24.3話:狩猟隊
朝日が昇る。
村の広場には多くの人が集まっていた。
エルフ三十人の受け入れによって村の人口は再び増えた。
喜ばしいことだ。
しかし現実もある。
食料だ。
畑は増やしている。
大豆も植える。
芋も植える。
だが収穫には時間がかかる。
今日食べる食料は今日確保しなければならない。
広場の中央。
エミリーが立っていた。
狼獣人の耳が朝風に揺れる。
その隣にはリーヴ。
ティグリス。
ロバート。
ガイル。
そして新しく加わったエルフ弓兵達。
さらに若い獣人戦士達。
総勢二十名。
村初の本格的な狩猟隊だった。
「準備はいいか。」
エミリーが声を上げる。
全員が頷く。
その時。
ケルナインが前へ出た。
手には十個ほどの袋。
マジックバッグだった。
「貸与する。」
若い獣人達が目を丸くする。
「これが?」
「噂の魔道具か?」
ケルナインは頷く。
「食料確保が目的だ。」
「無理はするな。」
「だが成果は期待している。」
それだけだった。
命令はしない。
指示もしない。
考えるのは現場。
決めるのは現場。
それがこの村だ。
ロバートが笑った。
「任せてくれ。」
狩猟隊は森へ向かった。
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森は深かった。
エルフ達の表情が少し曇る。
焼かれた故郷を思い出しているのだろう。
エミリーは何も言わない。
代わりに歩き続ける。
リーヴが鼻を動かした。
「いた。」
「東。」
獣人達が武器を構える。
エルフ達も弓を引く。
茂みの向こう。
巨大なフォレストボアがいた。
体長三メートル。
牙だけで人を貫く魔物だ。
若い獣人達が緊張する。
だが。
ロバートが前へ出た。
「慌てるな。」
「訓練通りだ。」
その声を聞くだけで落ち着く。
不思議だった。
若い獣人達の震えが止まる。
ロバート自身も違和感を覚えた。
何かが変わった。
何かが繋がった。
頭の中に知識が流れ込む。
仲間を率いる力。
仲間を守る力。
仲間を落ち着かせる力。
【将軍】
【恐怖抑制】
覚醒。
ロバートは目を見開いた。
だが今は戦闘中だ。
考えるのは後回しだった。
「撃て!」
エルフ達が矢を放つ。
ヒュン。
ヒュン。
ヒュン。
三本の矢が飛ぶ。
見事に命中。
フォレストボアが怒り狂う。
突進。
エミリーが飛び出した。
身体強化。
筋肉強化。
水魔法で鍛えた身体が躍動する。
牙を避ける。
横へ回る。
水弾を圧縮。
「ウォーターバレット!」
ドン!!
魔物の目に直撃。
動きが鈍る。
その瞬間。
リーヴが飛び込んだ。
風属性魔力。
まだ未熟。
だが確かに風が刃となる。
「はあああ!」
斬撃。
フォレストボアの首筋を切り裂く。
ロバートの大剣が続いた。
轟音。
魔物が倒れる。
歓声が上がった。
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狩りは続く。
フォレストディア。
フォレストウルフ。
次々と仕留める。
マジックバッグはどんどん埋まっていく。
若い獣人達の顔も明るい。
食料だ。
村を救う食料だ。
そして。
昼過ぎ。
事件が起きた。
巨大なロックボア。
通常のフォレストボアよりさらに巨大。
岩のような皮膚。
体長四メートル。
若い獣人達が息を呑む。
「でかい……」
ティグリスが前へ出た。
虎獣人の美女戦士。
巨大な戦斧を握る。
だが距離が遠い。
近づく前に突進される。
どうする。
その瞬間だった。
ティグリスの頭に閃きが走る。
土。
石。
圧縮。
飛ばす。
魔力が形になる。
足元の土が集まる。
圧縮。
圧縮。
さらに圧縮。
拳ほどの塊になる。
「行け!」
発射。
ドゴォォォン!!
土塊がロックボアの頭部へ直撃した。
巨体がよろめく。
全員が固まった。
ティグリス自身も驚いている。
「今の……」
セリナがいれば即答しただろう。
覚醒だ。
【ソイルバレット】
誕生。
ティグリスの顔が輝く。
「できた……」
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ガイルが豪快に笑った。
「面白ぇ!」
ドワーフは石を拾った。
重い石。
握る。
魔力を流す。
圧縮。
もっと圧縮。
さらに圧縮。
「こうか!」
投げる。
違う。
発射だ。
ドン!!
石が砲弾のように飛ぶ。
ロックボアの肩へ命中。
骨が砕ける。
ガイルが目を丸くした。
「おお?」
「なんだこれ。」
ティグリスが笑う。
「おっさんもか!」
ガイルも笑う。
【ストーンバレット】
覚醒。
若い獣人達の目が輝いた。
強い。
強すぎる。
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ロックボアは暴れる。
若い獣人へ向かって突進した。
危ない。
誰もがそう思った。
その時。
ロバートが叫ぶ。
「止まれ!!」
影が伸びた。
地面から黒い影。
ロックボアの足へ絡みつく。
拘束。
動きが止まる。
全員が驚愕する。
ロバートも固まった。
「なんだ……」
影が揺れる。
闇属性。
【シャドウバインド】
覚醒。
ティグリスが笑った。
「隊長までか!」
ガイルも頷く。
「お前らしい能力だ。」
ロバートは首を傾げる。
「俺らしい?」
「敵を倒す力じゃねぇ。」
「仲間を守る力だ。」
ガイルの言葉にロバートは少し照れた。
その隙に。
エミリーが飛び出す。
ウォーターバレット。
リーヴの斬撃。
ロバートの大剣。
ロックボアはついに倒れた。
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夕暮れ。
狩猟隊は村へ戻る。
マジックバッグは満杯。
肉。
皮。
骨。
角。
大量の戦利品。
村人達から歓声が上がる。
エルフ達も笑っている。
獣人達も誇らしい。
エミリーは皆を見た。
ほんの少し前。
この村は飢えていた。
怯えていた。
守ることだけで精一杯だった。
今は違う。
リーヴが育つ。
ティグリスが育つ。
ロバートが育つ。
ガイルが育つ。
新人達も育つ。
環境が人を育てる。
その言葉は本当だった。
そして彼女達はまだ知らない。
次の解体作業で。
さらに多くの者達が新たな力へ目覚めることを。




