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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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11話 盗賊再襲撃

夜。


村は静かだった。


以前の村なら。


夜は恐怖の時間だった。


盗賊。


奴隷商。


傭兵崩れ。


いつ襲われてもおかしくない。


だから皆が怯えていた。


だが今は違う。


井戸は改善された。


病人は減った。


畑改革も始まった。


魔力循環訓練も続いている。


少しずつ。


確実に。


村は変わっていた。


そして。


その変化を面白く思わない者達もいた。


村から三キロほど離れた森。


二十人ほどの男達が集まっていた。


薄汚れた革鎧。


欠けた剣。


粗末な槍。


盗賊だった。


「最近あの村が調子に乗ってるらしいな」


頭目が笑う。


顔に大きな傷がある。


元傭兵。


人を殺すことに何の抵抗もない。


「食い物が増えたらしい」


「井戸も直したそうだ」


「移住者も来てる」


部下達が笑う。


つまり。


奪う価値がある。


そういう意味だった。


「女もいるんだろ?」


「いるらしいぜ」


「奴隷商に売れば金になる」


下卑た笑いが広がる。


頭目が立ち上がった。


「行くぞ」


「全部奪え」


「男は殺せ」


盗賊達が武器を持つ。


闇の中を進み始めた。


だが。


その動きは。


すでに見られていた。


村の見張り台。


セリナが目を閉じていた。


魔力を流す。


感覚が広がる。


森。


風。


動物。


そして。


人。


二十。


武装。


接近中。


セリナが目を開く。


「来たわね」


冷静だった。


以前なら震えていた。


今は違う。


見えるからだ。


分かるからだ。


彼女は鐘を鳴らした。


カン。


カン。


カン。


夜の村に警鐘が響く。


村人達が飛び起きる。


エミリーが剣を掴んだ。


「盗賊?」


セリナが頷く。


「二十人」


「北側から接近」


エミリーの目が鋭くなる。


昔なら絶望していた。


今は違う。


訓練した。


学んだ。


強くなった。


だから恐怖より先に闘志が出る。


広場に村人達が集まる。


男。


女。


若者。


老人。


皆が武器を持っていた。


農具。


槍。


木槌。


弓。


完璧な軍隊ではない。


それでも。


逃げなかった。


ケルナインもいた。


相変わらず後ろに立っている。


誰にも命令しない。


誰にも指示しない。


エミリーが前へ出た。


「みんな」


「守るよ」


短い言葉だった。


だが十分だった。


村人達が頷く。


その時。


盗賊達が現れた。


松明の光。


汚れた顔。


欲望に濁った目。


頭目が笑う。


「へぇ」


「逃げねぇのか」


以前なら。


ここで村人達は震えていた。


土下座していた。


命乞いしていた。


だが。


今日は違う。


エミリーが剣を構える。


「帰れ」


盗賊達が笑った。


「女が偉そうに」


「殺せ!」


一斉に突撃する。


戦いが始まった。


最初に動いたのはエミリーだった。


身体強化。


筋肉強化。


魔力循環。


足元が爆発するように加速する。


盗賊が驚く。


速い。


速すぎる。


剣が閃いた。


盗賊の武器が吹き飛ぶ。


さらに蹴り。


男が地面を転がった。


「なっ!?」


頭目が目を見開く。


前に戦った村人達とは別人だった。


その間にも。


村人達が動く。


訓練の成果だった。


槍持ちは前。


弓持ちは後ろ。


自然に役割分担が出来ている。


誰も命令していない。


自分達で考えて動いている。


盗賊が飛び込む。


農民の男が槍を突き出した。


盗賊の足を貫く。


悲鳴。


さらに別の村人が押し倒した。


以前なら出来なかった。


今は出来る。


なぜなら。


訓練したから。


教育を受けたから。


その時だった。


盗賊の一人が火を放つ。


火属性魔法。


小さな火球。


村人へ向かう。


マイケルが飛び出した。


恐怖はある。


足も震える。


それでも逃げない。


両手を前に出す。


光。


小さな光。


だが確かに魔法だった。


光球が火球にぶつかる。


火球が弾けた。


「出来た……」


本人が驚く。


だが次の瞬間。


盗賊の剣で村人が傷を負った。


マイケルは走る。


倒れた男へ。


両手を当てる。


治癒魔法。


柔らかな光。


傷口が閉じていく。


完全ではない。


それでも戦える。


男が立ち上がった。


「ありがとう!」


再び前線へ戻る。


マイケルは息を切らしていた。


それでも笑った。


自分にも出来ることがある。


それが嬉しかった。


戦場の反対側。


セリナは冷静に動く。


索敵。


探索。


感知。


敵の位置が分かる。


動きが分かる。


死角が無い。


「右から二人」


村人が対応する。


「後ろへ回る」


弓兵が撃つ。


的確だった。


盗賊達は混乱する。


なぜ読まれる。


なぜ待ち伏せされる。


なぜ動きが筒抜けなのか。


理解出来なかった。


戦況は一方的になっていく。


そして。


最後に頭目が動いた。


巨大な斧を振り上げる。


「雑魚共が!」


力任せの一撃。


エミリーが受ける。


衝撃。


普通なら吹き飛ぶ。


だが。


身体強化された獣人だった。


踏み止まる。


頭目が驚いた。


「馬鹿な!」


エミリーは笑った。


以前の自分なら負けていた。


守れなかった。


泣いていた。


でも今は違う。


強くなった。


努力した。


仲間もいる。


だから。


負けない。


剣が振られる。


斧を弾く。


懐へ入る。


一撃。


頭目の腹に拳が突き刺さった。


身体強化された獣人の拳。


頭目は吹き飛んだ。


地面を転がる。


立ち上がれない。


盗賊達の顔から血の気が引いた。


頭目が負けた。


信じられなかった。


「に、逃げろ!」


誰かが叫ぶ。


盗賊達は逃げ始めた。


村人達は追わない。


勝ったからだ。


守れたからだ。


十分だった。


静寂が戻る。


誰かが言った。


「勝った……」


次の瞬間。


歓声が上がった。


村中が叫ぶ。


笑う。


泣く。


抱き合う。


生まれて初めてだった。


自分達の力で。


村を守った。


その事実が嬉しかった。


ケルナインは少し離れた場所から見ていた。


何もしない。


最初から。


何もしない。


必要無かったからだ。


勝ったのは村人達だ。


学んだ者達だ。


努力した者達だ。


環境が変わった。


教育があった。


だから人は育った。


エミリーが歩いてくる。


汗だくの顔。


それでも笑っていた。


「守れた」


ケルナインは頷く。


「そうだな」


短いやり取りだった。


だが。


それだけで十分だった。


この夜。


貧困村は初めて知った。


助けられる側ではない。


自分達で守る側になれると。


そしてそれは。


後に大陸中へ広がる大きな変化の。


本当の始まりだった。







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