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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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15/290

15話 教育開始

訓練場。


朝露が草を濡らしている。


村の外壁には盗賊たちのさらし首が並ぶ。


誰も笑わない。


誰も騒がない。


村人たちは知っている。


あれは見せしめではない。


罪に対する罰だ。


二度と同じ被害者を出さないための抑止力だ。


そんな村で。


新しい教育が始まろうとしていた。


---


「今日は水属性について教えます」


そう言ったのはケルナインではない。


マイケルだった。


---


エミリーが少し驚く。


昔なら考えられなかった。


泣き虫だった少年。


戦えなかった少年。


守られていた少年。


そのマイケルが今は教師役をしている。


---


「私に?」


---


「はい」


---


マイケルは頷いた。


---


「エミリーさんは水属性です」


---


「でもまだ半分も使えてません」


---


エミリーが眉をひそめる。


---


「半分?」


---


「そんなにあるの?」


---


「あります」


---


マイケルは迷いなく答えた。


---


「むしろ始まったばかりです」


---


近くで聞いていたエルナも目を丸くする。


---


マイケルは地面に水球を浮かべた。


---


「まず水弾」


---


水球が飛ぶ。


木板に穴が開く。


---


「穿」


---


さらに細く圧縮。


今度は板を貫通した。


---


エミリーの目が変わる。


---


「威力が違う……」


---


「水を固めるんじゃありません」


---


「圧力です」


---


「水圧を理解すると穿になります」


---


エミリーが真剣に聞いている。


---


マイケルは続けた。


---


「捕」


---


水の縄。


---


「縛」


---


さらに締まる。


---


「拘束」


---


木人形が完全に固定される。


---


「牢」


---


水が檻になる。


---


「檻」


---


完全包囲。


---


エミリーは息を飲んだ。


---


今までの自分は。


水弾しか撃っていなかった。


---


マイケルはさらに続ける。


---


「窒息」


---


水球が木人形の頭を覆う。


---


「相手は呼吸できません」


---


エミリーが静かに頷く。


---


戦いを知るから分かる。


これがどれほど恐ろしいか。


---


だが。


マイケルはそこで止まらなかった。


---


「ここまでは攻撃です」


---


「本当に大事なのはここからです」


---


エミリーが首を傾げる。


---


「まだあるの?」


---


「あります」


---


マイケルは笑った。


---


「体の中には何がありますか?」


---


「血液」


---


「そうです」


---


「血液の大部分は水です」


---


そこでエルナが小さく声を漏らした。


---


「あ……」


---


気付いた。


---


マイケルは頷く。


---


「だから治癒できます」


---


「ウォーターヒールです」


---


淡い水色の光。


---


マイケルの腕の小さな切り傷が塞がっていく。


---


エミリーが驚く。


---


「光属性じゃないの?」


---


「違います」


---


「光属性ヒールもあります」


---


「でも水属性でも回復できます」


---


ここでエルナが前に出る。


---


「すごい……」


---


「怪我した人を助けられますね」


---


マイケルが笑う。


---


「はい」


---


「疲労回復」


---


「筋肉修復」


---


「止血補助」


---


「回復促進」


---


「全部できます」


---


エミリーは黙り込んだ。


---


守る。


---


その意味が変わる。


---


敵を倒すだけじゃない。


---


仲間を生かす。


---


それも守ることだ。


---


マイケルはさらに続ける。


---


「身体強化」


---


水が腕を包む。


---


「アクセル」


---


足元が軽くなる。


---


「マッスル」


---


筋肉が膨張する。


---


エミリーの目が見開かれた。


---


「速い……!」


---


「力も出る……!」


---


マイケルが頷く。


---


「水は体内を巡ります」


---


「だから身体強化に向いています」


---


「筋肉強化にも向いています」


---


ここでエミリーが気付く。


---


「待って」


---


「私だけじゃないわね」


---


「そうです」


---


マイケルが笑う。


---


「前衛全員に掛けられます」


---


ロバート。


ガイル。


未来の戦士たち。


---


全員が強くなる。


---


エミリーの胸が高鳴った。


---


これは自分だけの力ではない。


---


村全体の力になる。


---


そして。


最後。


---


マイケルは空を指差した。


---


「索敵です」


---


「空気中にも水があります」


---


「霧」


---


「湿度」


---


「汗」


---


「呼吸」


---


「全部水です」


---


エミリーの耳がぴくりと動く。


---


狼獣人。


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優れた聴覚。


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優れた嗅覚。


---


そこへ。


水属性索敵。


---


理解した瞬間。


---


エミリーの世界が広がった。


---


敵の位置。


---


人数。


---


動き。


---


気配。


---


全部見える。


---


「私……」


---


「こんなこと考えたことなかった」


---


その言葉に。


エルナが微笑む。


---


「エミリーさんなら出来ます」


---


「ずっと村を守ってくれましたから」


---


エミリーは少し照れた。


---


昔なら否定していた。


---


今は違う。


---


村が変わった。


---


マイケルが変わった。


---


エルナが変わった。


---


そして自分も変わっている。


---


遠く。


訓練場の外。


---


ケルナインはそれを見ていた。


---


何も言わない。


---


教える必要がないからだ。


---


マイケルが教えている。


---


エルナが支えている。


---


エミリーが学んでいる。


---


教育は連鎖する。


---


それこそが。


貧困村を国家へ変える力だった。











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