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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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243話 第三世代誕生

世界は変わった。


かつては貧困村だった土地。


盗賊に怯え。


奴隷商に怯え。


病に怯え。


明日の食事にも困っていた土地。


そこから始まった流れは。


もはや誰にも止められない大河となっていた。


農業革命は世界を飢餓から解放した。


紡織産業は衣服不足を過去のものにした。


魔法教育は人々へ力を与えた。


教導スキルは知識を広げた。


魔力操作。


魔力循環。


魔力吸収。


かつては一部の天才しか理解できなかった技術も。


今では誰もが学ぶ学問になっている。


そして。


新しい時代が始まろうとしていた。


第三世代の誕生である。



世界研究都市アルカディア。


かつてのアルナ村。


今では世界最大級の学術都市となった場所。


そこには無数の研究施設が存在していた。


魔法研究院。


超能力研究院。


生命研究院。


農業研究院。


医療研究院。


ダンジョン研究院。


異界研究院。


それぞれに数億人規模の研究者が所属している。


その中心。


世界中央研究院。


巨大な円形講堂には若者達が集まっていた。


年齢は十代後半から二十代前半。


第二世代教師達の弟子。


つまり第三世代である。


壇上へ現れたのは若い少女だった。


人間族。


年齢十九歳。


名をリリア。


マイケルの弟子の弟子。


つまり孫弟子だった。


「本日の議題を開始します。」


声は若い。


しかし堂々としていた。


数万人の研究者達が静かになる。


「本日の研究テーマは。」


リリアは微笑む。


「魔力そのものです。」


会場がどよめいた。



魔法とは何か。


誰もが使える。


誰もが学べる。


だが。


その本質を知る者はいない。


火魔法。


水魔法。


風魔法。


土魔法。


光魔法。


闇魔法。


超能力。


全て使える。


しかし。


なぜ使えるのか。


誰も知らない。


だから研究する。


第三世代はそこへ挑んだ。



巨大な水晶が運び込まれる。


直径五メートル。


内部で青い光が脈動している。


「魔力循環結晶。」


リリアが説明する。


「異界第三領域で発見されました。」


映像が映し出される。


リモート・ビューイング。


遠隔透視。


ソートグラフィー。


複数の技術を組み合わせた立体映像。


異界の地下深く。


巨大な結晶が脈動している。


まるで心臓のようだった。


「私達は発見しました。」


リリアは静かに言う。


「魔力は流れているのではありません。」


研究者達が息を飲む。


「世界そのものが呼吸しています。」



その言葉は衝撃だった。


世界が呼吸する。


理解できない。


だが。


証拠はあった。


結晶は一定周期で魔力を放出していた。


そして吸収していた。


まるで肺。


まるで心臓。


まるで生命体。


「世界は生きている可能性があります。」


誰かが呟く。


会場は静まり返った。



別の研究施設。


異界研究院。


こちらでも第三世代が活躍していた。


若い獣人研究者。


名をアルフ。


索敵教師ミシェルの孫弟子。


彼は遠隔透視班を率いていた。


「観測開始。」


数百人の研究者が同時に能力を発動する。


テレパシー。


遠隔透視。


未来視。


念聴。


膨大な情報が共有される。


彼らが見ているのは。


誰も到達したことのない空間。


世界の外側だった。



そこには光があった。


巨大な光。


海のような魔力。


果てしない輝き。


「見つけた。」


アルフが震える。


「魔力海だ。」


記録係が叫ぶ。


研究者達が立ち上がる。


世界を満たす魔力。


その源流。


誰も知らなかった場所。


ついに発見されたのである。



冒険者達も研究へ加わっていた。


かつての冒険者は戦士だった。


今は違う。


発見者。


探索者。


観測者。


研究者でもある。


若い鬼人の少女。


ソフィアの弟子。


名をミーナ。


彼女は新型探索隊を率いていた。


「出発。」


転移魔法が起動する。


数百人の探索隊。


全員が研究者でもある。


目的は戦闘ではない。


発見。


観測。


記録。


それが任務だった。



第三世代の特徴。


それは最初から教育が存在したことだった。


第一世代は苦労した。


第二世代は学んだ。


第三世代は生まれた時から学べた。


読み書き。


算術。


魔法。


超能力。


農業。


鍛冶。


紡織産業。


医療。


全てが当たり前。


だから視点が違う。



若い研究者が言う。


「なぜ魔法があるのか。」


別の研究者が答える。


「では。」


「なぜ重力があるのか。」


また別の研究者が言う。


「なぜ生命は生まれるのか。」


議論は止まらない。



彼らは既に生存を心配していない。


飢餓がない。


貧困がない。


病も克服された。


だから。


知りたい。


理解したい。


それが原動力になっている。



農業研究院。


そこでも第三世代が活躍していた。


若いエルフの女性。


リーゼの孫弟子。


彼女は新しい作物を育てていた。


魔力植物。


魔力麦。


魔力米。


魔力果樹。


魔力野菜。


全て新種だった。


「食料充足率百三十パーセント。」


「まだ足りません。」


周囲が笑う。


十分過ぎる数字だ。


しかし彼女は首を振る。


「次は百五十パーセント。」


「二百パーセント。」


「異界開拓を考えるなら必要です。」


研究者達は真剣に頷いた。



紡織産業も進化していた。


若い職人達が新素材を開発している。


魔力繊維。


自己修復繊維。


温度調整繊維。


重力制御繊維。


空間収納繊維。


かつての服とは別物だった。



医療も同じ。


第三世代治癒師達。


彼らは失われた腕を再生する。


失われた足を再生する。


内臓を再生する。


神経を再生する。


さらに研究は進む。


老化とは何か。


寿命とは何か。


生命とは何か。



世界研究都市の中央広場。


そこには巨大な石碑が建っている。


最初の貧困村を記念した石碑。


そこへ若い研究者達が集まる。


彼らは石碑を見上げる。


誰もケルナインを知らない。


直接会ったこともない。


だが。


思想は知っている。


環境が人を育てる。


その言葉を。



第三世代は英雄を求めない。


救世主を求めない。


王を求めない。


自分達で考える。


自分達で学ぶ。


自分達で発見する。


それが当たり前だからだ。



夜。


世界中央研究院。


リリアは窓から星空を見ていた。


隣にはアルフ。


探索隊長ミーナ。


他の若い研究者達もいる。


誰もが未来を見ていた。


「次は何を研究する?」


誰かが聞く。


リリアは笑った。


「全部。」


皆が笑う。


「魔力。」


「生命。」


「異界。」


「宇宙。」


「時間。」


「空間。」


「世界。」


「全部知りたい。」


若者達の目は輝いていた。



第一世代は生き残った。


第二世代は育てた。


第三世代は探求する。


時代は進む。


知識は広がる。


教育は受け継がれる。


そして。


世界はさらに広がっていく。


かつて貧困村から始まった物語は。


今や二百億人の世界を動かしていた。


魔力操作を学ぶ子供達。


魔力循環を研究する若者達。


魔力吸収の原理を解明しようとする研究者達。


農業革命をさらに進化させる技術者達。


紡織産業を新たな段階へ導く職人達。


誰か一人が世界を変える時代ではない。


人材が世界を変える時代。


そして今。


第三世代の研究者達は。


誰も見たことのない未来へ向かって歩き始めていた。







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