25.4話:バレット教導
朝。
村の訓練場には百人近い人々が集まっていた。
獣人。
人間。
エルフ。
ドワーフ。
魔族。
農民。
職人。
冒険者。
子供達までいる。
皆の視線の先にはケルナインが立っていた。
その隣にはエミリー。
リーヴ。
ロバート。
ティグリス。
ガイル。
マイケル。
エルナ。
既に魔法を習得し始めた者達だった。
ケルナインは静かに言った。
「今日の目的は一つ。」
「全員がバレットを理解することだ。」
ざわつきが起きる。
魔法。
それは貴族や才能ある者だけのもの。
そう信じられてきた。
しかしこの村では違う。
エミリーが実例だった。
マイケルが実例だった。
ガイルが実例だった。
だから誰も笑わない。
本当に覚えられるかもしれない。
そう思っている。
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「まず見せる。」
ケルナインは一歩下がった。
前へ出たのはエミリーだった。
狼獣人の女戦士。
今では村でも有数の前衛。
エミリーは右手を前へ出す。
体内を流れる魔力。
水。
循環。
制御。
圧縮。
何度も繰り返した訓練。
何百回も失敗した。
だから今がある。
「ウォーターバレット。」
水球が生まれる。
次の瞬間。
ドンッ!
木製の的を貫いた。
村人達が目を見開く。
「すげぇ……」
「本当に飛んだ……」
「水だぞ?」
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エミリーは笑った。
少し前まで自分も同じ顔だった。
そして次。
「ウォーターカッター。」
細い水の刃が伸びる。
シュッ。
丸太が綺麗に切断された。
村中が静まり返る。
職人達ですら驚いていた。
ガイルが目を剥く。
「鉄ならともかく木があんな簡単に切れるのか……」
エミリーは胸を張った。
少し誇らしい。
以前の彼女なら見せびらかしていただろう。
今は違う。
見せる理由がある。
教えるためだ。
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「重要なのは魔力量じゃない。」
エミリーが言う。
「制御だ。」
皆が真剣に聞いている。
「私も最初は何も出来なかった。」
「才能なんて無かった。」
「でも出来た。」
その言葉に説得力があった。
実際に成長した人間の言葉だからだ。
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次に前へ出たのはリーヴだった。
狼獣人。
長身の美女戦士。
風属性適性を持つ。
彼女は目を閉じる。
風。
流れ。
圧縮。
回転。
魔力が集まる。
「ウィンドバレット。」
空気が弾丸になる。
ドン!
木人形が吹き飛ぶ。
歓声が上がった。
さらに。
「ウィンドカッター。」
風の刃。
丸太が切断される。
リーヴは振り返る。
「獣人は耳と鼻がいい。」
「だから風との相性がいい。」
獣人達が真剣な顔になる。
自分達にも出来るかもしれない。
そう思い始めていた。
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その中の一人。
若い狼獣人の男が震える手を前へ出した。
恐る恐る魔力を流す。
失敗。
もう一度。
失敗。
三度目。
風が揺れた。
小さな弾が飛ぶ。
ぽす。
的に当たる。
皆が静まる。
本人が一番驚いていた。
「で……出来た……」
リーヴが笑う。
「出来たな。」
それだけだった。
それだけで男は泣きそうになった。
人生で初めて。
魔法が使えた。
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覚醒は連鎖する。
次々と挑戦が始まった。
犬獣人。
猫獣人。
狐獣人。
人間。
皆が試す。
出来る者。
失敗する者。
様々だった。
だが以前と違う。
誰も諦めない。
出来る人間が目の前にいるからだ。
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午後。
今度は土属性だった。
前へ出たのはティグリス。
虎獣人の美女戦士。
鍛えられた肉体。
圧倒的な存在感。
彼女は地面へ手を向ける。
「ソイルバレット。」
土塊が飛ぶ。
ドン!
的が粉砕された。
続けて。
「アースウォール。」
地面が盛り上がる。
壁が生まれる。
農民達が驚く。
「畑を守れる……」
「家も守れる……」
戦闘だけじゃない。
生活に使える。
その事実が皆を興奮させた。
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次に前へ出たのはガイルだった。
ドワーフの戦士。
ぶっきらぼうな顔。
戦斧を担いでいる。
「俺は器用じゃねぇ。」
全員が笑った。
どう見ても器用な職人だ。
「いや本当だ。」
「何百回失敗したと思ってる。」
ガイルは頭を掻いた。
そして。
「ストーンバレット。」
石弾が飛ぶ。
ドゴォッ!
的が吹き飛ぶ。
さらに。
石を触る。
構造理解。
内部構造。
亀裂。
強度。
全てが見える。
「この石は割れる。」
コン。
本当に割れた。
ドワーフ達が息を呑む。
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「鍛冶師向きだ。」
ガイルが言う。
「石工向きだ。」
「建築向きだ。」
職人達の目が輝く。
戦闘だけではない。
生活技術と繋がる。
それがこの村の教育だった。
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夕方。
最後に前へ出たのはロバートだった。
魔族。
大剣使い。
将軍スキル保持者。
部隊長。
皆の信頼を集める男。
彼は右手を伸ばす。
影が揺れた。
「シャドウバインド。」
黒い影が伸びる。
木人形を拘束。
全く動けない。
静まり返る訓練場。
ロバートは言った。
「俺は剣しか無かった。」
「魔法なんて無理だと思ってた。」
皆が聞いている。
「でも違った。」
「出来る。」
「努力すれば。」
「皆も出来る。」
短い言葉。
だが重かった。
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その夜。
村には奇妙な熱気があった。
あちこちで練習している。
風。
土。
水。
光。
火。
失敗ばかり。
それでも笑顔だった。
誰もが知ったからだ。
才能ではない。
教育だ。
環境だ。
努力だ。
ケルナインは遠くからその光景を見ていた。
何も言わない。
何も指示しない。
必要な種は蒔いた。
後は育つだけだ。
村は少しずつ変わっていく。
戦士だけではない。
農民も。
職人も。
子供達も。
そして次回。
光属性。
マイケルとエルナが前へ立つ。
ホーリーバレット。
ヒール。
治癒の力。
村はさらに一段階先へ進む。




