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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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218話 海の脅威 前編

海洋都市アクアマリナを出発した船団は、穏やかな海を進んでいた。


甲板にはアルカディア教師団、セレンスキー教師団、サンナ教師団の面々が集まっている。


海洋連盟との交流は大成功だった。


海底都市ネプトリアでは教育制度の共有が進み、海洋種族たちも教導スキルの有用性を理解し始めている。


シャチ族長オルカ。


イルカ族代表ルミナ。


サメ族商人代表ガルシャ。


それぞれが連邦との同盟を歓迎していた。


人口二十二億人を超えるアルカディア連邦。


人口一億人を超えたサンナ・マリン王国。


そして海洋連盟。


新たな友好関係が結ばれたことにより、この世界の均衡はさらに安定へ向かっていた。


「順調でしたね。」


マイケルが微笑む。


「そうですね。」


エルナも頷いた。


海を渡る風は心地良い。


戦争もない。


飢餓もない。


病も大きく減った。


かつて貧困村だったアルナ村を思えば信じられない光景だった。


しかし。


その時だった。


空の上を飛んでいた鳥人族の索敵教師ミシェルが突然表情を変えた。


「停止!」


鋭い声が響く。


甲板の空気が変わった。


ロバートが立ち上がる。


「何があった。」


ミシェルは遠方を睨んでいた。


風属性索敵。


光属性探索。


超能力による遠隔透視。


複数の索敵を同時に発動している。


「海中に巨大反応。」


「数は?」


「一体。」


周囲が少し緩む。


巨大魔物一体なら現在の戦力なら問題にならない。


しかしミシェルは首を横に振った。


「違う。」


「普通の海魔物じゃありません。」


その声にセリナが眉をひそめた。


「説明を。」


「人工的な改造痕があります。」


甲板が静まり返った。


人工的。


その言葉は重い。


ミシェルは遠隔透視を続ける。


「体長二百メートル以上。」


「触腕多数。」


「全身に魔力回路。」


「さらに拘束用の魔導鎖が融合しています。」


セリナの顔色が変わった。


「まさか。」


「ブーチン王国か。」


誰もがその名を知っていた。


数年前に滅亡した侵略国家。


奴隷商。


傭兵崩れ。


海賊。


盗賊。


魔物使い。


あらゆる悪事を国家規模で行っていた巨大国家。


アルカディア連邦とセレンスキー連合によって滅ぼされたが、その負の遺産は世界各地に残されている。


「間違いありません。」


ミシェルは断言した。


「生体兵器です。」


「ブーチン王国が育成した海魔物。」


「まだ生き残りがいました。」


重い沈黙が流れる。


その時。


海面が爆発した。


轟音。


巨大な水柱。


船体が激しく揺れる。


「来るぞ!」


ロバートが叫ぶ。


次の瞬間。


海面から巨大な触腕が出現した。


それはまるで島だった。


太さだけで城壁級。


長さは数百メートル。


無数の吸盤には魔石が埋め込まれている。


自然の生物ではない。


完全な兵器だった。


「全船回避!」


ロバートの指示が飛ぶ。


船団が一斉に動き始める。


しかし巨大触腕が海面を叩いた。


衝撃波。


津波。


複数の船が激しく揺れる。


「防御!」


エミリーが前に出た。


風属性魔法。


土属性魔法。


複合展開。


巨大な防壁が形成される。


後方では教師団たちが生徒を守っていた。


「落ち着いてください!」


「訓練通りです!」


「恐慌禁止!」


教導スキルが発動する。


数万人規模の教師たちが即座に行動を開始した。


これが教育国家の強みだった。


パニックが起きない。


混乱が広がらない。


各自が役割を理解している。


「敵を確認。」


セリナが遠隔透視を行う。


その姿を見た瞬間。


彼女は息を呑んだ。


海中にいたのは巨大なタコ型海魔物だった。


しかし普通ではない。


全身が金属装甲で覆われている。


触腕には魔導砲。


体内には大量の魔石。


明らかに戦争用だった。


「狂っている。」


「こんなものを作っていたのか。」


セリナが呟く。


ブーチン王国らしい発想だった。


人も魔物も道具。


使い潰す。


教育もない。


尊厳もない。


支配だけが目的。


だから滅んだ。


だが負の遺産だけは残る。


「総員戦闘準備。」


ロバートが大剣を抜いた。


将軍スキル。


元帥スキル。


統率能力が全軍へ広がる。


「アルカディア教師団。」


「セレンスキー教師団。」


「サンナ教師団。」


「海洋連盟。」


「総力戦だ。」


その瞬間。


海面からさらに巨大な本体が姿を現した。


海そのものが持ち上がったような光景だった。


誰もが息を呑む。


巨大。


圧倒的。


まさに海の怪物。


しかし。


恐怖は広がらない。


なぜなら。


彼らは教育を受けていた。


魔法を学んだ。


超能力を学んだ。


戦術を学んだ。


仲間を信じることを学んだ。


「先生。」


若い教師が呟く。


「勝てますか。」


マイケルは笑った。


「勝てます。」


「昔なら無理でした。」


「でも今は違います。」


かつての貧困村。


飢餓。


病。


盗賊。


奴隷商。


あらゆる苦難を乗り越えてきた。


教育は人を変える。


環境は人を育てる。


それを証明してきた。


「皆さん。」


マイケルは杖を掲げる。


「学びの力を見せましょう。」


無数の魔法陣が空に現れた。


海上戦の幕が上がる。


そして遠く。


黒雲の中で。


巨大な雷光が静かに輝いていた。


カンナカムイ。


連邦最強クラスの雷魔法使いが戦場へ到着しようとしていた。







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