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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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111話 魔女捕縛

魔女が現れた。


その報告は深夜に届いた。


ストーン村北部。


旧街道沿い。


見張り塔からの緊急連絡だった。


「銀髪の女を確認!」


「黒いローブ!」


「例の魔女です!」


鐘が鳴る。


連合の索敵網が一斉に動いた。


かつて盗賊に苦しめられた貧困村。


今は違う。


教育。


農業革命。


紡織産業。


治癒医療。


魔法訓練。


積み重ねた全てが防衛網になっている。


索敵部隊八千。


教師六万。


教導スキル覚醒者四万。


人材こそ国家。


ケルナインが残した思想だった。


ミシェルが空へ舞い上がる。


ハーピーの翼が夜風を切る。


風属性索敵。


光属性索敵。


超能力。


クレヤボヤンス。


クレアオーディエンス。


リモート・ビューイング。


複数の索敵能力が同時発動した。


「発見」


即座に念話が飛ぶ。


「座標固定」


「逃走経路予測」


「転移反応なし」


セリナが目を細める。


「今度は捕まえられる」


魔女はこれまで何度も現れていた。


しかし毎回消える。


攻撃もしない。


破壊もしない。


殺しもしない。


それでも正体不明だった。


だから危険だった。


知らないという事実そのものが。


ロバートが立ち上がる。


「部隊編成」


「捕縛優先」


「殺傷禁止」


全員が頷く。


討伐ではない。


捕縛。


話を聞くためだった。


翌朝。


魔女捕縛隊が出発した。


エミリー。


セリナ。


ソフィア。


カタリナ。


ガイル。


ミシェル。


リーヴ。


マイケル。


総勢百名。


連合屈指の精鋭だった。


森の中。


魔女はいた。


驚くほどあっさり見つかった。


逃げる気配がない。


湖のほとり。


黒いローブ。


銀色の髪。


静かに水面を見ている。


まるで来ることを知っていたように。


エミリーが前へ出る。


「動かないで」


魔女は振り返る。


そして少し笑った。


「やっと来たのね」


エミリーの眉が動く。


余裕がある。


強者の余裕だった。


だが。


今回は違う。


魔女の周囲。


既に包囲網が完成していた。


木々の上。


リリーの狙撃班。


後方。


土壁部隊。


左右。


拘束専門部隊。


空。


ミシェル。


完全包囲。


教育の成果だった。


魔女は周囲を見る。


そして少し驚いた顔をした。


「ここまで育ったのね」


その言葉にエミリーは反応しない。


合図。


同時発動。


土属性。


アースウォール。


巨大な壁が出現する。


逃走経路封鎖。


続いて。


風属性。


ウインドプリズン。


圧縮風壁。


さらに。


氷属性。


アイスケージ。


氷牢。


三重拘束。


普通の魔法使いなら終わりだった。


しかし。


魔女は指一本動かさない。


それでも。


今回は連合が上だった。


ガイルが吠える。


「今だ!」


巨大な石牢が落下する。


構造理解。


土属性。


石属性。


複合魔法。


圧倒的重量。


さらに。


グラビティ。


重力付与。


石牢は山のような重さになった。


魔女が初めて顔色を変える。


そして。


セリナが動く。


影。


闇属性。


拘束。


影の鎖。


シャドウバインド。


ロバート直伝。


闇の拘束術。


完全固定。


さらに。


ミシェル。


テレパシー阻害。


転移妨害。


空間感知封鎖。


逃げ道が消える。


静寂。


魔女は数秒動かなかった。


そして。


小さく笑う。


「なるほど」


「捕まったわね」


誰も予想していなかった反応だった。


エミリーが眉をひそめる。


「抵抗しないの?」


魔女は肩をすくめる。


「する理由がないもの」


そのまま捕縛された。


東部村落連合史上最大の捕虜。


魔女は連行された。


本部。


尋問室。


石造り。


強固な結界。


光属性封印。


闇属性封印。


超能力妨害。


厳重警備。


それでも。


魔女は落ち着いていた。


セリナが向かいに座る。


「名前は」


魔女は微笑む。


「アリア」


初めて名前が出た。


セリナは記録する。


「目的は」


「観察」


「何を」


「あなた達を」


意味不明だった。


セリナは続ける。


「なぜケルナインを知っている」


その瞬間。


魔女の表情が変わった。


初めてだった。


感情が見えた。


懐かしさ。


悲しみ。


そして安心。


複雑な感情。


「知っているわ」


静かな声。


「誰よりも」


尋問室が静まる。


セリナは追及する。


「どういう関係」


長い沈黙。


魔女は答えない。


代わりに言った。


「今は言えない」


「言えば全部壊れる」


セリナは眉をひそめた。


嘘ではない。


少なくとも本人はそう信じている。


そこで。


ケルナインが入室した。


初めてだった。


自ら来た。


尋問室。


全員が立ち上がる。


魔女だけが座ったまま。


二人の視線が交わる。


沈黙。


そして。


魔女が笑った。


涙を浮かべながら。


「本当に生きていた」


その言葉。


尋問室全員が固まる。


ケルナインは表情を変えない。


しかし。


魔女は泣いていた。


「良かった」


「本当に」


「良かった」


その姿は敵には見えなかった。


少なくとも。


国家転覆を狙う者には。


エミリーが戸惑う。


ソフィアも困惑する。


カタリナも腕を組む。


誰も理解できない。


ただ。


ケルナインだけは違った。


彼は静かに魔女を見る。


そして一言。


「どこで会った」


全員が驚く。


否定しない。


知らないと言わない。


魔女は微笑んだ。


「覚えてないのね」


「やっぱり」


ケルナインは黙る。


魔女もそれ以上は言わない。


代わりに話題を変えた。


「キンペイ帝国」


その名が出た瞬間。


空気が変わる。


「もう準備している」


「次は数万」


「その次は十万」


誰も笑わない。


魔女の目は本気だった。


「連中は連合を潰す」


「成功例を許さないから」


農業革命。


紡織産業。


教育。


治療。


自立。


全てが独裁国家にとって脅威になる。


民が知ってしまう。


自分達も豊かになれると。


それが危険だった。


セリナが聞く。


「なぜ教える」


魔女は答える。


「守りたいから」


「それだけ」


簡単な言葉。


しかし本心だった。


誰もが感じた。


尋問は続く。


そして判明する。


魔女は敵ではない。


少なくとも今は。


キンペイ帝国とも関係ない。


盗賊とも違う。


奴隷商とも違う。


もっと別の存在だった。


夜。


尋問が終わる。


魔女は牢へ戻される。


氷牢。


石牢。


光結界。


完全封印。


それでも彼女は笑っていた。


窓から見える村。


明るい灯。


笑う子供達。


働く職人。


学ぶ若者。


紡織工房。


治療院。


農地。


かつて存在しなかった光景。


魔女は小さく呟く。


「やっとここまで来た」


誰にも聞こえない声。


そして。


牢の外。


ケルナインは空を見上げる。


記憶はない。


思い出せない。


それでも。


一つだけ分かった。


あの魔女は嘘をついていない。


そして。


キンペイ帝国との戦いは近い。


東部村落連合。


人口八万五千。


食料充足率五百パーセント。


教師六万。


戦闘部隊八千。


人材国家。


環境が人を育てる国。


その前に立ちはだかる巨大国家。


そして。


全てを知っているかもしれない謎の魔女。


物語はさらに大きく動き始めていた。







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