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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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136話 奴隷収容所解放

国境突破から七日後。


連合圏軍は止まらなかった。


進軍。


解放。


保護。


回収。


そして前進。


それだけを繰り返していた。


キンペイ帝国の国境地帯は既に崩壊している。


補給網は消えた。


地方軍閥は離反した。


徴兵された農民兵は逃亡した。


残っているのは奴隷商人と私兵と利権屋だけだった。


そして。


連合圏の索敵網が新たな事実を発見する。


・・・


空を飛ぶミシェルが念話を送る。


「発見しました。」


「大型施設です。」


ロバートが立ち止まる。


「敵拠点か?」


「違います。」


ミシェルの声が低くなる。


「奴隷収容所です。」


沈黙。


全員の表情が変わった。


・・・


数分後。


セリナの前には巨大な地図が広げられていた。


クレヤボヤンス。


リモート・ビューイング。


索敵魔法。


超能力。


全てを組み合わせた情報が集まっている。


セリナは静かに言った。


「確認。」


「収容人数約三万人。」


「獣人。」


「人族。」


「エルフ。」


「ドワーフ。」


「魔族。」


「混在。」


「食料不足。」


「病気蔓延。」


「死亡者多数。」


空気が重くなる。


・・・


エミリーが拳を握った。


狼獣人の耳が震える。


「同胞もいる。」


ソフィアの表情も険しい。


カタリナも珍しく笑っていなかった。


ロバートは静かに頷く。


「救出する。」


それだけだった。


・・・


作戦開始。


連合圏軍は三方向から接近した。


索敵部隊。


戦闘部隊。


保護部隊。


役割は明確。


混乱は無い。


全員が教育されている。


・・・


収容所。


高い壁。


見張り塔。


鉄格子。


腐臭。


悲鳴。


絶望。


そこにいた者達は人間として扱われていなかった。


商品だった。


数字だった。


資源だった。


・・・


見張りの兵士が空を見る。


何かが飛んでいる。


鳥。


違う。


ハーピーだった。


ミシェル。


次の瞬間。


光が走る。


光弾。


見張り塔が崩れる。


警鐘が鳴る。


「敵襲!」


兵士達が叫ぶ。


・・・


同時。


大地が揺れた。


ティグリス率いる土属性部隊。


巨大な土壁が収容所を囲む。


逃げ道を塞ぐ。


奴隷達ではない。


奴隷商人達の逃げ道だった。


・・・


ガイルが前へ出る。


「ぶち抜くぞ。」


数百人の土属性部隊が魔法を放つ。


ストーンランス。


ソイルバレット。


石槍が門を貫く。


轟音。


鉄門が吹き飛ぶ。


・・・


「突入!」


ロバートの号令。


連合圏軍が流れ込む。


戦いは短かった。


敵に訓練は無い。


士気も無い。


補給も無い。


連合圏軍との差は絶望的だった。


・・・


影が伸びる。


ロバートの闇属性。


シャドウバインド。


逃げる奴隷商人達が拘束される。


風属性部隊が武器を吹き飛ばす。


重力属性部隊が敵を地面へ押し付ける。


雷属性部隊が武器庫を破壊する。


全てが連携していた。


教育の成果だった。


・・・


一時間後。


戦闘終了。


死傷者。


ほぼゼロ。


・・・


収容所の門が開く。


中から現れた人々は痩せていた。


服も無い。


病気もある。


栄養失調もある。


目に光が無い。


・・・


マイケルが前へ出る。


「大丈夫です。」


優しく言う。


「もう終わりました。」


誰も信じない。


何度も騙されたからだ。


・・・


すると。


エルナが膝をついた。


小さな少女へ毛布を掛ける。


「寒かったね。」


それだけ。


少女の目から涙が落ちた。


・・・


一人。


また一人。


泣き始める。


・・・


助かった。


本当に助かった。


その事実を理解した瞬間だった。


・・・


保護開始。


アイテムボックス持ち達が動く。


数千人。


全員が訓練済み。


保護専用空間を展開する。


生物保護型アイテムボックス。


安全。


清潔。


食事完備。


寝具完備。


医療完備。


・・・


収容された者達が驚く。


「暖かい・・・」


「ベッドだ・・・」


「食べ物だ・・・」


「水がある・・・」


当たり前だったもの。


それを失っていた。


・・・


治療班も動く。


マイケル。


エルナ。


リーン。


数万人の治療師。


ヒーリング。


ピュリフィケーション。


光属性。


浄化。


治療。


病が消える。


傷が消える。


熱が下がる。


・・・


子供達が眠る。


安心して眠る。


それだけで治療師達は涙ぐんでいた。


・・・


そして。


セリナが新たな報告を持ってくる。


「終わってません。」


ロバートが見る。


地図だった。


大量の印。


赤い点。


「何だこれは。」


「奴隷収容所です。」


静かな声だった。


「百二十八か所確認。」


誰も言葉を失う。


・・・


三万人。


一か所で三万人。


百二十八か所。


想像もできない数だった。


・・・


ロバートは地図を見る。


怒りはあった。


しかし冷静だった。


感情だけでは救えない。


教育で学んできた。


「一つずつ潰す。」


短い言葉。


全員が頷く。


・・・


翌日。


第二収容所解放。


さらに翌日。


第三収容所。


第四収容所。


第五収容所。


・・・


連合圏軍は軍隊というより清掃部隊になっていた。


敵拠点を見つける。


制圧する。


保護する。


回収する。


終わり。


・・・


素材も残さない。


鉄。


銅。


銀。


武器。


防具。


食料。


工具。


全て回収。


・・・


アイテムボックス持ち達が淡々と収納する。


敵が築いた資源は全て連合圏へ送られる。


・・・


トミーは報告書を見て笑う。


「何も残ってねぇな。」


隣のマーガレットも苦笑した。


「本当に清掃ね。」


「草一本残らないわ。」


・・・


回収された鉄は再利用される。


農具になる。


織機になる。


建材になる。


学校になる。


病院になる。


・・・


キンペイ帝国は人を奴隷にした。


連合圏は人材へ変える。


差はそこだった。


・・・


解放された者達の中には職人もいた。


鍛冶師。


農民。


織工。


教師。


薬師。


大工。


商人。


兵士。


誰もが才能を持っていた。


ただ環境が無かっただけ。


・・・


ケルナインは遠くから報告書を読む。


何も言わない。


相変わらず前には出ない。


ただ数字を見る。


解放人数。


治療人数。


移住希望者。


教師志望者。


・・・


そして静かに微笑んだ。


環境が人を育てる。


その証明が目の前にあった。


奴隷だった者達が。


教師を目指し始めている。


兵士だった者達が。


農業を学び始めている。


絶望していた子供達が。


学校へ行きたいと言い始めている。


・・・


教育は伝染する。


希望も伝染する。


それが連合圏だった。


・・・


ミシェルから新たな念話が届く。


「発見。」


「また奴隷収容所です。」


ロバートが立ち上がる。


エミリーも。


ソフィアも。


カタリナも。


全員が武器を取る。


・・・


終わっていない。


まだ百以上ある。


ならば百回救うだけだ。


連合圏軍は再び前進した。


奴隷商人達が築いた地獄を一つずつ消しながら。


解放された人々を連れて。


さらに奥へ。


さらに前へ。


教育国家の軍勢は、救出と再建を繰り返しながらキンペイ帝国の心臓部へ向かっていた。







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