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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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108話 村襲撃

夜だった。


東部村落連合。


リーフ村。


紡織産業の中心地。


巨大な織物工房。


倉庫。


学校。


治療院。


かつて貧困村だった面影はない。


今では数万人が暮らす大集落となっていた。


月明かりが畑を照らす。


風が吹く。


静かな夜だった。


その静寂を破ったのは、索敵塔からの警鐘だった。


カンッ!


カンッ!


カンッ!


鐘が鳴る。


夜空へ響く。


瞬間。


村が動いた。


「索敵部隊より報告!」


「西方十五キロ!」


「武装集団確認!」


「数三千以上!」


村人達が顔を上げる。


しかし誰も慌てない。


泣き叫ぶ者もいない。


逃げ惑う者もいない。


昔なら違った。


盗賊が来た。


奴隷商が来た。


それだけで終わりだった。


だが今は違う。


教育がある。


訓練がある。


経験がある。


環境が人を育てた。


それだけだった。


索敵塔。


ミシェルが空を飛んでいた。


風属性。


レビテーション。


遠隔透視。


念聴。


索敵能力を最大展開する。


その瞳が敵を捉える。


「傭兵崩れ」


「盗賊」


「奴隷商」


「混成部隊」


「統率者あり」


念話が飛ぶ。


全指揮所へ伝達される。


連合軍が動く。


その頃。


敵側。


男は笑っていた。


「笑いが止まらねぇな」


傭兵団長バルザック。


巨大な斧を担ぐ。


歴戦の男だった。


「村だぞ?」


「村」


「金も女も食料も山ほどあるらしい」


部下達も笑う。


「楽な仕事だ」


「数も多い」


「焼けば終わりだ」


誰も疑わない。


彼らの知識は古かった。


この地域は貧困地帯。


弱い村ばかり。


それが常識だった。


だから。


何も調べなかった。


何も知らなかった。


数十分後。


敵軍が前進する。


その瞬間だった。


ドゴォォォン!!


地面が爆発した。


「なっ!?」


土が吹き飛ぶ。


悲鳴が上がる。


ソイルバレット。


ストーンバレット。


無数の土弾。


石弾。


闇夜から飛来する。


敵が倒れる。


混乱が広がる。


「伏せろ!」


「伏せろぉ!」


怒号が飛ぶ。


しかし。


次の瞬間。


風が吹いた。


風刃。


ウィンドカッター。


鋭い斬撃が敵陣を切り裂く。


さらに。


氷槍。


アイスランス。


水弾。


ウォーターバレット。


火球。


ファイアボルト。


四方八方から攻撃が降る。


敵は見えない。


攻撃だけが来る。


「何だこれは!」


「村じゃねぇ!」


その通りだった。


村ではない。


教育された戦力だった。


その頃。


エミリーが前線に立っていた。


狼獣人の耳が揺れる。


「左翼包囲」


「右翼圧迫」


「中央固定」


即座に命令。


部隊が動く。


誰も迷わない。


教導スキル。


訓練。


経験。


積み重ねてきたものがある。


「行くよ!」


リーヴが駆ける。


風属性身体強化。


敵陣へ飛び込む。


剣が閃く。


一人。


二人。


三人。


盗賊達が倒れる。


反撃。


しかし。


当たらない。


圧倒的な技量差。


教育の差だった。


別方向。


ロバート率いる部隊。


「前進!」


将軍スキルが発動する。


士気が上がる。


恐怖が消える。


連携が強化される。


まるで一つの生き物。


兵達が動く。


闇属性。


シャドウバインド。


影が伸びる。


敵の足を拘束。


そこへ。


土槍。


氷刃。


火弾。


敵が次々に倒れる。


「化け物か!」


盗賊達が叫ぶ。


違う。


化け物ではない。


教育された人間だった。


中央戦線。


ソフィアがいた。


巨大な斧槍を振るう。


鬼人族。


圧倒的な膂力。


身体強化。


筋肉強化。


重力操作。


全てを乗せる。


轟音。


敵が吹き飛ぶ。


盾ごと潰れる。


鎧ごと砕ける。


「弱い!」


ソフィアが叫ぶ。


本当に弱かった。


昔の彼女なら苦戦した。


今は違う。


学んだ。


鍛えた。


育った。


環境が変えた。


その隣。


カタリナ。


巨大なグレイブを振るう。


長身エルフ。


戦闘狂。


だが今は違う。


考えて戦う。


学んだからだ。


「包囲網完成!」


敵を逃がさない。


村人達が連携する。


農民。


職人。


教師。


薬師。


全員が動く。


非戦闘職ですら訓練されている。


敵は初めて理解した。


襲った相手を間違えた。


その頃。


後方。


ケルナインは座っていた。


会議室。


窓から戦場を見る。


動かない。


指示もしない。


必要ない。


もう教えた。


あとは彼らの戦いだった。


マイケルが隣にいる。


「先生」


「何だ」


「強くなりましたね」


ケルナインは少しだけ外を見る。


農民が戦う。


教師が戦う。


治癒師が走る。


索敵部隊が情報を流す。


物流部隊が補給する。


全部が機能している。


一人ではない。


集団だ。


「人が育っただけだ」


それだけだった。


戦場。


敵軍は崩壊していた。


指揮系統消滅。


通信消滅。


士気崩壊。


逃亡開始。


バルザックが叫ぶ。


「撤退!」


その瞬間。


目の前に影が現れた。


セリナ。


ダークエルフ。


静かに立つ。


「終わりです」


次の瞬間。


影が絡みつく。


拘束。


闇魔法。


超能力。


念動拘束。


完全制圧。


バルザックは地面へ倒れた。


敗北だった。


夜明け。


戦闘終了。


敵軍三千。


壊滅。


捕虜千二百。


死者多数。


連合側。


死者ゼロ。


重傷者ゼロ。


軽傷者数十。


完全勝利だった。


朝日が昇る。


村人達が後片付けを始める。


治療班が走る。


補給班が動く。


教師達が子供達を安心させる。


誰も浮かれない。


勝ったから終わりではない。


平和を維持する仕事がある。


それを知っている。


だから強い。


その時だった。


遠くの丘。


黒い帽子。


黒いローブ。


銀髪。


謎の魔女。


彼女が戦場を見ていた。


静かに。


興味深そうに。


「面白い」


小さく呟く。


三千の武装集団。


かつてなら村を滅ぼした脅威。


それを村人達だけで撃退した。


英雄がいない。


勇者もいない。


王もいない。


人が育った結果。


ただそれだけ。


魔女は笑った。


「本当に面白い」


風が吹く。


次の瞬間。


姿は消えていた。


誰にも気づかれず。


ただ一人。


ミシェルだけが空からそれを見ていた。


「また現れた」


鳥人族の瞳が細まる。


謎の魔女。


そして東部村落連合。


二つの物語は。


少しずつ交わり始めていた。







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