表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

254/290

225話 魔王、PEAO本部を訪問する

アルカディア連邦設立から百年以上。


世界は大きく変わった。


貧困は消えた。


病は克服された。


簒奪者は居場所を失った。


教育が世界を覆った。


そして今。


かつて世界最大の脅威と呼ばれた魔族領にも変化の波が押し寄せていた。


PEAO加盟希望。


魔族領全土で九割を超える支持。


誰も予想しなかった事態だった。


魔王自身ですら。


その日。


巨大な転移門が静かに輝いていた。


魔王城前広場。


魔王。


側近。


護衛数名。


全員が緊張している。


「本当に行くのですか。」


側近が尋ねた。


魔王は苦笑した。


「国民が行けと言っている。」


「その通りですが……。」


「侵略より加盟の方が人気というのも変な話だな。」


誰も否定できなかった。


転移門が起動する。


光が広場を包む。


そして。


魔王たちは世界最大の都市へ到着した。


PEAO本部。


かつて存在したどの帝国より巨大。


かつて存在したどの王都より整然としている。


人族。


魔族。


獣人。


エルフ。


ドワーフ。


ダークエルフ。


海洋種。


竜人。


様々な種族が歩いていた。


誰も驚いていない。


誰も敵視していない。


魔王は周囲を見る。


「……。」


言葉が出ない。


側近も固まっていた。


「魔王様。」


「何だ。」


「ここ、本当に人族の都市ですか。」


「私に聞くな。」


まず驚いたのは治安だった。


兵士が少ない。


いる。


だが威圧感がない。


皆笑顔で仕事をしている。


子供たちは学校帰り。


教師と楽しそうに会話している。


商人は堂々と商売をしている。


露店も多い。


物流倉庫も巨大だった。


魔王は小さく呟いた。


「戦時国家ではない。」


側近が頷く。


「はい。」


「平和国家だ。」


さらに進む。


巨大な建物が見えてきた。


PEAO本部。


世界最大の行政機関。


魔王たちは案内された。


応接室。


そこで待っていた人物に魔王は驚いた。


エレノア・グランディア侯爵。


そしてアリア。


今やPEAO最高幹部の一人だった。


エレノアが立ち上がる。


「ようこそ。」


「歓迎いたします。」


アリアも笑う。


「魔王が来るとは思わなかった。」


魔王は苦笑した。


「私もだ。」


全員が席に着く。


茶が出される。


沈黙。


最初に口を開いたのは魔王だった。


「加盟条件を聞きたい。」


エレノアは頷いた。


「簡単です。」


魔王。


身構える。


巨大な条件が来ると思った。


賠償。


軍縮。


領土割譲。


属国化。


様々な可能性を考えていた。


しかし。


エレノアの言葉は予想外だった。


「教育を受け入れること。」


魔王。


瞬きする。


「それだけか。」


「はい。」


「本当にそれだけか。」


「はい。」


アリアも続ける。


「PEAOは帝国ではない。」


「加盟国を支配しない。」


「加盟国を従属させない。」


「加盟国を搾取しない。」


魔王は眉をひそめる。


「なら何を求める。」


エレノアが答える。


「教育です。」


「教育。」


「はい。」


彼女は資料を広げた。


そこにはPEAO加盟国一覧が記されている。


百を超える国々。


全て加盟後に成長していた。


識字率向上。


医療改善。


農業改革。


物流改善。


貧困減少。


犯罪減少。


戦争減少。


魔王は資料を見つめる。


「つまり。」


「教育さえ受け入れれば良いと。」


「その通りです。」


「軍事同盟は。」


「任意です。」


「税は。」


「ありません。」


「献上品は。」


「ありません。」


「属国化は。」


「ありません。」


魔王。


沈黙。


側近も沈黙。


理解が追いつかない。


数分後。


魔王は言った。


「利益はどこにある。」


アリアが笑う。


「教育された人材。」


「それが利益。」


「人材が増えれば世界が豊かになる。」


「世界が豊かになれば争いが減る。」


「争いが減ればPEAOの仕事も減る。」


魔王は頭を抱えた。


理屈は理解できる。


理解できるが。


国家運営として異常だった。


「それで成り立つのか。」


エレノアが笑う。


「百年以上成り立っています。」


反論できない。


事実だからだ。


窓の外には巨大都市。


研究都市。


農業都市。


教育都市。


物流都市。


全てが稼働している。


魔王は外を見た。


そこに軍事国家はなかった。


そこに征服国家もなかった。


そこにあったのは。


教師の国家だった。


その後。


施設視察が始まった。


最初は学校。


魔王は教室へ入る。


人族。


魔族。


獣人。


全員が同じ机に座っていた。


教師が質問する。


子供たちが答える。


魔王は側近を見る。


側近も固まっている。


「種族差別は。」


「ありません。」


案内役が答えた。


次は病院。


最先端医療。


欠損再生。


超能力治療。


魔力循環治療。


無料。


魔王。


再び沈黙。


さらに研究都市。


魔法研究。


異界研究。


空間研究。


超能力研究。


魔族研究者も大量にいた。


彼らは普通に働いていた。


魔王は呟く。


「我が国の研究者も移住したがるわけだ。」


案内役は苦笑した。


「はい。」


最後に案内されたのは異界開拓局だった。


巨大な転移門。


その向こうには果てしない大地。


森。


山脈。


海。


平原。


どこまでも続く土地。


魔王は絶句した。


「……。」


「異界です。」


「まだほとんど未開拓です。」


「無限に近い土地があります。」


魔王は理解した。


人口問題。


領土問題。


資源問題。


全て解決している。


だから戦争が不要になった。


奪う必要がない。


土地がある。


食料がある。


教育がある。


人材がある。


その夜。


PEAO本部会議室。


正式会談。


魔王が席に座る。


エレノア。


アリア。


各国代表。


静かな会議だった。


魔王は立ち上がる。


全員が見る。


そして魔王は言った。


「加盟を希望する。」


誰も驚かなかった。


予想されていたからだ。


エレノアが頷く。


「歓迎します。」


アリアも笑う。


「魔族領も仲間だ。」


拍手が起きる。


歓声ではない。


穏やかな拍手。


戦争終結の拍手でもない。


新しい仲間を迎える拍手だった。


魔王はその音を聞きながら思った。


かつて自分は世界を征服しようとした。


しかし。


世界は別の方法で統一されていた。


剣ではない。


軍隊でもない。


恐怖でもない。


教育だった。


人材だった。


環境だった。


そして。


魔族領もまた。


戦争ではなく学びによって世界へ加わる。


百年以上続いた変化は。


ついに魔王すら飲み込んだのである。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ