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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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124話 魔物資源革命と辺境陥落

冬が終わろうとしていた。


アルナ連合の倉庫は満杯だった。


十五万体。


魔物十五万体から得られた資源は想像を超えていた。


魔石。


皮。


骨。


牙。


角。


肉。


毒袋。


全てが商品になった。


全てが利益になった。


全てが未来になった。


そして。


辺境諸国は気付いてしまった。


アルナ連合と戦う意味が無いことに。


戦えば負ける。


取引すれば豊かになる。


答えは単純だった。


最初に陥落したのは剣ではない。


市場だった。


「またか。」


トミーは報告書を閉じた。


隣ではマーガレット・ヴァレリアが笑っている。


三十三歳。


燃えるような赤髪。


長身。


成熟した美貌。


巨大商社ヴァレリアの総代表。


若い頃から数え切れないほどの貴族や商人に求婚された。


だが。


誰一人として相手にならなかった。


金だけ。


権力だけ。


家柄だけ。


そんな男ばかりだった。


トミーは違った。


流民だった。


狐獣人だった。


家柄など無い。


財産も無かった。


だが。


努力した。


学んだ。


失敗した。


何度も失敗した。


それでも立ち上がった。


気付けば。


巨大経済圏を動かす男になっていた。


マーガレットが資料を見る。


「また辺境伯領が参加申請。」


「これで何領地目?」


トミーは肩を竦めた。


「二十五。」


「半年で二十五です。」


二人は顔を見合わせる。


苦笑した。


軍隊は動いていない。


戦争もしていない。


だが辺境は陥落していた。


物流で。


教育で。


農業で。


医療で。


生活で。


人々が選んだのだ。


どちらが豊かな未来を持つのかを。


剣ではなく。


現実で。


数字で。


腹の満足で。


子供の笑顔で。


辺境は降伏した。


誰に強制されたわけでもなく。


自ら。


豊かさを選んだ。


その日の夜。


トミーは珍しく緊張していた。


市場交渉でもない。


利益計算でもない。


国家交渉でもない。


マーガレットが笑う。


「そんな顔初めて見たわ。」


「怖いんです。」


「何が?」


「断られるのが。」


沈黙。


数秒後。


マーガレットは吹き出した。


腹を抱えて笑った。


そして。


笑い終わると。


優しく言った。


「二十年遅い。」


トミーが固まる。


「え?」


「とっくに待ってた。」


赤い髪が夜風に揺れる。


かつて貧しかった狐獣人。


かつて全てを背負って戦った商社の女王。


二人は笑った。


年齢差などどうでもいい。


種族差などどうでもいい。


積み上げた年月の方が重い。


翌日。


結婚発表が行われた。


歓声が上がった。


アルナ。


ベルグ。


ノース。


ハイランド。


リーフ。


ストーン。


六つの村。


いや。


今や国家規模となった共同体全体が祝福した。


ケルナインは少し離れた場所でそれを見ていた。


何も言わない。


いつものように。


静かに笑うだけだった。


人を育てる。


環境を作る。


その結果が今ここにある。


辺境は陥落した。


剣によってではない。


人材によって。


教育によって。


豊かさによって。


そして新たな時代が始まろうとしていた。







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