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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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216話 英雄国への敬意

朝。


世界最大港。


セレンスキー王国の海岸線は、もはや数年前とは別世界だった。


巨大防波堤。


巨大倉庫群。


魔法式荷役設備。


数百隻が同時に接岸できる港湾施設。


海洋連盟とアルカディア連邦の協力によって完成した世界最大級の物流拠点である。


港には大勢の人々が集まっていた。


農民。


商人。


教師。


兵士。


学生。


職人。


数十万人規模。


全員が今日の出航を見送るために集まっていた。


海洋連盟の代表ルミナは驚いていた。


「すごい……」


隣のオルカも頷く。


「歓迎されるとは聞いていた」


「しかしここまでとはな」


ガルシャも腕を組む。


「まるで祭りだ」


実際その通りだった。


街全体が祭りだった。


旗が翻る。


楽団が演奏する。


子供たちが走り回る。


港全体が笑顔に包まれていた。


そこへセレンスキー王が姿を現した。


大歓声。


王は手を上げる。


歓声が静まった。


「友人たちよ」


力強い声が港に響く。


「本日、我々は海洋連盟の友人たちを送り出す」


拍手。


歓声。


王は続けた。


「我が国はかつて海を知らなかった」


民衆が頷く。


「魚を知らなかった」


「港を知らなかった」


「海洋物流を知らなかった」


「海底農業を知らなかった」


海洋連盟の面々も頷く。


事実だった。


セレンスキー王国は内陸国家。


海とは縁が薄かった。


「しかし今は違う」


王が港を指差す。


世界最大港。


巨大物流拠点。


無数の船。


活気ある市場。


人々の笑顔。


「我々は学んだ」


「友人から学んだ」


「そして成長した」


歓声。


王はさらに続ける。


「そして忘れてはならない」


港が静まり返る。


「アルカディア連邦」


その名前が出た瞬間。


港全体が揺れるほどの歓声が起きた。


「アルカディア万歳!」


「英雄国万歳!」


「友好万歳!」


海洋連盟の者たちは驚いた。


想像以上だった。


セリナも少し目を丸くする。


王は笑った。


「我が国は救われた」


「それは歴史である」


「そして誇りである」


誰も否定しない。


教師も。


兵士も。


子供たちも。


皆知っている。


教科書に載っているからだ。


しかし王は続けた。


「だが」


「我々は救われるだけの国ではない」


歓声。


「学び」


「働き」


「育ち」


「立ち上がった」


「だから今ここにいる」


大歓声。


王の言葉には自信があった。


かつての被害者ではない。


自立した国家の王の言葉だった。


そして王は手を上げる。


「友人たちに贈り物を用意した」


その瞬間。


巨大な荷車列が現れた。


港がどよめく。


荷車。


荷車。


荷車。


果てが見えない。


積まれているのは黄金色の麻袋。


小麦だった。


最高品質の小麦。


今年の豊作を象徴する収穫物である。


「これは我が国の誇りだ」


王が言う。


「アルカディア連邦」


「海洋連盟」


「両国に贈る」


拍手。


歓声。


さらに別の荷車が現れる。


今度は巨大な樽。


数千。


数万。


香りだけで分かる。


酒だった。


ガルシャの鼻が反応する。


「これは……」


王は笑った。


「我が国特産のウィスキーだ」


海洋連盟の者たちから歓声が上がる。


酒は種族を問わない。


オルカも笑った。


ルミナも笑った。


ガルシャはもっと笑った。


「全部欲しいな!」


港中が笑いに包まれる。


王は静かに言う。


「昔の我々には渡せるものがなかった」


「しかし今は違う」


「我々は生産できる」


「育てられる」


「誇れる」


「だから贈る」


その言葉に海洋連盟の者たちは深く頭を下げた。


これは施しではない。


友情だった。


対等な友人への贈り物だった。


式典終了後。


今度は留学生たちが集まる。


セレンスキー王国から三千人。


海洋連盟から三千人。


全員教師だった。


魔法。


超能力。


職業スキル。


全てを習得した人材たちである。


海を学ぶ者。


雪国を学ぶ者。


農業を学ぶ者。


漁業を学ぶ者。


環境が違えば学びも違う。


だから交流には価値があった。


セリナはその様子を見つめる。


教育は人を育てる。


人が育てば国が育つ。


国が育てば世界が変わる。


それを証明する光景だった。


やがて出航の鐘が鳴る。


巨大ゴーレムフェリー艦隊が動き始める。


数百隻。


世界最大規模の船団。


民衆が手を振る。


旗が翻る。


子供たちが走る。


教師たちが見送る。


セレンスキー王も最後まで立ち続けた。


船団はゆっくりと海へ出る。


次なる目的地。


北方の友好国。


サンナ・マリン王国。


海洋連盟とアルカディア連邦の新たな旅が始まろうとしていた。







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