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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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155/290

140話 1000万人保護

会議室は静まり返っていた。


巨大な円卓。


そこには連合圏の中枢が集まっている。


セリナ。


ロバート。


トミー。


マーガレット。


エミリー。


ソフィア。


カタリナ。


エレノア。


そして各村の代表達。


壁一面には数字が並んでいた。


人口。


農地。


食料。


教師数。


教導スキル覚醒者数。


生産量。


輸送能力。


治療能力。


全てが記録されている。


誰もが数字を見ていた。


そして。


セリナが口を開く。


「結論から言います」


冷静な声だった。


「今の連合圏は」


一枚の資料を置く。


「一千万人保護しても問題ありません」


・・・


沈黙。


・・・


誰も反応できなかった。


トミーが目をぱちぱちさせる。


マーガレットも固まる。


ロバートですら言葉を失った。


・・・


「待て」


ロバートが言う。


「今なんて言った」


・・・


セリナは表情を変えない。


「一千万人です」


・・・


再び沈黙。


・・・


トミーが頭を抱えた。


「俺の耳がおかしくなったかと思った」


・・・


マーガレットも苦笑する。


「私もよ」


・・・


セリナは資料を広げる。


「人口九十五万人」


「教師二十万人以上」


「教導スキル三十万人以上」


「食料充足率一〇〇〇%以上」


「輸送能力拡大中」


「住宅建設速度上昇中」


「治療体制拡張中」


・・・


数字だけを見るなら。


本当に可能だった。


・・・


セリナは続ける。


「もちろん一度に一千万人ではありません」


「段階的保護です」


・・・


地図が広げられる。


キンペイ帝国。


巨大だった。


・・・


赤い印。


奴隷収容所。


・・・


百以上。


・・・


さらに調査中の施設。


数百。


・・・


会議室が重くなる。


・・・


ロバートが腕を組む。


「つまり」


・・・


「全部潰す」


・・・


セリナが頷いた。


「はい」


・・・


「そして保護します」


・・・


エレノアが静かに言う。


「救えるなら救う」


・・・


「それが連合圏です」


・・・


誰も反論しない。


・・・


ここにいる者達は知っている。


・・・


奴隷収容所。


・・・


そこにいる人々は。


罪人ではない。


・・・


農民。


・・・


職人。


・・・


商人。


・・・


子供。


・・・


老人。


・・・


教師。


・・・


ただ運悪く捕まった人達。


・・・


だから。


救う。


・・・


それだけだった。


・・・


ロバートが椅子にもたれた。


「笑い話じゃねぇな」


・・・


将軍達が苦笑する。


・・・


皆笑っている。


・・・


だが。


本当に笑い事ではない。


・・・


相手は大帝国。


・・・


まだ数千万単位の人口を抱えている。


・・・


収容所も無数にある。


・・・


しかし。


今の連合圏には。


それを救う力がある。


・・・


ロバートが立ち上がった。


・・・


「作戦会議だ」


・・・


全員の表情が変わる。


・・・


戦士の顔。


・・・


指導者の顔。


・・・


国家運営者の顔。


・・・


ロバートは地図を見る。


・・・


「一気に進むな」


・・・


「十拠点ごとだ」


・・・


全員が頷く。


・・・


「まず十拠点」


・・・


「実情確認」


・・・


「保護人数確認」


・・・


「輸送能力確認」


・・・


「治療能力確認」


・・・


「その後次の十拠点」


・・・


合理的だった。


・・・


勢いで突撃しない。


・・・


救出が目的。


・・・


占領が目的ではない。


・・・


だからこそ。


慎重に。


・・・


確実に。


・・・


進める。


・・・


セリナも頷く。


「賛成です」


・・・


トミーが計算書を広げる。


・・・


「物流は対応可能」


・・・


「食料も問題ない」


・・・


「住宅建設も可能」


・・・


マーガレットも言う。


・・・


「商業圏も拡張できる」


・・・


「雇用も生み出せる」


・・・


エレノアも続く。


・・・


「学校を増設します」


・・・


「教師は十分います」


・・・


マイケルも言う。


・・・


「治療院も増設します」


・・・


「薬師も育っています」


・・・


エルナも微笑む。


・・・


「怪我人は任せてください」


・・・


聖女。


・・・


その言葉だけで。


安心する者が多かった。


・・・


ロバートは全員を見る。


・・・


そして笑った。


・・・


「決まりだな」


・・・


「キンペイ帝国を叩く」


・・・


「そして助ける」


・・・


会議室の空気が変わる。


・・・


戦争ではない。


・・・


救出作戦。


・・・


史上最大規模の。


・・・


その時。


・・・


勢いよく手が上がった。


・・・


ソフィア。


・・・


「はい!」


・・・


ロバートが笑う。


・・・


「なんだ」


・・・


「先鋒行きます!」


・・・


会議室が笑いに包まれる。


・・・


続いて。


・・・


カタリナも立ち上がる。


・・・


「私も行く」


・・・


「奴隷商を見たら殴る」


・・・


「収容所を見たら壊す」


・・・


非常に分かりやすかった。


・・・


エミリーが額を押さえる。


・・・


「少しは落ち着いて」


・・・


ソフィアは笑う。


・・・


「無理!」


・・・


カタリナも頷く。


・・・


「無理」


・・・


会議室が再び笑う。


・・・


だが。


その笑いの奥にあるものを。


全員知っていた。


・・・


怒りだ。


・・・


収容所で苦しむ人々。


・・・


奪われた人生。


・・・


壊された家族。


・・・


失われた故郷。


・・・


それを知っているから。


・・・


誰も止まらない。


・・・


ロバートが言う。


・・・


「救えるだけ救う」


・・・


「それが連合圏だ」


・・・


全員が頷いた。


・・・


ケルナインはいない。


・・・


いつものように。


・・・


彼は会議に口を出さない。


・・・


決めるのは彼らだ。


・・・


自律。


・・・


それが連合圏の理念。


・・・


だからこそ。


今。


この場で。


・・・


全員が自分で考え。


・・・


自分で決めている。


・・・


窓の外。


・・・


巨大な都市。


・・・


九十五万人の灯。


・・・


学校。


・・・


工房。


・・・


農地。


・・・


治療院。


・・・


物流倉庫。


・・・


人が生きている。


・・・


学んでいる。


・・・


育っている。


・・・


環境が人を育てる。


・・・


その結果。


・・・


かつて盗賊に怯えた貧困村は。


・・・


一千万人を救える国家へと成長していた。


・・・


そして。


・・・


連合圏の次なる目標は決まった。


・・・


救出。


・・・


保護。


・・・


教育。


・・・


自立。


・・・


キンペイ帝国に残された人々を。


・・・


一人でも多く未来へ連れていくために。


・・・


連合圏は進む。


・・・


止まる理由など。


もうどこにもなかった。







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