表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/290

123.7話 後編「資源革命」

戦争が終わった。


しかし。


本当の仕事はここからだった。


十五万体。


魔物十五万体。


普通の国家なら災厄。


普通の国家なら処理できない。


普通の国家なら腐敗し、疫病が発生し、農地を汚染し、周辺地域を死の土地へ変える。


だが。


アルナ村連合とヴァレリア商社にとって。


それは資源だった。


巨大な資源だった。


朝。


中央会議場。


マーガレット・ヴァレリアが長机の前に立つ。


各村代表。


各産業代表。


教師。


職人。


商社員。


全員が集まっていた。


壁には巨大な数字が並んでいる。


魔石。


皮。


骨。


肉。


内臓。


牙。


角。


毒袋。


全てが数値化されていた。


トミーが資料を配る。


「利益予測です。」


会場が静かになる。


トミーは笑った。


昔なら想像もできなかった。


狐獣人の元流民。


その男が今や巨大経済圏の物流責任者だった。


「魔石売却予測。」


「武器素材売却予測。」


「魔道具素材売却予測。」


「保存食売却予測。」


「肥料販売予測。」


数字が並ぶ。


会場がざわついた。


誰もが理解した。


桁がおかしい。


エレノア侯爵ですら驚いていた。


「国家予算級ですか……。」


トミーは頷いた。


「ええ。」


「国家予算どころではありません。」


「複数国家分です。」


静まり返る。


十五万体。


それほどの価値だった。


マーガレットは言う。


「使い切るわよ。」


「無駄は一切なし。」


「全部使う。」


即座に各部署が動き始めた。


最初に動いたのは紡織部門だった。


リーザ。


リーブ。


リーゼ。


三人のエルフ職人。


彼女たちの工房では巨大な皮の山が積まれている。


耐水皮。


耐熱皮。


防刃皮。


魔力伝導皮。


全て品質別に分類済み。


リーザが笑う。


「冬服三年分。」


リーブが頷く。


「毛布五年分。」


リーゼも資料を見る。


「輸出用高級品も大量生産できます。」


紡織工場が稼働する。


魔導織機。


自動裁断。


自動縫製。


全て商社技師団が改良した設備だった。


かつては数人しかいなかった職人。


今では数千人。


さらに教師がいる。


教導スキル覚醒者もいる。


新人育成速度が異常だった。


環境が人を育てる。


その結果だった。


次に動いたのは農業部門。


大量の骨。


大量の血液。


大量の内臓。


普通なら廃棄物。


しかしここでは違う。


資源。


ガイルが骨の山を見て笑った。


「砕け。」


ドワーフたちが魔導粉砕機を動かす。


轟音。


骨が砕ける。


粉になる。


骨粉肥料。


大量生産。


さらに血液。


発酵。


熟成。


液体肥料。


内臓も処理される。


腐敗ではない。


管理された分解。


全て計画済み。


農業教師たちが計算する。


「来年の収穫予測。」


「さらに二割増。」


「三割も可能。」


周囲が頷く。


食料充足率五百%。


それでも増える。


理由は単純。


人材が増えるから。


技術が増えるから。


教育が続くから。


農業革命は終わっていなかった。


まだ成長している。


次は畜産部門。


大量の肉。


巨大な魔物肉。


全てが食卓へ向かうわけではない。


飼料加工。


保存加工。


乾燥。


燻製。


塩漬け。


発酵。


グランとバルドが中心になっていた。


「塩。」


「香辛料。」


「発酵。」


次々に工程が進む。


巨大な倉庫が埋まっていく。


保存食。


戦闘食。


遠征食。


輸出品。


数年分。


備蓄はさらに増えた。


グランが笑う。


「飢える未来が見えん。」


周囲も笑う。


数年前。


飢餓に苦しんでいた村だった。


今では食料を輸出している。


それも国家規模で。


午後。


アリアの研究所。


大量の魔石が並ぶ。


巨大な保管庫。


数万個。


数十万個。


アリアは魔石を観察していた。


商社技師団が資料を持ってくる。


「解析完了しました。」


「品質は予想以上です。」


アリアは笑う。


「当然。」


「教育された戦士が倒した魔物だから。」


「雑な狩りをしていない。」


高品質。


高純度。


高効率。


全てが揃っていた。


技師たちは新しい設計図を広げる。


魔導農具。


魔導冷蔵庫。


魔導照明。


魔導通信機。


マジックバッグ。


転移設備。


新型魔導織機。


新型精製装置。


新型粉砕機。


全て魔石が必要だった。


そして。


今は余るほどある。


アリアが呟く。


「技術革新の時間ね。」


周囲の研究者が笑った。


百年以上研究してきた魔女。


それでも興奮していた。


夕方。


利益計算会議。


トミー。


マーガレット。


セリナ。


エレノア。


各村代表。


巨大な表が広げられる。


総利益。


生産予測。


投資計画。


未来予測。


全て数字で見える。


セリナが言う。


「利益独占はしません。」


誰も驚かない。


それがこの共同体だった。


支配ではない。


育成。


自立。


循環。


トミーが頷く。


「各村へ分配。」


「生産能力に応じて。」


「教育実績に応じて。」


「防衛貢献に応じて。」


「技術提供に応じて。」


公平。


透明。


誰でも見られる。


誰でも確認できる。


不正が入り込む余地はない。


数字は公開される。


マーガレットが笑った。


「商売ってね。」


「信頼が一番高い商品なのよ。」


皆が頷く。


アルナ村。


ベルグ村。


ノース村。


ハイランド村。


リーフ村。


ストーン村。


全てへ利益が流れる。


道路整備。


学校建設。


病院拡張。


農地拡張。


研究所建設。


防衛施設建設。


全部できる。


そして夜。


各村へ報告が届いた。


人々は驚く。


歓声が上がる。


泣く者もいた。


昔を知っているから。


貧困。


病。


飢餓。


略奪。


絶望。


それを知っているから。


だから今が分かる。


資源革命。


十五万体の魔物。


それは終わった戦争の残骸ではない。


未来だった。


教育の成果だった。


環境が人を育てる。


育った人が資源を活かす。


資源がさらに環境を良くする。


良い環境がまた人を育てる。


循環。


それこそが強さだった。


高台の上。


静かな夜風。


遠くに灯りが見える。


学校の灯り。


工房の灯り。


研究所の灯り。


病院の灯り。


人が学ぶ灯り。


人が働く灯り。


人が育つ灯り。


十五万の魔物は消えた。


残ったのは。


十五万の資源。


そして。


さらに豊かになる未来だった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ