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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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244話 第四世代誕生

世界は再び変わろうとしていた。


第一世代は生き残った。


第二世代は育てた。


第三世代は研究した。


そして今。


第四世代が誕生した。


彼らは既に常識を疑うことから始めていた。


魔法は使うものではない。


作るものだ。


ダンジョンは攻略するものではない。


設計するものだ。


魔道具は道具ではない。


知識を蓄積する器だ。


そんな発想を持つ世代だった。



アルカディア連邦。


世界中央研究院。


そこでは前例のない発表会が開かれていた。


巨大な講堂。


数十万人の研究者。


数百万人の冒険者。


数億人が遠隔映像で視聴している。


壇上に立ったのは十六歳の少女。


エルフの血を引く第四世代研究者。


名をユリア。


リーゼの曾孫弟子だった。


彼女は静かに言った。


「本日、人造ダンジョン第一号が完成しました。」


会場が静まり返る。



ダンジョン。


それは長い歴史の中で自然に存在するものだった。


魔物が生まれる。


資源が生まれる。


未知が生まれる。


誰も作ったことなどない。


だが。


第四世代は違った。


「なぜ自然にしか存在しないと考えるのですか?」


それが彼らの発想だった。



巨大な映像が映し出される。


地下数千メートル。


人工的に作られた巨大空間。


そこに存在するのは。


人造魔力核。


巨大な結晶体だった。


研究者達がざわつく。


ユリアは説明する。


「第三世代が発見した世界魔力循環理論。」


「魔力海理論。」


「魔力結晶脈動理論。」


「それらを統合しました。」


映像が変わる。


複雑な魔法陣。


無数の術式。


膨大な演算構造。


まるで巨大な機械だった。



「魔法を組み合わせる。」


「条件を設定する。」


「結果を出力する。」


ユリアは微笑む。


「つまり。」


「魔法はプログラムです。」


会場がどよめいた。



火属性。


水属性。


風属性。


土属性。


光属性。


闇属性。


重力。


雷。


地震。


空間。


金属。


全てを組み合わせる。


条件を設定する。


魔力供給量。


出力条件。


安全機構。


再起動機構。


増殖抑制機構。


魔物生成制御。


資源生成制御。


それらを記述する。


まるで文章を書くように。


まるで計算式を書くように。


魔法を記述する。



それは新しい学問だった。


魔術言語学。


第四世代が生み出した概念。


魔法を言語化する。


魔法を記述する。


魔法を構築する。


「火球を撃つ。」


そんな曖昧なものではない。


「火属性出力三百。」


「球体形成。」


「速度百。」


「対象認識。」


「衝突後爆散。」


全てを記述する。



研究者達は驚愕した。


今まで感覚で使っていた。


才能で使っていた。


経験で使っていた。


それを言語にしたのである。



冒険者達も熱狂していた。


なぜなら。


人造ダンジョンは訓練施設になるからだ。


危険度設定。


魔物強度設定。


地形設定。


報酬設定。


全て管理できる。


初心者用。


中級者用。


上級者用。


研究者用。


治癒師用。


何でも作れる。



新しい冒険者時代が始まった。


もはや命懸けではない。


段階的に強くなる。


段階的に学ぶ。


段階的に成長する。


教育そのものだった。



別の研究棟。


そこでは新たな発表が行われていた。


若いドワーフ研究者。


ベルンの曾孫弟子。


名をダルク。


彼は机の上に小さな腕輪を置く。


銀色の腕輪。


ただそれだけだった。


「魔力吸収機です。」


誰も理解できない。



魔力吸収。


かつて伝説だった技術。


極一部しか扱えなかった技術。


それを魔道具化した。



ダルクが腕輪を装着する。


周囲の魔力が集まる。


空気が震える。


青い光が流れ込む。


腕輪内部へ吸い込まれていく。


研究者達が息を呑む。



「蓄積開始。」


腕輪が光る。


魔力が保存される。


蓄積される。


放出される。


循環する。


「魔力循環補助機構。」


「魔力吸収補助機構。」


「魔力安定化機構。」


「自動回復機構。」


ダルクは説明する。



会場が騒然となった。


第四世代は理解していた。


これは革命だと。



魔力不足。


そんな言葉が消える。


魔法初心者。


魔力が少ない者。


高齢者。


子供。


全員が恩恵を受ける。



さらに研究は進む。


魔導具と魔術の融合。


第四世代最大のテーマだった。



今までの魔導具。


魔法を固定する。


魔法を保存する。


魔法を再利用する。


その程度だった。


しかし。


第四世代は違う。



魔導具自身に判断させる。


状況を認識させる。


選択させる。


最適化させる。



つまり。


魔導具に思考回路を持たせる。



若い研究者が説明する。


「敵を認識。」


「距離を測定。」


「最適魔法を選択。」


「自動発動。」


会場が静まり返る。



これは戦争のためではない。


教育のため。


生活のため。


研究のため。


農業のため。



農業研究院では既に実用化が始まっていた。


自動灌漑装置。


自動施肥装置。


病害監視装置。


気象予測装置。


魔力循環管理装置。



農業革命は終わっていなかった。


さらに進化していた。



食料充足率百八十パーセント。


それでも研究は続く。


二百。


三百。


五百。


異界開拓。


星間開拓。


その未来を見据えている。



紡織産業も変化した。


魔術繊維。


自己修復衣服。


環境適応服。


重力調整服。


空間収納服。



若い職人達は笑う。


「まだ足りない。」


「もっと面白くできる。」



彼らは貧困を知らない。


飢餓を知らない。


病を恐れない。


だが。


歴史は知っている。


貧困村から始まったことを。



だから学ぶ。


だから研究する。


だから作る。



夜。


世界中央研究院。


屋上。


第四世代の若者達が集まっていた。


研究者。


冒険者。


職人。


教師。


全員が若い。



「次は何を作る?」


誰かが聞いた。


ユリアが答える。


「世界の外へ行く手段。」


ダルクが笑う。


「俺は自動研究施設。」


別の少女が言う。


「私は人工生命。」


さらに別の青年が言う。


「僕は新しい魔法体系。」



誰も止めない。


誰も否定しない。


環境がそうだからだ。


挑戦する者を笑わない。


失敗する者を責めない。


成功した者を妬まない。



環境が人を育てる。


その思想は。


もはや文化になっていた。



第一世代が種を蒔いた。


第二世代が育てた。


第三世代が研究した。


そして第四世代は。


世界そのものを設計し始めていた。


魔法を言語に変える者。


ダンジョンを作る者。


魔力吸収装置を作る者。


魔導具に知性を与える者。


新しい時代は静かに始まる。


英雄によってではない。


王によってでもない。


二百億人の人材達によって。


そして第四世代は。


さらにその先の未来へ向かって歩き始めていた。







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