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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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16話:魔法学校設立

朝日が貧困村を照らしていた。


かつて盗賊に怯え、


奴隷商に狙われ、


病に苦しみ、


飢えに泣いていた村。


その村は少しずつ変わり始めていた。


畑では作物が育つ。


井戸は増えた。


防壁もできた。


盗賊は村人だけで撃退した。


そして今。


新しい変化が始まろうとしていた。


村の中央。


古い倉庫を改修した建物の前に。


村人たちが集まっていた。


老人。


老女。


男。


女。


子供。


獣人。


人族。


移住者。


全員だ。


ケルナインは静かに建物を見上げた。


看板にはこう書かれている。


『魔法学校』


ざわりと村人たちが騒ぐ。


「学校だってよ」


「俺らが?」


「字も読めねぇのにか?」


「魔法なんて貴族のもんだろ」


「無理だろう」


不安が広がる。


その時。


マイケルが前へ出た。


かつて泣き虫だった少年。


失敗ばかりだった少年。


今は違う。


真っ直ぐ村人を見る。


「皆さん」


「僕も最初は何もできませんでした」


静かに言う。


「魔法なんて無理だと思ってました」


「でも違いました」


「才能が無かったんじゃありません」


「教わってなかっただけです」


村人たちが静かになる。


ケルナインは何も言わない。


後ろで見ているだけだった。


マイケルが続ける。


「今日から学びます」


「老人も」


「子供も」


「男も」


「女も」


「全員です」


その言葉に。


老農夫が手を上げた。


「わし六十五だぞ?」


笑いが起きる。


マイケルも笑った。


「だから何です?」


「魔力は年齢を選びません」


老人は目を丸くした。


周囲も同じだった。


---


授業が始まる。


最初の授業。


魔力操作。


教師はマイケル。


助手はエルナ。


エミリーも前列に座っている。


村の戦士。


盗賊を倒した狼獣人。


それでも真剣な顔だった。


マイケルは黒板代わりの板に絵を書く。


人体。


魔力。


循環。


流れ。


「まず知ってください」


「皆さんの身体には魔力があります」


「ただ流れているだけなんです」


村人たちは食い入るように見る。


「魔力操作とは」


「流れを意識すること」


「魔力循環とは」


「身体全体に巡らせること」


老女が聞く。


「そんなので強くなるのかい?」


「なります」


即答だった。


「筋肉も」


「内臓も」


「回復力も」


「全部変わります」


ざわつく。


---


実技が始まる。


目を閉じる。


呼吸する。


魔力を感じる。


最初は誰もできない。


しかし。


一人。


また一人。


気付き始める。


「なんだこれ」


「身体が温かい」


「流れてる」


「見える気がする」


ケルナインは静かに頷いた。


やはりそうだった。


才能が無いのではない。


教育が無かっただけ。


---


昼。


第二授業。


水属性。


教師はマイケル。


助手はエミリー。


エルナもいる。


エミリーは少し緊張していた。


少し前まで。


自分が教わる側だったからだ。


マイケルが言う。


「水魔法は攻撃だけじゃありません」


板に文字を書く。




熱湯


蒸気


身体強化


筋肉強化


治癒


索敵


探索


村人が驚く。


「そんなにあるのか?」


「あります」


エミリーが前に出た。


拳を握る。


水を纏う。


身体強化。


筋肉強化。


狼獣人の脚力がさらに上がる。


地面が割れた。


歓声。


「おおおおお!」


エミリーは少し照れる。


マイケルが笑った。


「エミリーさん」


「水魔法で怪我を治してください」


「はい」


水が集まる。


淡い光。


ウォーターヒール。


擦り傷が消えた。


村人が息を呑む。


エルナが微笑む。


「すごいです」


エミリーが苦笑した。


「私も教わったばっかりなんだけどね」


マイケルが言う。


「それでいいんです」


「教わった人が」


「次の人を教える」


「それが教育です」


エミリーは少し目を見開いた。


胸の奥が温かい。


自分も。


誰かを育てられる。


その実感だった。


---


午後。


第三授業。


風属性。


教師ミシェル。


鳥人族。


索敵の達人。


「風は飛ぶだけじゃありません」


「見る」


「聞く」


「探す」


「見つける」


「全部できます」


風が広がる。


村全体を包む。


「今」


「東の森に鹿が三頭います」


ざわつく。


数十分後。


狩猟班が戻る。


本当に三頭だった。


歓声。


---


その日。


奇跡が起きた。


老人が火を灯した。


老女が水を出した。


子供が風を飛ばした。


農民が土を盛り上げた。


木こりが身体強化に成功した。


鍛冶職人が火力制御を覚えた。


全員が少しずつ変わる。


---


数日後。


変化はさらに広がる。


農業革命。


土魔法。


水魔法。


風魔法。


畑が広がる。


収穫量が増える。


井戸が増える。


水路も増える。


病人が減る。


飢えが減る。


貧困が減る。


---


さらに。


紡織産業も始まった。


糸を作る。


布を織る。


服を作る。


女性たちが技術を覚える。


老人たちが知恵を教える。


子供たちが手伝う。


仕事が生まれる。


金が生まれる。


村が豊かになる。


---


夕方。


学校の前。


エミリー。


マイケル。


エルナ。


三人が座っていた。


子供たちの笑い声が聞こえる。


エミリーがぽつりと言う。


「不思議だな」


「何がですか?」


マイケルが聞く。


「昔の私は」


「強くなることしか考えてなかった」


静かに続ける。


「でも今は」


「皆が強くなる方が嬉しい」


マイケルが笑う。


エルナも笑う。


「それでいいんです」


エルナの声は優しかった。


「一人が強いより」


「みんなが強い方が幸せですから」


夕日が村を染める。


かつて貧困村だった場所。


病に苦しんだ場所。


盗賊に怯えた場所。


今は違う。


学ぶ者たちの声がある。


育つ者たちの声がある。


未来を信じる声がある。


ケルナインは遠くからその光景を見ていた。


何も言わない。


ただ静かに頷く。


教育は始まった。


魔法学校は動き始めた。


そして村は気付き始める。


人材こそ国家。


環境こそ成長。


教えることこそ未来。


その第一歩が。


今。


確かに刻まれた。







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