だった少年。


今は村で最も努力している人間の一人。


治癒師。


教師。


そしてケルナインの一番弟子。


マイケルは深呼吸した。


魔力循環。


魔力操作。


何度も繰り返した基礎。


基礎だけは誰にも負けない。


光が集まる。


右手が淡く輝いた。


「ホーリーバレット。」


白い光が放たれる。


ドンッ。


木人形の胸を貫いた。


歓声が上がる。


「光が飛んだ!」


「本当に弾になるのか!」


「神官だけじゃないのか!」


マイケルは少し照れた。


昔なら人前に立つだけで震えていた。


今は違う。


教える側になった。


---


「光属性は治療だけじゃありません。」


マイケルは言った。


「攻撃にも使えます。」


「浄化にも使えます。」


「索敵にも使えます。」


村人達が真剣に聞いている。


マイケルは続けた。


「でも一番大事なのは。」


「人を助けられることです。」


その言葉にエルナが微笑んだ。


---


次に前へ出たのはエルナだった。


ハーフエルフ。


優しい少女。


村の母性。


未来の治療院長。


未来の聖女。


彼女は少し緊張している。


戦士ではない。


魔法の天才でもない。


普通の少女だ。


だからこそ意味がある。


「ヒール。」


光が生まれる。


柔らかな光。


温かい光。


優しい光。


傷をつけた木の枝が修復されていく。


村人達が息を呑む。


「治った……」


「すげぇ……」


「本当に治るんだ……」


エルナ自身が一番驚いていた。


---


「私……最初は何も出来ませんでした。」


エルナは小さく言った。


「怖かったです。」


「自信もありませんでした。」


皆が静かに聞いている。


「でも。」


「教えてもらいました。」


「だから出来るようになりました。」


その言葉は重かった。


村人達も同じだからだ。


誰も最初から出来たわけではない。


---


その時。


一人の老人が前へ出た。


最近移住してきた農民だった。


「わしにも出来るかの。」


笑いが起きる。


マイケルは真面目に頷いた。


「出来ます。」


「やってみましょう。」


老人は戸惑った。


しかし試した。


魔力循環。


光。


意識。


失敗。


もう一度。


失敗。


さらにもう一度。


小さな光が生まれた。


それだけだった。


しかし。


村人達は歓声を上げた。


老人は泣いていた。


「初めてじゃ……」


「生まれて初めて魔法が使えた……」


---


その日。


光属性の訓練が続く。


ホーリーバレット。


ヒール。


ライト。


浄化。


少しずつ。


本当に少しずつ。


皆が覚えていく。


---


午後。


今度はロバートが前へ出た。


「部隊長として言う。」


全員が静まる。


「魔法が使えることは大事だ。」


「でももっと大事なのは仲間だ。」


ロバートは村を見渡した。


獣人。


人間。


ドワーフ。


エルフ。


魔族。


種族は違う。


それでも今は同じ村人だった。


「一人の強者より。」


「百人の成長だ。」


皆が頷く。


それはケルナインの思想だった。


---


ガイルも前へ出る。


「俺はドワーフだ。」


「鍛冶しか出来ねぇと思ってた。」


周囲が笑う。


「でも魔法も覚えた。」


「だからお前らも覚えろ。」


豪快な言葉。


職人達が大笑いした。


---


夕方。


訓練場の端。


エレノア・グランディア侯爵が静かに座っていた。


白髪。


老女。


杖。


かつて王都で戦った貴族。


今は村を見守る老人。


しかし。


最近少し変化があった。


魔力循環。


毎日見ていた。


皆が訓練する姿を。


毎日眺めていた。


真似していた。


知らないうちに。


自然と。


魔力が流れるようになっていた。


---


エレノアは手を見る。


皺が減っている。


肌が若い。


身体も軽い。


以前なら立ち上がるだけで苦労した。


今は違う。


杖なしでも歩ける。


鏡を見れば。


七十代だった姿が。


四十代前半ほどに見える。


本人ですら驚いている。


「老いるとは……」


「思い込みだったのかもしれませんね。」


小さく笑った。


---


ケルナインが近くを通る。


エレノアは尋ねた。


「若返っております。」


「不思議ですね。」


ケルナインは一瞥した。


「魔力循環です。」


「身体を正常化しているだけです。」


それだけだった。


大したことではない。


そういう口調だった。


エレノアは苦笑した。


この男は本当に変わらない。


---


夜。


村には光が溢れていた。


ホーリーバレットを練習する子供。


ヒールを練習する母親。


魔力循環を学ぶ老人。


剣を振る戦士。


酒造を学ぶドワーフ。


農業を学ぶ流民。


皆が成長している。


少しずつ。


確実に。


ケルナインは静かに空を見上げた。


かつて何も無かった貧困村。


盗賊に怯え。


病に苦しみ。


飢えに震えていた村。


今は違う。


人が育っている。


環境が人を育てている。


そして人がまた環境を育てていく。


村はもう誰か一人の力で動いてはいなかった。


自ら成長し始めていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ