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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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135話 国境突破

連合圏は変わり続けていた。


昨日の常識が今日には古い。


今日の常識が明日には消える。


そんな異常な速度で進化していた。


原因は単純だった。


教育である。


教導スキル保持者十万人。


教師二十万人。


人口三十三万人。


世界史上最大の教育国家。


人材を育てる仕組みが完成していた。


かつて貧困村だった土地は、今や世界最大級の人材育成国家へ変貌していた。


そして。


その変化は新たな段階へ入る。


魔法属性の進化である。


・・・


中央研究都市。


アリアが報告書を読みながら眉を上げた。


「またですか。」


研究員が頷く。


「はい。」


「確認済みです。」


机の上には大量の報告書。


新規覚醒者。


新規属性。


新規能力。


数字が並んでいる。


「金属属性。」


「重力属性。」


「雷属性。」


「地震属性。」


研究員の声が震えていた。


百年以上研究してきた学者達ですら理解できない速度だった。


アリアは小さく笑う。


「理解できますよ。」


「環境です。」


「才能は元からあった。」


「育て方が存在しなかっただけ。」


・・・


鉱山都市。


朝から歓声が響いていた。


ドワーフ達が採掘を続けている。


ガイルが巨大な鉄鉱脈を見つめる。


「始めるぞ。」


若い鉱夫達が頷いた。


彼らは新たな属性に覚醒していた。


金属属性。


極めて珍しい能力。


鉄鉱石へ触れる。


魔力を流す。


すると。


鉄鉱石が変形する。


不純物が剥がれる。


鉱石が収束する。


そして。


巨大な鉄のインゴットが形成された。


「成功だ!」


歓声が上がる。


さらに別の職人が進み出る。


光属性。


ピュリフィケーション。


浄化魔法。


純化された鉄塊へ魔法を流す。


白い光が広がった。


不純物が完全に消える。


純度百パーセント。


理論上最高品質。


職人達が息を呑む。


「凄ぇ・・・」


「ありえねぇ・・・」


ガイルは豪快に笑った。


「教育国家なめんなよ。」


・・・


鉄だけではない。


銅。


銀。


錫。


ミスリル。


オリハルコン。


アダマンタイト。


全てで同じ現象が起きていた。


大量生産。


高品質化。


低コスト化。


産業革命だった。


・・・


その報告を聞いたトミーは椅子から転げ落ちた。


「ははははは!」


「やべぇ!」


「やべぇぞこれ!」


隣ではマーガレットも笑い転げている。


「利益計算が追いつかないわ!」


「何よこれ!」


二人は夫婦になっていた。


商売人同士。


だから理解していた。


この価値を。


鉄の価値が変わる。


武器が変わる。


防具が変わる。


農具が変わる。


国家が変わる。


「終わったわね。」


マーガレットが笑う。


「何がだ?」


トミーが聞く。


「他国の商売よ。」


二人は顔を見合わせた。


そして再び笑った。


・・・


紡織産業も進化していた。


リーザ。


リーブ。


リーゼ。


エルフ三姉妹が新型織機を動かしている。


金属属性の技術者達が生み出した超高精度部品。


耐久性。


回転効率。


加工精度。


全てが向上した。


布の生産量はさらに倍増する。


連合圏の服は世界へ流れていた。


・・・


農業革命も止まらない。


ティグリスが農地を歩く。


数十万ヘクタール。


広大な農地。


土属性。


水属性。


光属性。


全てが組み合わされている。


病気は浄化される。


害虫は索敵部隊が発見する。


水不足は起きない。


収穫量はさらに上がる。


食料充足率六百パーセント。


飢餓という言葉が消えつつあった。


・・・


そして。


最も危険な進化が始まる。


重力属性。


・・・


軍事訓練場。


若い兵士が困惑していた。


目の前の岩。


数百キロはある。


それが持ち上がった。


レビテーションではない。


重力制御だった。


「軽く・・・なった?」


教師が頷く。


「そうです。」


「重力属性。」


さらに兵士が魔力を流す。


今度は逆。


岩が地面へ沈み込む。


轟音。


地面が砕けた。


「重く・・・なった。」


教師達が記録する。


戦術革命だった。


・・・


さらに。


雷属性。


青白い閃光が空を裂く。


轟音。


雷撃。


長距離攻撃。


高貫通。


高威力。


戦場が変わる。


・・・


そして。


最も恐ろしい者達が現れる。


地震属性。


アースクエイク。


・・・


演習場。


数万人の兵士が避難していた。


安全確認。


結界展開。


避難完了。


その後。


一人の青年が前へ出る。


緊張している。


教師が頷く。


「やってみなさい。」


青年が地面へ手を置いた。


魔力循環。


魔力操作。


集中。


そして。


発動。


アースクエイク。


次の瞬間。


大地が吠えた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!


地面が揺れる。


山が震える。


森が揺れる。


地割れが走る。


一キロ。


二キロ。


五キロ。


十キロ。


地面が裂けた。


兵士達が唖然とする。


研究者達も沈黙する。


数分後。


揺れが止まった。


静寂。


「・・・災害だな。」


ガイルが呟く。


誰も否定できなかった。


・・・


アリアが報告書を閉じる。


「戦略兵器です。」


「国家単位の能力です。」


研究者達が頷いた。


教育が進みすぎた。


人材が育ちすぎた。


その結果。


国家そのものが進化していた。


・・・


同じ頃。


国境。


連合圏軍十六万。


ロバート。


エミリー。


ソフィア。


カタリナ。


リーヴ。


ティグリス。


全軍が集結していた。


目の前にはキンペイ帝国国境防衛線。


かつては巨大な壁だった。


しかし。


今は違う。


補給は崩壊。


内乱継続。


地方離反。


兵士逃亡。


国家は崩壊寸前。


ロバートが前を見る。


「始めるぞ。」


静かな声だった。


・・・


索敵部隊。


ミシェルが空を飛ぶ。


「敵配置確認。」


「全軍へ送信。」


念話が広がる。


八千人の索敵網。


敵は隠れられない。


・・・


セリナが地図を見る。


「第三防衛線は空白。」


「第五補給基地は放棄。」


「右翼軍閥は離反済み。」


全て把握済みだった。


・・・


ロバートが頷く。


「進軍。」


それだけ。


・・・


十六万の軍勢が動いた。


統率。


秩序。


補給。


教育。


全てが整っている。


混乱は無い。


恐怖も無い。


・・・


キンペイ帝国兵達が震える。


「来た・・・」


「連合圏だ・・・」


補給は無い。


食料も無い。


士気も無い。


一方。


連合圏兵士達は十分な食料を持つ。


魔法もある。


超能力もある。


教育もある。


仲間もいる。


・・・


戦う前から勝負は決まっていた。


・・・


夕暮れ。


ついに先頭部隊が国境線を越える。


誰も歓声を上げない。


誰も油断しない。


静かに進む。


ただ前へ。


・・・


ロバートが呟いた。


「ここからだ。」


エミリーが頷く。


ソフィアが斧槍を担ぐ。


カタリナが笑う。


セリナは地図を閉じる。


ケルナインは遠くからその光景を見ていた。


何も言わない。


指示もしない。


もう必要ない。


人材は育った。


国家は育った。


貧困村から始まった物語は。


ついに国境を越えた。


反攻は始まったばかりだった。







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