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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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12話 村人だけで撃退

朝日が昇る。


昨夜の戦いの跡が村の外に残っていた。


折れた槍。


血の跡。


転がる武器。


そして。


縄で縛られた盗賊達。


生き残りは十二人。


全員捕縛されていた。


村人達は広場へ集まっていた。


昨日までは違う。


盗賊が来れば奪われるだけだった。


殴られるだけだった。


殺されるだけだった。


今日は違う。


勝った。


自分達で勝った。


その事実が村人達の表情を変えていた。


だが。


問題は残っている。


捕らえた盗賊をどうするか。


エミリーが腕を組む。


「放す?」


誰も答えない。


放した結果を知っているからだ。


また来る。


仲間を連れて来る。


もっと大勢で来る。


それは誰でも分かった。


セリナが静かに言う。


「尋問は終わったわ」


村人達の視線が集まる。


「奴隷商と取引していた」


「村を襲ったのは初めてじゃない」


「周辺の集落も襲撃している」


空気が重くなる。


さらにセリナは続けた。


「子供を売った」


「女を売った」


「老人も殺してる」


誰も声を出さない。


怒りだけが残る。


盗賊達は青ざめていた。


今さら命乞いを始める。


「た、頼む!」


「もうやらねぇ!」


「見逃してくれ!」


誰も信じない。


村人達は知っている。


自分達も同じ言葉を聞いた。


前回も。


前々回も。


結果は同じだった。


また襲われた。


また奪われた。


また人が死んだ。


だから。


誰も騙されない。


その時。


ケルナインへ視線が向いた。


村人達は自然に答えを求めていた。


旅人。


強者。


賢者。


導いてくれた男。


だが。


ケルナインは首を振った。


「俺は決めない」


静かな声だった。


皆が驚く。


「これは村の問題だ」


「村のルールは村で決めろ」


広場が静まり返る。


ケルナインは続けた。


「守ったのはお前達だ」


「だから決めるのもお前達だ」


それだけだった。


そして一歩下がる。


誰もが理解した。


この男は支配しない。


命令しない。


考えろと言っている。


エミリーが立ち上がる。


狼獣人の耳が揺れた。


「私は処刑がいいと思う」


即答だった。


迷いは無い。


「放したらまた来る」


「今度はもっと大勢で来る」


村人達が頷く。


セリナも同意した。


「合理的ね」


「再犯率は高い」


「抑止力も必要」


議論が始まる。


処刑。


追放。


奴隷。


労働。


様々な意見が出た。


その中で。


一人の老人が立ち上がった。


「ワシの息子は殺された」


静かな声だった。


「孫も連れて行かれた」


誰も笑わない。


誰も茶化さない。


現実だからだ。


「放しても何も変わらん」


老人は盗賊を見る。


「また誰かが泣くだけじゃ」


その言葉が決定打になった。


村人達が頷く。


次々に。


少しずつ。


意見がまとまっていく。


そして。


エミリーが宣言した。


「処刑する」


反対は無かった。


盗賊達が絶叫する。


命乞い。


泣き叫ぶ。


許しを求める。


だが。


誰も耳を貸さない。


彼らが今まで聞かなかった声だからだ。


処刑は翌日に決まった。


逃亡防止のため牢へ入れる。


土属性魔法で作られた簡易牢獄。


魔力循環訓練を受けた村人達が維持する。


夜。


村人達は眠れなかった。


処刑は初めてだった。


人を裁く。


それは重い。


当然だった。


エミリーも眠れない。


広場を歩いていると。


ケルナインがいた。


焚火の前。


静かに座っている。


「眠れないの?」


エミリーが聞く。


ケルナインは答える。


「人を裁くのは重い」


「当然だ」


エミリーは黙る。


「怖い?」


ケルナインが聞く。


エミリーは少し考えた。


そして頷く。


「うん」


「怖い」


正直だった。


ケルナインは小さく笑う。


「それでいい」


「怖くなくなったら危険だ」


エミリーはその言葉を覚えた。


翌日。


村の外。


簡易防壁の前。


盗賊達が並ばされる。


村人全員が見ていた。


逃げない。


目を逸らさない。


自分達で決めたからだ。


自分達で責任を持つ。


それが共同体だった。


処刑は短く終わった。


戦士達が執行する。


エミリー。


村の男達。


誰も震えなかった。


終わった後。


広場には静寂が残る。


歓声は無い。


祭りでもない。


ただ現実だけがあった。


そして。


村人達は次の決定を下す。


首を防壁へ掲げる。


反対意見もあった。


残酷だと。


だが。


セリナが言った。


「目的は見せしめじゃない」


「抑止力よ」


「村を守るため」


議論の末。


全員が了承した。


その日の夕方。


防壁に首が並んだ。


十二。


風に揺れる。


異様な光景だった。


だが。


その効果はすぐ現れる。


数日後。


森を通った行商人が村を見る。


固まった。


「なんだあれ……」


さらに別の冒険者。


さらに流民。


さらに盗賊の斥候。


全員が同じ反応をする。


この村は違う。


襲ってはいけない。


そんな噂が広がる。


一週間後。


盗賊団の集まり。


そこでも話題になっていた。


「やめとけ」


「首を晒してる村だ」


「前の連中全滅した」


「割に合わねぇ」


誰も近づこうとしない。


抑止力は成功した。


村では。


エミリーが防壁を見る。


複雑な気持ちは残っている。


嬉しくはない。


誇らしくもない。


だが。


必要だった。


そう理解している。


その時。


ケルナインが横に立った。


「どう思う?」


エミリーは答える。


「嫌な気分」


正直だった。


ケルナインは頷く。


「それでいい」


「裁く側が喜び始めたら終わりだ」


エミリーは少し笑った。


「難しいね」


「そうだな」


短い会話だった。


だが。


村はまた一つ成長した。


戦う力だけではない。


決める力。


責任を負う力。


共同体として生きる力。


教育が人を変える。


環境が人を育てる。


その証明が。


少しずつ形になり始めていた。


そして防壁の首は。


周辺一帯へ伝えることになる。


この村はもう獲物ではない。


自分達の力で立つ村だと。







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