第75話:エリア収縮
そのとき。電子音声のアナウンスが、街に響いた。
「お知らせします」
感情のない声。硬い言葉で、それは続ける。
「残りの人数が少なくなりましたので、エリア収縮を始めます。生き残っている方々は、矢印に沿って移動してください。繰り返します。生き残っている方々は……」
アナウンスは、浦見とホリーがいるコンビニの中にも聞こえてきた。食事を終えて、くつろいでいた2人は、その音を聞いて動きだす。男は少女を背負い紐の上に座らせて、足を開かせ、肩ベルトに腕を通した。
「行くぞ、ホリー。やり残したことはないな?」
「……うん」
短い会話。彼女を背にして、彼は立つ。その後に、2人は地面に浮かんだ矢印が指す方に向かって進んだ。やがて、彼らがたどり着いたのは、黒く高いビルの前だった。
「……入れってことか?」
浦見は用心深く、周囲を見回しながら言った。ビルの入り口、自動で開くガラス製のドアを抜けた先。矢印はそこで途切れている。彼はホリーを連れて、壁にあるフロアマップを見にいった。そのビルは巨大なショッピングモールになっていて、フードコートや飲食店、映画館や本屋もある。そして。男が見ているマップには、光る点もついていた。数は4つ。2つは止まっていて、他の2つは動いている。
(……これは……)
彼は嫌な予感がして、大きなフロアマップの下にある、折りたたまれた地図を手に取る。そしてそれを広げて、フロアマップと見比べながら点の位置を探した。点は、すぐに見つかる。男は続けて、光る点の中の2つ。動いていないものに注目する。彼はそれを見ながら、階段に向かって歩いた。2つの点は、地図の上で輝きながら移動する。それを見て、浦見は苦々しげに呟いた。
「……やっぱりな。ホリー、これを見ていてくれるか? 今、1階のこの部分にいるのが俺たちだ。残りの点は、おそらく他の参加者だろう」
そう言って。男は少女の目が届くところまで、地図を持ち上げた。彼女は彼の肩ごしに、それを見つめて口を開く。
「……他の人も、これを見てるの?」
「おそらくな。ここまで生き残った奴らが、この程度のことに気づかねえとは、俺には思えん」
「……分かった。これが、私たち。他の人が近づいてきたら、おじさんに知らせる。それでいい?」
「ああ。頼むぜ」
笑って告げて。浦見は地図を、ホリーに渡す。彼女は真剣な表情で、渡された地図を広げた。
「……まだ、大丈夫。おじさんだけじゃなくて、他の人も、そんなに動いてないみたい」
「そうか。それなら今のうちに、見晴らしの良い場所に移動するぞ」
誰もいない階段で。2人は話しあい、男はゆっくりとした足どりで上に向かう。少女は地図から目を離さず、他の点を見続けていた。
1/収縮
「ひきしまって小さくなること。ちぢむこと。また、ちぢめること」
2/用心深い
「よく注意して十分に心をくばっている。警戒心が強い」
この後書き内での説明は、コトバンクのデジタル大辞泉から引用したものです。




