第76話:集合
浦見たちが移動していたのと同じころ。坂井と茶髪の女も、それぞれ別々の場所からビルに向かって歩いてきた。ショッピングモールは四角形で、全ての方角に自動ドアが面していた。浦見たちは南から入ったが、坂井は西のドアから。そしてもう1人の女は、東のドアを通り抜けた。先にビルに入ったのは、茶髪の女の方だ。2人は同時に地図を見つけたが、そこは別々の場所だった。広いショッピングモールの中では、フロアマップは複数の場所に設置されている。逆の方角から入った2人は、ちょうど向かい合うような位置で地図を見上げていた。茶髪の女は地図を見つめて、ニヤリと笑う。
(あの人たちは、生きてるみたいね)
並んで階段を上がっている、2つの光点。それが誰なのかは、彼女には明白だった。
(もう1人、いるけど……すぐに殺しにいくよりも、準備を整えた方がいいわね。私の武器は、このナイフだけだし)
茶髪の女は折りたたまれた地図を取ってから、フードコートの位置を確かめた。彼女が探している物は、そこにある。
(もしかしたら、他にも使えるものがあるかも。……4階なのね。エレベーターは動くかしら)
電気がついていない、薄暗いモール内を注意しながら横切って。彼女はエレベーターの前に立ち、ボタンを押した。音もなく、目の前のドアがゆっくりと開く。
(……動くのね。これ、使えるかも)
音も光もない。そのため、動いていることが分かりにくい。そんなエレベーターに乗り込んで、女は薄い笑みを浮かべながら4階のボタンを押した。ドアは先ほどと同じ速度で閉まる。その間も、坂井はフロアマップの前から動かなかった。
(点は、4つ……。私と、あと3人。おじさんたちは……生きてるみたいね)
もし、1つだけの点がまっすぐにエレベーターに向かっていかなければ。彼女には2つの、一緒に動いている点の見分けはつかなかっただろう。だが、光る点が迷わずエレベーターを使った時点で、坂井はその正体に気づいていた。
(あの女は、階段を上るのが面倒だったのね。おかげでおじさんたちが生きていることが分かったから、ありがたいけど)
彼女は持ち運べる地図を取りあげて、壁に取りつけられているものと見比べた。1つの点は4階でエレベーターから降りて、2つの点はその更に上、5階より先に行こうとしている。
(……本当、体力のある人ね)
彼は電気がついていないことから、エレベーターが使えないと思っているのだろうが、それにしても。階段を上がるスピードが変わっていないことから、男がそれほど疲れていないことが分かる。坂井はそれを見て、苦笑を浮かべ、その場から離れた。
1/明白
「あきらかで疑う余地のないこと。また、そのさま」
2/時点
「時の流れの上で、ある一点またはある時期」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




