表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

185/290

167話:商人派遣

セレンスキー王国。


戦争三年目。


国土の東半分は焼かれていた。


村は消えた。


畑は燃えた。


街道は破壊された。


商人は逃げた。


兵士は疲弊した。


そして。


民が飢えていた。


---


アルカディア中央議会。


セレンスキー王国から届いた報告書が机に積まれている。


セリナが口を開いた。


「現在の最大問題は軍事ではありません」


会議室が静まる。


「食料です」


地図が浮かぶ。


赤い印。


飢餓地域。


数百。


数千。


無数。


「戦争で死ぬ人数より」


「飢餓で死ぬ人数の方が多い」


重い沈黙が落ちた。


---


トミーが立ち上がる。


「だったら簡単だ」


狐獣人は笑った。


「飯を送ればいい」


会議室から苦笑が漏れる。


だが誰も否定しない。


実際それが正解だった。


---


現在のアルカディア。


人口九億。


食料充足率千五百パーセント。


世界最大の農業国家。


余剰食料だけで国家が作れる。


トミーは数字を出した。


「小麦」


「米」


「芋」


「豆」


「塩」


「干し肉」


「保存食」


「一年分送れる」


セレンスキー使者が固まった。


一年分。


国家規模の支援だった。


---


マーガレットが頷く。


「食料はある」


「問題は運び方ね」


全員が理解していた。


戦争中なのだ。


地上輸送は危険。


荷馬車は襲われる。


街道は破壊される。


橋も落とされる。


普通の物流は成立しない。


---


その時。


ミシェルが立ち上がった。


鳥人族。


飛行物流部隊総責任者。


「飛行物流を開始します」


空中地図が広がる。


アルカディア。


セレンスキー王国。


巨大な空路。


何千本もの線。


会議室がどよめく。


---


風属性魔法。


飛行スキル。


レビテーション。


転移。


アイテムボックス。


アルカディアが育てた技術。


全て投入。


---


「輸送隊」


「五十万人」


ミシェルが言う。


セレンスキー使者は目を見開いた。


五十万人。


それだけで国家規模。


だがアルカディアでは違う。


教師七億五千万人。


その中の一部に過ぎない。


---


翌日。


空が埋まった。


飛行物流隊。


無数。


本当に無数だった。


風属性魔法。


飛行魔法。


巨大な輸送箱。


アイテムボックス。


全てが空を飛ぶ。


地上の兵士達が見上げる。


誰も言葉を失った。


---


セレンスキー王国。


首都。


広場。


空から食料が降りてくる。


小麦。


米。


芋。


塩。


保存肉。


薬。


毛布。


衣服。


種子。


農具。


次々と。


次々と。


降りてくる。


---


子供達が泣いた。


母親達が泣いた。


老人達が泣いた。


兵士達ですら涙を流した。


久しぶりだった。


未来を見たのは。


---


その日の夜。


セレンスキー国王は報告書を見て呟いた。


「軍隊ではない」


震える声だった。


「商人だ」


「教師だ」


「農民だ」


「治癒師だ」


そして。


窓の外を見た。


まだ飛行物流隊が飛んでいる。


終わらない。


止まらない。


まるで空そのものが街道になったようだった。


---


アルカディアは兵を送らない。


侵略もしない。


占領もしない。


だが。


飢えを殺す。


病を殺す。


貧困を殺す。


そのための物流を送る。


---


戦争中のセレンスキー王国で。


初めて。


食料価格が下がり始めた。


ブーチン帝国が最も恐れた戦いが始まった。


剣ではない。


物流戦争だった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ