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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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209話 海底鉱脈

海洋連盟との共同研究は新たな段階へ進んでいた。


魚醤。


深海薬草。


深海魔石。


海底資源。


多くの成果が生まれていたが、その中でも最も大きな発見は別にあった。


海。


そのものだった。


かつて人類は海を越える場所として見ていた。


漁をする場所として見ていた。


交易路として利用していた。


しかしアルカディア連邦の研究者たちは違う。


彼らは海を「未開拓の大地」として見ていた。


だからこそ。


新しい発想が生まれた。


海中で働けばいい。


その一言から全てが始まった。


海洋都市アクアマリナ。


共同研究施設。


巨大な研究棟では魔道具士たちが忙しく動いていた。


中心にいたのは魔道具士部隊の責任者たちである。


机の上には失敗作が山積みになっていた。


水漏れ。


魔力暴走。


呼吸不良。


耐圧不足。


問題は山ほどある。


海は甘くない。


地上とは環境が違う。


高圧。


低温。


視界不良。


魔物。


全てが障害だった。


それでも研究者たちは諦めない。


アルカディア連邦には十六億人以上の教師がいる。


十六億人以上の教導スキル覚醒者がいる。


研究とは一部の天才の仕事ではない。


大勢が知識を持ち寄る。


失敗を共有する。


改善を繰り返す。


その結果。


ついに完成した。


透明な水晶製の仮面。


首元には魔石。


内部には複数の魔法陣。


水属性。


風属性。


光属性。


三種類の魔法が組み込まれている。


魔道具士が説明した。


「水中呼吸装置です」


周囲が静まり返る。


オルカ。


ルミナ。


ガルシャ。


海洋連盟の代表たちも集まっていた。


魔道具士は実演する。


仮面を装着。


巨大な水槽へ入る。


一分。


十分。


三十分。


一時間。


平然としている。


やがて彼は水槽から出た。


「問題ありません」


会場がどよめいた。


風属性魔法が空気を生成する。


水属性魔法が圧力を制御する。


光属性魔法が浄化を行う。


さらに魔力効率も極めて高い。


大量生産も可能だった。


ルミナが目を輝かせる。


「これなら海の底まで行ける」


「行けるどころじゃない」


魔道具士は笑った。


「働けます」


その言葉の意味を理解した者たちは息を呑んだ。


海中作業。


海中建築。


海中調査。


海中採掘。


全てが可能になる。


海が新しい土地になる。


その瞬間だった。


大量生産はすぐ始まった。


アルカディア連邦の工房群。


鍛冶師。


魔道具士。


職人。


教師。


弟子。


数え切れない人々が動く。


ベルン率いる鍛冶師団。


ガイル率いる構造理解部隊。


彼らも協力する。


教育された人材は強い。


一人の天才ではない。


十万人の熟練者。


百万人の職人。


それがアルカディア連邦だった。


一か月後。


数十万個の水中呼吸装置が完成した。


さらに数か月後。


数百万。


数千万。


生産能力は加速度的に増えていく。


そして。


本格的な深海調査が始まった。


先頭を飛ぶのは海洋連盟の案内役。


イルカ族。


シャチ族。


サメ族。


彼らは海を知っている。


後続はアルカディア連邦。


索敵教師ミシェル。


探索部隊。


鉄魔法部隊。


土魔法部隊。


鍛冶師団。


掘削部隊。


研究者。


薬師。


総勢数万人。


深海へ向かう。


海面から数百メートル。


さらに深く。


千メートル。


二千メートル。


普通なら到達できない世界。


そこには未知が広がっていた。


発光する海藻。


巨大な魚群。


深海魔物。


奇妙な鉱石。


誰も見たことがない景色だった。


ミシェルが索敵魔法を展開する。


光。


風。


念視。


遠隔透視。


複数の探索技術が重なる。


その結果。


発見された。


「反応があります」


「かなり大きいです」


地図が表示される。


海底山脈。


その地下。


巨大な鉱脈が眠っていた。


鉄鉱石だった。


しかも。


高純度。


信じられない規模。


ガイルが唸る。


「でかいな」


ベルンも笑った。


「鍛冶師が一生かかっても使い切れんぞ」


調査は続く。


結果はさらに驚異的だった。


鉄。


銅。


銀。


金。


ミスリル。


魔鉄。


高純度魔石。


次々発見される。


深海は宝庫だった。


報告を受けた海洋連盟も驚く。


オルカが呟いた。


「こんな場所があったとは」


ルミナも首を振る。


「知っていても掘れなかった」


その通りだった。


知識だけでは意味がない。


技術。


教育。


人材。


それらが揃って初めて資源は価値になる。


採掘作業が始まった。


鉄魔法部隊が前進する。


数万人規模。


全員が金属属性を扱える。


彼らは海底岩盤を分析する。


亀裂を読む。


構造を理解する。


その後。


金属操作。


土魔法。


重力魔法。


複数属性を組み合わせる。


巨大な鉱床が切り出される。


さらに掘削部隊が続く。


土魔法。


地震魔法。


超能力。


テレキネシス。


サイコキネシス。


全てを活用する。


巨大な鉱石が次々と浮上する。


その場で精製が始まった。


ピュリフィケーション。


浄化。


精製。


不純物除去。


鉄魔法部隊が鉱石を処理する。


巨大な溶鉱炉は不要だった。


魔法がある。


鉄は純化される。


インゴットへ変換される。


巨大な鉄塊が積み上がる。


さらに。


マジックバッグへ収納。


運搬問題も存在しない。


研究者たちは呆然としていた。


採掘。


精製。


輸送。


全てが海底で完結している。


これまでの常識が崩れていく。


数か月後。


海底鉱脈開発は本格稼働した。


鉄インゴット。


魔鉄インゴット。


銅インゴット。


銀インゴット。


山のように積み上がる。


鍛冶産業はさらに拡大する。


農具。


建築資材。


武具。


魔道具。


全てが安価になる。


農業革命も加速する。


紡織産業も発展する。


物流も発展する。


豊かさがさらに広がる。


そして。


アルカディア連邦は約束を守った。


独占しない。


共有する。


オルカたちが視察に訪れた時。


巨大な倉庫が開かれた。


中には無数のインゴット。


鉄。


魔鉄。


銅。


銀。


整然と並んでいる。


ガルシャが驚く。


「これをどうする?」


トミーが笑った。


「分ける」


「半分は海洋連盟の分だ」


一瞬。


静寂が流れた。


海洋連盟の者たちは言葉を失う。


オルカがゆっくり口を開く。


「本当にいいのか」


セリナが頷く。


「共同開発です」


「なら共同の成果です」


ルミナの目が潤む。


海洋連盟は長い歴史を持つ。


しかし。


ここまで公平な同盟国は存在しなかった。


奪う者はいた。


利用する者もいた。


支配しようとする者もいた。


だが。


分け合う者はいなかった。


オルカは深く頭を下げた。


「感謝する」


「この恩は忘れない」


セリナは静かに答えた。


「恩ではありません」


「未来への投資です」


その言葉に。


海洋連盟の代表たちは笑った。


教育が人を育てる。


環境が人を育てる。


かつて盗賊に怯えていた貧困村から始まった思想は。


海の底にまで届いていた。


海底鉱脈。


新たな資源。


新たな産業。


新たな教育。


そして新たな友人。


アルカディア連邦と海洋連盟は。


大陸と海を結ぶ巨大な共同体へと成長し続けていた。


その歩みを止める者は、もはやどこにもいなかった。







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