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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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222話 七十年後の世界

アルカディア連邦設立から七十年。


世界はかつて誰も想像できなかった姿へ変わっていた。


朝日が昇る。


巨大都市アルカディア中央区。


空には無数の飛行船。


空間転移門。


浮遊輸送路。


遠くには数百階建ての建築群。


さらにその向こうには広大な農地が続いている。


世界人口は増え続けていた。


飢餓は無い。


病もほとんど存在しない。


戦争も無い。


貧困もほぼ消滅した。


かつて世界を脅かしていた盗賊。


奴隷商。


傭兵崩れ。


簒奪者。


その多くが歴史書の中の存在となっていた。


原因は単純だった。


教育である。


アルカディア連邦が世界へ広めた教導制度。


魔法教育。


農業教育。


医療教育。


物流教育。


それらが世界を変えた。


そして。


さらに大きな変化が起きていた。


寿命だった。


PEAO本部。


巨大会議場。


各国代表が集まっている。


壇上にはエレノア・グランディア侯爵の姿があった。


七十年前と全く変わらない。


銀色の髪。


美しい容姿。


四十代前半にしか見えない。


しかし実年齢は百五十歳を超えている。


会場の若い世代は信じられないという顔をしていた。


エレノアは静かに語る。


「皆さん。」


「本日は魔力循環と魔力操作による身体維持技術について報告します。」


巨大な映像が浮かび上がる。


会場が静まる。


「私が最初の実例でした。」


その言葉に多くの者が頷いた。


歴史の教科書にも載っている。


かつて老侯爵だった女性。


奴隷制度に反対し続けた数少ない貴族。


その彼女が最初に発見した。


魔力循環による身体維持技術。


老化の抑制。


病の予防。


肉体維持。


寿命延長。


その研究は後に世界を変えた。


「当時は偶然でした。」


エレノアは笑う。


「ですが今は違います。」


映像が変わる。


世界統計。


平均寿命。


かつて人族は七十年程度だった。


今は三百年以上。


獣人も二百年以上。


魔族は五百年以上。


エルフやダークエルフはさらに長い。


ドワーフも同様だった。


元々の長命種はさらに進化していた。


千年。


二千年。


それ以上。


超長命種と呼ばれる存在になっていた。


会場からどよめきが起こる。


何度見ても驚く数字だった。


その頃。


研究棟ではアリアが大量の研究者に囲まれていた。


百年以上研究者を続けていた魔女。


今では二百年を超えている。


しかし見た目は若い。


知識は増え続けていた。


「先生。」


「なぜここまで寿命が伸びたのですか。」


若い研究者が尋ねる。


アリアは静かに答えた。


「身体は壊れる。」


「それが老化。」


「魔力循環は身体を修復し続ける。」


研究者たちは真剣に聞いている。


アリアはさらに続けた。


「魔力操作で循環効率を上げる。」


「魔力吸収技術で魔力不足を解消する。」


「結果として身体が壊れにくくなる。」


単純な理屈だった。


しかし実現は難しかった。


昔は。


今は違う。


世界中の人々が教育を受けている。


教師は五十億人。


教導スキル覚醒者五十億人。


魔法属性覚醒者五十億人。


誰もが学べる。


だから誰もが使える。


研究者たちは感嘆する。


「環境が変わったからですね。」


アリアは頷いた。


それこそが本質だった。


才能ではない。


教育だった。


午後。


農業区域。


見渡す限りの農地が広がる。


かつての何十倍。


何百倍。


食料充足率は千五百パーセントを超えている。


それでも生産は続く。


理由は人口だった。


増え続けている。


人が死なない。


病で死なない。


飢餓で死なない。


戦争で死なない。


寿命も伸び続ける。


人口は五十億人に達していた。


農業革命は止まらない。


巨大農場では無数の教師たちが働いている。


魔力操作。


魔力循環。


土属性魔法。


水属性魔法。


風属性魔法。


全てが農業へ投入されていた。


トミーが農地を見渡す。


「すげぇな。」


狐獣人の商人は笑った。


七十年前。


食料不足を心配していた。


今は逆だった。


生産力が高すぎる。


物流網の整備が追いつかない。


「商人が足りねぇ。」


彼は頭を抱えた。


周囲が笑う。


平和な悩みだった。


その頃。


巨大紡織都市。


リーザ。


リーブ。


リーゼ。


三人は今や伝説的な職人だった。


工場では無数の織物が生産されている。


かつて貧困村を支えた産業。


紡織産業。


今では世界経済の柱だった。


服。


寝具。


建材。


魔導繊維。


用途は無限に広がっている。


若い職人が質問する。


「先生。」


「なぜここまで発展したんですか。」


リーザが微笑む。


「教育よ。」


即答だった。


技術は教えなければ消える。


伝えれば増える。


それだけだった。


夜。


アルカディア中央議会。


世界人口増加問題が議論されていた。


エミリーが資料を見る。


「五十億人か。」


「七十年前の何倍だ。」


ロバートも苦笑する。


「平和すぎるのも考えものだな。」


誰も死なない。


皆健康。


子供も増える。


人口は増加し続ける。


国土は変わらない。


だから各国は新しい課題へ向き合っていた。


宇宙開発。


海底都市。


地下都市。


浮遊都市。


新しい居住空間。


世界は次の段階へ進もうとしている。


そして誰もが理解していた。


七十年前。


アルナ村が無ければ。


教育が無ければ。


この世界は存在しなかった。


貧困。


病。


簒奪者。


戦争。


それらに怯えていた時代は終わった。


かつてブーチン帝国が残した負の遺産も全て清掃された。


世界中の危険地帯も消えた。


犯罪率も歴史的な低水準になっている。


犯罪を続ける意味が無い。


働けば豊かになる。


学べば成長できる。


教育を受ければ未来がある。


だから人々は犯罪より努力を選ぶ。


環境が変われば人も変わる。


それを世界そのものが証明していた。


窓の外。


無数の灯りが広がる。


五十億人が暮らす世界。


長命種となった人々。


さらに進化した超長命種。


平和な国家群。


そして終わらない学び。


世界はまだ成長を続けていた。


環境が人を育てる。


その言葉を証明しながら。







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