24.6話:解体班
夕暮れ。
狩猟隊が帰還した。
村の中央広場には巨大な獲物が並べられている。
フォレストボア。
フォレストディア。
フォレストウルフ。
そして巨大なロックボア。
村人達から歓声が上がる。
子供達が目を輝かせる。
老人達は何度も頷いていた。
これだけの肉があればしばらく飢えない。
それだけでも十分な成果だった。
だがケルナインは違う。
彼が見ているのは肉ではない。
人材だった。
「解体を始めよう。」
その一言で作業が始まる。
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解体場。
ガイルが腕を組んでいた。
巨大なロックボアを前に唸る。
「硬ぇな。」
斧を振る。
だが効率が悪い。
骨を傷付ける。
肉も無駄になる。
横ではエルフ達も苦戦していた。
リーヴも同じだった。
狼獣人の嗅覚は優秀だ。
筋肉の位置もある程度わかる。
だが切断技術は別問題だった。
「難しいな。」
そこへケルナインがやって来る。
「風を使え。」
「風?」
リーヴが首を傾げる。
ケルナインは頷いた。
「刃として使う。」
「風属性は飛ぶだけじゃない。」
「切れる。」
その言葉でリーヴの目が変わる。
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試してみる。
魔力を流す。
風を集める。
圧縮。
もっと薄く。
もっと鋭く。
頭の中で刃を作る。
風の刃。
その瞬間。
指先に何かが生まれた。
「これか。」
リーヴはロックボアの脚へ振る。
シュッ。
音がした。
皮膚が裂ける。
筋肉が切れる。
骨の手前で止まる。
全員が固まった。
リーヴ本人も驚いていた。
「切れた。」
ケルナインが頷く。
「成功だ。」
【ウィンドカッター】
覚醒。
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エルフ達がざわつく。
長弓を持つ若いエルフが前へ出る。
「私にもできますか?」
「やってみろ。」
ケルナインは短く答える。
エルフは目を閉じる。
風。
森。
木々。
葉。
自分達が最も慣れ親しんだ属性。
魔力が集まる。
矢の先へ。
風が纏わりつく。
放つ。
ヒュン。
矢が飛ぶ。
通常より速い。
深く刺さる。
エルフは息を呑んだ。
「軽い。」
「矢が軽い。」
「風が押している。」
ケルナインは頷く。
「飛距離も伸びる。」
「貫通力も上がる。」
エルフ達の顔色が変わる。
弓兵。
この村にはいなかった兵種。
ようやく誕生した。
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その頃。
ティグリスは土と格闘していた。
「なんか違うんだよな。」
土属性は覚醒した。
ソイルバレットも撃てる。
だが何か足りない。
守り。
それが無い。
ティグリスは前衛だ。
敵を倒すだけでは駄目だ。
仲間を守らなければならない。
考える。
魔力を流す。
土を集める。
積み上げる。
圧縮。
固める。
すると目の前に壁が生まれた。
高さ二メートル。
厚さ三十センチ。
土壁。
ティグリスが目を見開く。
「できた。」
ガイルが笑う。
「おお。」
「いいじゃねぇか。」
【アースウォール】
覚醒。
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一方。
ガイルは骨を見ていた。
ずっと見ていた。
誰よりも真剣だった。
ドワーフは鍛冶の種族。
構造を見る。
強度を見る。
支える形を見る。
それが本能だった。
「なるほどな。」
ロックボアの骨格。
支える位置。
力が流れる場所。
弱い場所。
全部見えてくる。
ガイルは思わず笑った。
「だから折れたのか。」
戦いを思い出す。
ストーンバレットが肩に当たった。
なぜ砕けたのか。
理由が理解できた。
石を見る。
骨を見る。
構造を見る。
頭の中で繋がる。
その瞬間。
新しい知識が流れ込んだ。
【構造理解】
覚醒。
ガイルは笑った。
「面白ぇ。」
「鍛冶にも使えるな。」
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その頃。
ロバートは黙々と作業していた。
影が伸びる。
影が肉を支える。
影が獲物を固定する。
皆が気付く。
「便利だな。」
「隊長。」
ロバートが苦笑する。
「俺もそう思う。」
シャドウバインド。
本来は拘束魔法。
だが使い方次第で作業にも使える。
仲間を守る。
仲間を助ける。
ロバートらしい力だった。
その様子を見ていた若い獣人達が安心する。
不思議なことだった。
ロバートがいるだけで落ち着く。
失敗しても焦らない。
怖くない。
将軍スキル。
統率スキル。
少しずつ形になり始めていた。
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夜。
解体は終わった。
肉は大量。
骨も大量。
皮も大量。
角も大量。
全てが資源だった。
広場では宴が始まる。
肉を焼く。
子供達が笑う。
エルフも獣人も人間も魔族も同じ鍋を囲む。
ティグリスが笑う。
リーヴが笑う。
ガイルが酒を欲しがる。
トミーが慌てる。
「だから酒はこれから作るんだって!」
皆が笑った。
その様子を少し離れた場所からケルナインが見ていた。
戦士が育つ。
弓兵が育つ。
解体師が育つ。
鍛冶師が育つ。
指揮官が育つ。
人が育つ。
村が育つ。
環境が人を育てる。
その証明が今ここにあった。
そして翌日。
トミーが発見した酵母と麹が、さらに村を大きく変えることになる。
酒。
味噌。
醤油。
発酵。
新しい産業の始まりだった。




