121話 敵国侵攻
朝。
索敵教師ミシェル率いる索敵部隊が異変を察知した。
空を飛ぶ鳥人族。
風魔法による広域探索。
テレパシー。
クレヤボヤンス。
リモート・ビューイング。
数千名の索敵手段が同時に動く。
その結果。
一つの結論へ到達した。
キンペイ帝国。
侵攻。
兵力約十二万。
騎兵。
歩兵。
魔法兵。
奴隷兵。
傭兵。
さらに魔物部隊まで確認された。
ミシェルは即座に念話を飛ばした。
「全村へ通達。」
「敵軍確認。」
「戦時体制へ移行。」
数秒後。
六つの村へ情報が共有された。
誰も慌てない。
もう昔の貧困村ではない。
教育された民衆だった。
・・・
アルナ村。
エミリーが立ち上がる。
狼獣人の耳が動く。
「総員配置。」
「訓練通りやるよ。」
かつては村を守るだけで精一杯だった少女。
今では八千人規模の戦力を束ねていた。
副隊長リーヴが笑う。
「やっと来たか。」
「待ちくたびれたよ。」
周囲の兵士達も笑う。
恐怖は無い。
教育がある。
仲間がいる。
実力がある。
・・・
ロバートが本部へ入る。
巨大な地図。
各村の位置。
街道。
河川。
補給線。
全てが整理されている。
将軍スキル。
統率スキル。
民衆安定。
現場教育。
未熟者育成。
数万人を動かす力。
ロバートが命令する。
「第一軍。」
「アルナ防衛線。」
「第二軍。」
「ベルグ方面。」
「第三軍。」
「遊撃待機。」
全員が即座に動く。
混乱は無い。
・・・
セリナは別の場所にいた。
情報部。
机の上に並ぶ報告書。
敵将。
補給拠点。
兵站。
食料。
武器。
全部見えている。
セリナは冷静だった。
「敵は数だけ。」
「補給が脆弱。」
トミーが笑う。
「じゃあ勝ちだな。」
狐獣人の商才。
流通。
原価。
在庫。
相場。
全てを把握する男。
「補給線切る。」
「兵糧攻めだ。」
セリナが頷いた。
「お願い。」
・・・
その夜。
ガイル率いる特殊部隊が動いた。
ドワーフ達。
土魔法。
石魔法。
構造理解。
敵補給倉庫。
橋。
街道。
全て把握済み。
「壊すぞ。」
巨大な石壁が持ち上がる。
橋が崩落する。
街道が寸断される。
補給車列が動けなくなった。
ガイルが笑う。
「戦争は兵隊の数じゃねぇ。」
「飯だ。」
・・・
翌日。
キンペイ帝国軍。
前進停止。
食料不足。
水不足。
混乱開始。
そこへ。
リリー率いる狙撃部隊。
風魔法。
長弓。
超長距離射撃。
無数の矢。
敵指揮官だけが倒れる。
指揮系統崩壊。
さらに。
ミシェルの索敵。
敵の位置が丸見えだった。
逃げ場が無い。
隠れられない。
・・・
正面戦線。
ティグリスが咆哮する。
虎獣人。
巨大な盾。
アースウォール。
ソイルバレット。
「来い!」
敵兵が突撃する。
土壁が立つ。
石壁が立つ。
何重にも。
敵は突破できない。
兵士達が笑う。
「硬すぎる!」
「抜けねぇ!」
ティグリスが豪快に笑った。
「訓練不足だ!」
・・・
そこへ。
ソフィア。
鬼人族。
巨大なハルバート。
身体強化。
筋肉強化。
土煙が上がる。
敵陣へ突入。
一撃。
二撃。
三撃。
敵兵が吹き飛ぶ。
後方から支援魔法。
光弾。
風刃。
水刃。
全て連携済み。
個人戦ではない。
組織戦だった。
・・・
さらに。
カタリナ。
巨大なグレイブ。
長身のエルフ。
敵将へ一直線。
敵護衛部隊が立ち塞がる。
カタリナは笑う。
「邪魔。」
一撃。
二撃。
三撃。
護衛隊崩壊。
そのまま敵将へ到達。
首が飛ぶ。
戦場が静まり返った。
指揮官喪失。
完全崩壊。
・・・
後方。
マイケル。
エルナ。
治療団。
巡回治療団も合流していた。
負傷者ゼロではない。
しかし死者は激減していた。
ヒーリング。
浄化。
治療薬。
教育。
全て積み重ねてきた成果。
エルナが微笑む。
「次の患者さん。」
かつて泣いていた子供達も。
今では治療師だった。
・・・
アリアは避難民の対応を行っていた。
老人。
子供。
女性。
全員を受け入れる。
炊き出し。
住居。
医療。
教育。
手配完了。
誰も見捨てない。
ただし依存もさせない。
働ける者は働く。
学べる者は学ぶ。
未来を作る。
それがこの村だった。
・・・
三日後。
キンペイ帝国軍。
壊滅。
補給崩壊。
指揮崩壊。
士気崩壊。
十二万。
ほぼ全軍降伏。
戦争は終わった。
・・・
夕暮れ。
エミリー。
ロバート。
セリナ。
リーヴ。
ティグリス。
ガイル。
リリー。
ソフィア。
カタリナ。
トミー。
マイケル。
エルナ。
アリア。
皆が村を見渡していた。
学校。
治療院。
畑。
工房。
紡織工場。
市場。
笑う子供達。
働く大人達。
エミリーが静かに言う。
「守れたね。」
ロバートが頷く。
「ああ。」
アリアが子供達を見る。
「未来も。」
マイケルが笑う。
「みんなで守った。」
誰も英雄ではない。
誰も支配者ではない。
教育が人を育てた。
環境が人を育てた。
かつて貧困と病に苦しんだ村は、
今や自らの力で未来を守る共同体へ変わっていた。




