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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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183話 鉱山

サンナ・マリン王国。


かつて北方の貧しい国家と呼ばれた国は、今や大陸有数の成長国家へ変わり始めていた。


農業革命。


衛生改革。


紡織革命。


輸出産業。


魔布生産。


人々は働き、学び、成長している。


しかし発展が進むほど、新たな課題も生まれる。


鉄が足りない。


銅が足りない。


銀が足りない。


金属不足だった。


巨大温室。


紡織工房。


浴場。


農具。


織機。


運搬車。


建築資材。


発展するほど金属は消費される。


王城会議室。


女王マリンは報告書を見つめていた。


「これほど不足するのですね」


隣では王配アルベルトも眉をひそめる。


報告書には膨大な数字が並んでいた。


鉄需要増加。


銅需要増加。


工具需要増加。


建築資材需要増加。


どれも急激だった。


トミーが地図を広げる。


「輸入だけじゃ追いつかない」


商人としての結論だった。


今までは輸入で何とかしていた。


しかし限界が見え始めている。


発展速度が速すぎるのだ。


その時だった。


セリナが一枚の資料を机へ置いた。


「候補地があります」


全員の視線が集まる。


地図だった。


王国北西部。


山岳地帯。


人のほとんど住まない場所。


「鉱脈確認済みです」


会議室が静かになる。


セリナは続けた。


「鉄鉱石」


「銅鉱石」


「銀鉱石」


「複数確認」


王配アルベルトが目を見開いた。


「本当か」


「はい」


索敵教師たちによる長期調査。


透視。


遠隔透視。


探索魔法。


念話連携。


教育によって育った索敵部隊の成果だった。


会議は即座に動き出す。


鉱山開発。


それが次の国家事業となった。


翌日。


王都では大規模な募集が始まる。


鉱山技師。


鍛冶職人。


建築職人。


輸送職人。


護衛部隊。


教育を受けた人材が次々と集まる。


さらに教師たちも参加した。


鉱山教師。


建築教師。


土属性教師。


金属研究教師。


その時だった。


予想外の変化が起きる。


若い職人の一人が叫んだ。


「これ……見える」


周囲が振り返る。


職人の身体から淡い光が溢れている。


教師が鑑定する。


そして驚いた。


「金属魔法……」


静寂。


誰も聞いたことがなかった。


新属性。


新たな魔法。


金属魔法だった。


職人自身も驚いている。


しかし感覚ははっきりしていた。


鉄が分かる。


銅が分かる。


鉱石の位置が分かる。


不純物も分かる。


まるで金属そのものと会話しているようだった。


教師たちはすぐに理解した。


環境だった。


学習環境。


実践環境。


仲間。


教育。


全てが揃った結果だった。


その後。


覚醒者は急増する。


一人。


十人。


百人。


千人。


鉱山開発へ関わる者たちから次々と現れる。


金属魔法。


鉱脈探査。


金属操作。


精錬補助。


加工補助。


生産補助。


用途は多岐に渡った。


セリナは報告書を読みながら小さく頷く。


「やはり同じですね」


隣のトミーが笑う。


「環境か」


「はい」


「才能不足ではありません」


「教育不足だっただけです」


その言葉を証明するように覚醒者は増え続けた。


数週間後。


鉱山開発が始まる。


山岳地帯。


かつては危険な場所だった。


魔物がいる。


雪崩もある。


輸送も難しい。


だから誰も手を付けなかった。


今は違う。


索敵部隊がいる。


護衛部隊がいる。


建築教師がいる。


教育された人材がいる。


土属性教師たちが大地を整える。


道路ができる。


橋ができる。


宿泊施設ができる。


補給拠点ができる。


さらに金属魔法覚醒者たちが活躍する。


鉱脈発見。


掘削支援。


精錬支援。


作業効率は常識外れだった。


ガイルも現場へやって来ていた。


巨大な戦槌を肩に担ぐ。


鉱石を手に取る。


「良い鉄だな」


隣にいた若い職人が緊張した表情で尋ねる。


「本当に分かるんですか?」


ガイルは豪快に笑った。


「分かる」


「鉄は嘘をつかねぇ」


その言葉に職人たちも笑う。


現場の空気は明るかった。


強制労働ではない。


奴隷労働でもない。


学びながら働く。


育ちながら働く。


それがアルカディア流だった。


数か月後。


成果が出始める。


鉄鉱石。


銅鉱石。


銀鉱石。


大量採掘成功。


王都へ運ばれる。


鍛冶工房が活気づく。


農具生産増加。


織機増産。


建築資材増産。


発展速度がさらに上がる。


女王マリンは報告書を見ながら静かに息を吐いた。


「本当に変わりましたね」


王配アルベルトも頷く。


窓の外を見る。


かつて貧困に苦しんだ国。


寒さに震えた国。


冬を恐れた国。


その姿はもうない。


農業がある。


紡織産業がある。


輸出がある。


鉱山がある。


人材がいる。


そして教育がある。


環境が人を育てる。


育った人が国を変える。


その循環はさらに加速していた。


鉱山都市建設計画も始まっている。


鍛冶職人たちは新たな可能性を語り合う。


金属魔法覚醒者たちは研究を続ける。


教師たちは次世代を育てる。


発展は止まらない。


サンナ・マリン王国は今、北方国家から工業国家への道を歩み始めていた。







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